
地図サービス開発プラットフォームのマップボックス・ジャパン(東京・港)が広告事業を本格化させる。同社は2021年8月24日、地図サービス事業者7社と共同で地図広告のネットワークを構築すると発表。1年で3000万人の利用者にリーチできるサービスを目指す。地図というフォーマット上、必ずリアルな場所と行動が伴うのが特徴。個人のデータに依存せず、プライバシーを侵害しない手法として、リアルタイムマーケティングの台風の目になりそうだ。
マップボックス・ジャパンは、ソフトバンクと米マップボックスの共同出資会社として設立された。アプリやWebサイトに地図機能を搭載できるシステムを企業向けに提供する。路線検索やカーナビゲーションなど地図と直接的に関わるサービスはもちろん、モバイル決済「PayPay」が利用可能な店舗を地図から探せる機能など、関連機能として地図をアプリに組み込むケースも多い。その裏側を支えている。
スマートフォンアプリ版「Google マップ」をはじめとするデジタル地図は、スマホの普及に一役買うキラーコンテンツの1つ。GPS(全地球測位システム)情報を組み合わせ、今いる場所から直感的に目的地までの道のりを探せるアプリ版地図はスマホとの相性が抜群だ。ただ、事業会社がそういった地図機能をアプリに組み込みたいと考えたとしても、変化し続ける景観に対応し続けるなど、独自のノウハウが必要になるため自社開発は困難。そこで、Google マップやマップボックスのような専業の地図開発プラットフォームが重宝される。
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マップボックスの地図の接点は6億人
マップボックスの地図を導入するアプリは全世界で4万5000を超え、トータルのMAU(月間利用者数)は6億人に上るという。ただ、「決定的に不足していたのが、地図そのものから収益を上げられる機能だ」とマップボックス・ジャパンCEO(最高経営責任者)の高田徹氏は言う。
振り返れば、多くのネットサービスは検索サイトと検索連動型広告、動画サイトと動画広告、というように広告技術と二人三脚で発展してきた。デジタル地図の発展にも広告技術が欠かせない。そう考え、マップボックス・ジャパンは自社のネットワークを生かした広告サービスの開発に着手。それがようやく日の目を見たというわけだ。日本法人設立の狙いは当初から、日本発で地図サービスの収益基盤を開発することだった。新たに始める広告事業は、グローバルでは展開しておらず、日本発のサービスとなる。この地図広告がリアルタイムマーケティングの新しい潮流として注目を集めそうだ。
現在主流のビーコンや位置情報を活用したリアルタイムマーケティングのプラットフォームは、スマホから取得したデータとの連係が必要不可欠。消費者からデータ利用の許諾を得たり、個人を特定できないようにデータを加工する匿名化技術を開発したりするなど、各社が独自でプライバシーに配慮した仕組みを取り入れている。
地図は利用目的がターゲティングそのもの
一方、地図は利用目的そのものが限りなくリアルタイム、かつ多くの場合リアルな行動が伴っている。「どこかに行く、店を探すという地図利用の行動が広告配信のコンテクストになる。サービスがターゲティングのシグナルそのものになっているのが特徴だ」(高田氏)。移動データなどを使わずとも、リアルタイムなニーズに沿った広告配信が可能。そこでマップボックスの広告サービスは、あえて当面ターゲティングメニューを設けずに提供する。
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