ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。AI開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回は、防衛省の大規模接種対策本部長を務めた中山泰秀・前防衛副大臣(現在は、自由民主党政務調査会長特別補佐 外交・国防・ゲームチェンジャー領域担当)を迎え、大規模接種センターのローンチや運営に当たって工夫した点や苦労した点などについて伺った。※対談は2021年6月29日に実施

石角友愛氏(以下、石角) 大規模接種会場を運営(編集部注:取材は21年6月29日)されていますが、新型コロナワクチン接種の予約状況が大幅に改善しましたよね。こうしたことがもっと世の中に広まればと感じました。

中山泰秀氏(以下、中山) ありがとうございます。

石角 そもそも大規模会場はどういう手順でローンチされたのか、一番苦労したことなども含めてお話を伺いたいです。

対談は2021年6月29日に防衛省副大臣室で行われた
対談は2021年6月29日に防衛省副大臣室で行われた

中山 菅義偉総理(当時)の判断で、大規模接種センターを東京と大阪の2大都市に作ることになりました。その際、自衛隊に対する国民からの信頼というものをキャッチャーミットのように受け止めるということが重要でした。また、今回のパンデミック(世界的大流行)の中では、自衛隊がどのようにコミットできるかという部分も世界から注目されていると思いましたし、私個人も自衛隊大規模接種対策本部長としての思い入れがありました。

 菅総理の目的は恐らく短期間で集団免疫を獲得することだったと思いますが、結局、何が一番よかったかというと、自衛隊の大規模接種センターが他の多くの接種会場のモデル、すなわち基本形のようになったということです。

 大規模接種センターのローンチに当たり、私たちは率先してマニュアルにまとめるように指示を出しました。例えば、フロアのパターンをどうするか、会場に入ってから出口までの所要時間は何分になるか、経過観察を何分行うか、コードブルー(容体急変などの緊急事態)が出たらどうするかなど、全て計算に基づいて何回もシミュレーションを行いました。結果として指示から2週間で会場づくりが完了し、続けてオペレーションマニュアルも作成できたのです。

石角 たった2週間ですか! 大阪、東京の両方ででしょうか?

中山 はい。いずれの会場でも、短期で集中してオペレーションをこなしています。

石角 総理の指示があってからどのような取り組みが行われたのでしょうか?

中山 プロセスでいえば、菅総理が岸信夫防衛大臣に指示を出す。続いて、岸大臣から私へ指示がくるという形で、縦一直線の命令系統ができています。さらに防衛省以外にも3つの省庁が連携しました。主要官庁は内閣官房、ワクチンデリバリーは厚生労働省、地方自治体への対応は総務省が担当です。ですから防衛省としては、とにかくワクチンをデリバリーしていただき注射を打つ。まさにウイルスとの戦争、「War against virus」です。

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