ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回は、東京電力ホールディングス常務執行役の長崎桃子氏を迎え、同社のダイバーシティの現状について議論した。(対談は2021年7月31日に実施)
石角友愛氏(以下、石角) 長崎さんは東京電力ホールディングス(以下、東電)初の生え抜きの女性役員として注目されていますね。東電の女性管理職比率は2006年の0.9%から20年度末に5.5%まで上昇、女性役員は6人になっています。さらに25年度末までにグループ全体で女性管理職比率10%達成を目標に掲げていて、かなり女性活躍には力を入れられている印象です。
長崎桃子氏(以下、長崎) 今、東電では20代後半から30代の若手でも将来が嘱望される女性についてはキャリアを付与し、昇給させて育てていく仕組みができています。オンとオフの両面での研修も受けられるようになっていて、女性が活躍しやすくなってきています。
石角 米国ではマネジャーポジションに就いている人の40%が女性です。白人女性が圧倒的に多く、ラテン系が4.3%、黒人が4%、アジア系が2.5%と低いことから、人種比率が問題となっています。ただ日本ではそもそも女性管理職比率は10%にも届いていません。上司が女性かどうかによって女性の働きやすさは変わってくるので、ここを上げていくことは大事です。長崎さんも産休・育休を取得されていますが、その頃はまだ女性上司もいなかったでしょうし、周囲の理解もなかなか得にくい時代だったのではないでしょうか。
長崎 私が出産した頃の東電は、産休・育休を取得すると昇給が止まり、それまで積み上げてきた社内評価がいったんゼロに戻るという、今では考えられないような古い制度が敷かれていました。これが解消されたのはここ10年ほどのことだと思います。
石角 それはかなり古い体質ですね……。それだと、女性は子どもを産みたいとはなかなか思えないでしょうね。長崎さんもかなり苦労されたのではないでしょうか?
長崎 もう言葉では言い表せないくらい大変でしたね(笑)。当時、東電本社で勤務していた女性の中で出産した人は1人しかいなかったんです。
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