リアルタイムマーケティング 第1回(写真)

消費者の行動や思考の変化の分析から、マーケティングのアクションまでを一貫してリアルタイムで実施できる仕組みが整いつつある。そうした手法は「リアルタイムマーケティング」と呼ばれる。これに先進的に取り組む1社がアパレルブランドを複数展開するTSI(東京・港)だ。同社は2021年9月16日から、店舗とアプリを連係したOMO(オンラインとオフラインの融合)型リアルタイムマーケティングを始めた。

アパレルブランドを複数手掛けるTSI(東京・港)は、セレクトショップ「ナノ・ユニバース」の店舗で、アプリで把握した来店者にパーソナライズされたコンテンツを配信する取り組みを始めた
アパレルブランドを複数手掛けるTSI(東京・港)は、セレクトショップ「ナノ・ユニバース」の店舗で、アプリで把握した来店者にパーソナライズしたコンテンツを配信する取り組みを始めた
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 セレクトショップ「ナノ・ユニバース」の店舗でブランドのスマートフォン向けアプリを開くと、過去にECサイトでお気に入りに登録した商品を使ったコーディネートを薦められた。その写真を参考に、実際に試着してみようと販売員に声をかけた――。

【特集】リアルタイムマーケティング
【第1回】 驚異の「リアルタイムマーケティング」とは 来店客別の新手法 ←今回はココ

 TSIは2021年9月16日、ナノ・ユニバースのスマホアプリを刷新。実店舗の来店時に、顧客ごとに適した情報をアプリに配信する機能を追加した。会員の来店を瞬時に捕捉し、その会員にパーソナライズした情報を届けるなど、場所の「リアル」と、時間の「リアル」を掛け合わせたOMO型リアルタイムマーケティングを実現する機能だ。

 パソコンやスマホで取得したデータをリアルタイムで処理し、マーケティングに活用可能なデータに変換して、アクションまで瞬時に行う。そうしたマーケティング施策を実現するためのソリューションが相次いで登場している。

 デジタルマーケティングのさまざまな広告手法やソリューションの登場によって、データを基にしたマーケティングが進んだ。そこに拍車をかけたのがSNSやスマホの普及だ。高機能端末を1人1台持つことになり、ネットとの接点が飛躍的に拡大。さらに常に手元に持ち続けるスマホを通じた位置情報の活用や、ビーコン(近距離無線通信端末)などのIoT機器との通信による情報発信など、個人に直接情報を届ける手段が格段に増えた。

 こうしたデバイスで取得した消費者データと、マーケティングのアクションを限りなくリアルタイムに近づけたのが「リアルタイムマーケティング」だ。今、店舗内にいる人だけを対象にキャンペーン情報をスマホに配信する、困りごとをSNSで投稿した人に即座に広告で解決案を提示するといったコミュニケーションが可能になった。こうした手法の活用に先進的に取り組む1社がTSIだ。

 TSIは、これまでナノ・ユニバースのECサイトの会員情報や利用データを基にした、オンラインでのリアルタイムマーケティングに取り組んできた。そうしたコミュニケーションを、リアル店舗にまで拡大するのが今回の取り組みだ。

 ナノ・ユニバースのアプリには来店時にアプリとビーコンを反応させ、来店情報を登録することでポイントをもらえる「チェックイン機能」がもともと備わっていた。この機能と連係し、アプリで店舗にチェックインした顧客を対象に、リアルタイムなコミュニケーションを実施する。

 「チェックインすると会員情報と連動して、どの店舗に誰が来店したかが分かる。それはECサイトにログインしている状態と同じ。店舗でもECサイトのように会員情報に基づくリアルタイムなコミュニケーションができると考えた」。TSIデジタルマーケティング部マーケティングコミュニケーション課の中川大介課長は、新機能開発の背景をこう説明する。従来はポイント付与のためだけに使っていた機能を、コミュニケーションのトリガーにする発想だ。

リアル店舗はもはやECに大きく劣る存在

 中川氏は「実店舗は機能や情報量で、ECサイトよりも大きく劣る存在だ」と持論を展開する。例えば検索性の高さはECサイトならでは。欲しい商品をカテゴリーやキーワードで絞り込んで簡単に探せるが、店舗ではブランドごとに陳列されていて、商品が点在していることも珍しくない。自分が欲しい商品やブランドをピンポイントで探すのは難しい。

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