
PayPay(東京・千代田)が決済手数料を1.6%または1.98%という低率で有料化するとの発表を受け、楽天ペイメント(東京・港)は決済手数料3.24%を、1年間0円にするという対抗策で応じた。これまで頑(かたく)なに決済手数料を引き下げなかった楽天ペイメントはどんな目算があってこの手を繰り出したのか──。楽天ペイメントの戦略と、後追いしたKDDI、NTTドコモの戦略を読み解いた。
「PayPay」を運営するPayPayが決済手数料有料化の詳細を発表するのを待っていたかのように、奇策に打って出たのが「楽天ペイ」を運営する楽天ペイメントだ。
PayPayをはじめ、「d払い」を運営するNTTドコモや「au PAY」を運営するKDDIといったQRコード決済事業者の多くは、店舗がコードを提示してそのコードを消費者がスマートフォンで読み取る「MPM方式」で契約した加盟店については、決済手数料を0円に据え置くキャンペーンを実施。それを主要な武器の1つとして中小の小売店を開拓してきた。だが、2021年夏から秋にかけて各社がこれらのキャンペーンを終え、大手チェーンなどに続いて中小小売店についても決済手数料を有料化し、本格的な収益確保のフェーズに突入するはずだった。
【第2回】 楽天ペイ、PayPayから引き剥がし狙う奇襲 コード決済は2強へ?←今回はココ
ところが、楽天ペイメントはこの流れにあえて逆行。新規に加盟する年商10億円以下の中小小売店に限って、21年10月1日から22年9月末まで決済手数料を実質0円にするキャンペーンを、21年8月25日に打ち出したのだ。
3.24%へのこだわりを捨てる
これが奇策と受け取られた最大の理由は、これまでの楽天ペイメントの姿勢にある。多くのQRコード決済事業者が、MPM方式で決済手数料0円キャンペーンを実施する中、同社だけは、「決済手数料を負担してもらう代わりに手数料に見合ったサービスを提供する。そうでなければビジネスとして長続きしない」という方針を堅持し、頑なに決済手数料「原則3.24%」を守ってきたからだ。
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