ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はコーヒー生豆のオンラインプラットフォーム「TYPICA(ティピカ)」を展開するTYPICA(大阪市)代表・共同創業者の後藤将氏を迎え、同社が取り組むコーヒー業界のDXについて議論した。(対談は2022年7月21日)

石角友愛氏(以下、石角) 私の両親は以前にカフェを経営していて、コーヒー豆にはこだわりを持っていました。私自身もコーヒー好きなので今回の対談を楽しみにしていました。後藤さんは19歳のときに初めて起業をされたそうですが、最初からコーヒー関連の仕事をされていたのですか。

後藤将氏(以下、後藤) いえ、当初はコーヒーとは全く関係のない分野で起業しました。

石角 そうだったのですね。TYPICAは2019年に創業されていますが、どういった経緯があってコーヒービジネスに取り組むことになったのでしょうか。

後藤 ひとことで言うと「起業家としての志」と「縁」が重なったからですね。今に至るまでの約20年間、複数の会社を経営してきました。経営者となった最初のころは、とにかく会社を継続させる、自社を成長させることばかり考えていました。主語が常に「自社」だったんです。

 ですがさまざまな出来事があって、会社経営とは「社会をよくしていくための手段」ということに気づいたんです。世の中をよくするための経営を実践していれば、無理に会社を発展させようとしなくても自然と発展していくものなのだと。

世の中をよくするための経営を実践していれば会社は自然と発展すると語る後藤氏
世の中をよくするための経営を実践していれば会社は自然と発展すると語る後藤氏(左)

石角 会社経営は社会をよくするためのものという考えは、同じ経営者としてとてもよく分かります。それに気が付かれたのは、いつごろのことですか。

後藤 会社経営を始めて15年目のときでした。そこで「今後15年かけて世界の何をよくしていくのか、自分は何を主題にしたいのか」と考えていたときに、偶然、コーヒーとの「縁」が生まれました。

 私はもともとコーヒーが大好きなのですが、TYPICAで取り扱っているような、いわゆるスペシャルティコーヒーを知ったのは、サンフランシスコに滞在していたときでした。当時はちょうどブルーボトルコーヒーがサンフランシスコで新規出店を増やしていたタイミングで、たまたまブルーボトルコーヒーの創業者と話をする機会があったんです。その時に同席していたジャーナリストから「日本に帰るのであれば、おすすめのロースターがあるので、ぜひ行ってみてください」と紹介されたのが、TYPICAの共同創業者である山田彩音が立ち上げたロースターでした。ロースターとは、焙煎(ばいせん)や淹(い)れ方にこだわった「スペシャルティコーヒー」が楽しめるカフェなどを指します。

 山田はもともとスターバックスで働いていて、店舗のマネジメントなどを担当した後、日本にコーヒーのサードウエーブが到来し始めたときに関西最大級のロースターを立ち上げました。彼女は私と同い年。ずっと会社経営をしてきて世界を変えるテーマを探していた私と、ずっとコーヒーを追求してきた山田との「縁」がそこでつながったのです。

TYPICAの共同創業者である山田彩音氏
TYPICAの共同創業者である山田彩音氏

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