イベントの資料などで、パワーポイント(以下、パワポ)で配置図を作らなくてはいけなくなった経験があるビジネスパーソンも少なくないだろう。ここでは商店街マップを例に、作図機能の使い方を紹介する。マーケティング担当者なら、ぜひ覚えておきたいテクニックだ。
※日経PC21 2019年4月号の記事を再構成
パワポで商店街マップを作ってみよう(図1)。パワポはプレゼンテーション資料を作るためのソフトだが、作図ソフトとしても秀逸だ。スライドを画用紙に見立てることで、ワードやエクセルよりも直感的に図形を配置できる。商店街マップを作りながら、パワポの作図機能をマスターしよう。
今回は、商店街マップをA4判横置きの用紙に印刷したい。パワポのスライドは、既定ではパソコンのワイド画面(16対9)やプロジェクター画面(4対3)の縦横比に設定されているので、そのままA4判用紙に印刷すると周囲の空白が目立つ。
作図がメインの“A4一枚もの”はパワポで
図1 パワーポイントで商店街マップを作ってみよう。ワードやエクセルでも作成できるが、パワーポイントならスライドを画用紙に見立てて直感的に図形を配置できる。作図が中心の“A4一枚もの”を作るときは、パワーポイントがお薦めだ。グリッド線という機能を使うと、図形をきれいに配置できる
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グリッド線で位置揃え、図形の移動が2ミリ間隔に
そこで、スライドのレイアウトを白紙に変えてから(図2、図3)、スライドサイズを「A4」に変更する(図4~図6)。なお、商店街マップの作成後にスライドサイズを変更するとレイアウトが崩れる場合があるので注意しよう。
次に、スライドのグリッド線を有効にする(図7)。グリッド線とは、ドラッグ操作で図形の位置や大きさを変更する際に、動きを一定間隔(ここでは2ミリ)に制限する機能。適当にドラッグしても2ミリごとの位置になるので、図形同士の位置を揃えやすい。微妙に0.5ミリほどずれるといった不都合を回避できるわけだ。この機能を有効にすると、一定間隔(ここでは2センチ)で目安のグレーの点線が表示される。
スライドをA4判横置きにする
図2 パワーポイントを起動して「新しいプレゼンテーション」をクリックする
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図3 表紙のスライドが表示されたら、「ホーム」タブの「レイアウト」から「白紙」を選ぶ(1)〜(3)
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図4 「デザイン」タブの「スライドのサイズ」から「ユーザー設定のスライドのサイズ」を選択(1)〜(3)。A4判を選んで「OK」を押す(4)(5)
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図5 続く画面では「サイズに合わせて調整」をクリックする
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図6 スライドがA4判横置きのサイズに変わった。なお商店街マップの作成後にスライドサイズを変更すると、レイアウトが崩れる場合があるので注意する
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グリッド線を有効にする
図7 「表示」タブの「表示」グループ右下にある「グリッドの設定」ボタンを押す(1)(2)。「描画オブジェクトをグリッド線に合わせる」と「グリッドを表示」をチェックして「OK」を押すと(3)〜(5)、点線が表示される
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全体のバランスを考えながらメインストリートから描く
準備が整ったら作り始めよう。スライドの下側3分の1は店舗名を表示する領域だ。「正方形/長方形」を描画し(図8、図9)、図形の色を変更して枠線をなしにする(図10、図11)。
店舗名は最後に入力するとして、まずは上側のマップから作成しよう。商店街マップの場合、メインストリートなどの道路から描くと全体のバランスを取りやすい。
道路は「正方形/長方形」で描こう。道幅を簡単に調整できるのでお勧めだ。道路を何本も描くときは、「正方形/長方形」を右クリックして「描画モードのロック」を選ぶと、同じ図形を連続して描ける(図12)。時間短縮の王道テクニックなので覚えておこう。4本の道路を描いたら、色や枠線、傾きなどを調整する(図13〜図15)。
マップの右側には鉄道の線路を描く。一見、難しそうだが、色と太さの違う2本の直線を組み合わせれば意外と簡単に作れる。
最初に黒で幅15ポイントの直線を描き(図16~図18)、その直線を複製して白で幅6ポイントの破線に変える(図19)。白の破線の幅を細くするのがポイントで、そのまま黒の直線に重ねれば線路の出来上がり。2つの直線をグループ化して1つの図形にまとめておくと(図20)、仕上げの際に移動やサイズ変更を楽に行える。
次に駅名のボックスを作る。線路の上をまたぐように「縦書きテキストボックス」を描いて「あおぞら駅」と入力(図21)。図形の色と文字の書式を整えて、線路の中央に配置すればOKだ(図22、図23)。
店舗名を配置する枠を作る
図8 「挿入」タブの「図形」から「正方形/長方形」を選ぶ(1)〜(3)
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図9 スライドの下側をドラッグして四角形を描く。頂点がグリッド間隔(2ミリ)に沿うように図形を描画できる
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図10 「書式」タブにある「図形の塗りつぶし」の「▼」メニューから「ゴールド、アクセント4、白+基本色80%」を選ぶ(1)〜(3)。画面は当該色にマウスポインターを当てプレビューしたところ
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図11 続けて「図形の枠線」の「▼」メニューから「枠線なし」を選ぶ(1)〜(3)
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四角形をロックして道路を描く
図12 「挿入」タブの「図形」にある「正方形/長方形」を右クリックして「描画モードのロック」を選ぶ(1)〜(4)。これで、連続して四角形を描けるようになる
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図13 左端から右やや斜め下にドラッグして、中央の太い道路を描く。さらに縦3本の道路を描き、最後に「Esc」キーを押す
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図14 いずれかの道路をクリックしたら、「Shift」キーを押しながら残り3本の道路をクリック(1)(2)。「書式」タブの「図形の塗りつぶし」から「ゴールド、アクセント4、黒+基本色25%」を選び(3)(4)、図11で選んだ「枠線なし」となっている「図形の枠線」ボタンを押す(5)
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図15 真ん中の道路の回転ハンドルをドラッグして傾け(1)、白丸をドラッグしてサイズ、内部をドラッグして位置を調整する(2)(3)。ドラッグ中は、ほかの図形の頂点と揃う位置に赤いガイドラインが表示される
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直線をペアにして線路を描く
図16 「挿入」タブの「図形」から「線」を選び(1)〜(3)、マップの右側をドラッグして縦線を描く(4)
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図17 直線が描かれたら、「書式」タブの「図形のスタイル」欄右下にある「図形の書式設定」ボタンをクリック(1)(2)
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図18 パネルが開いたら、「塗りつぶしと線」の「線」で「色」を「黒、テキスト1」、「幅」を「15」に変更する(1)〜(4)。後者は入力欄をクリックして半角で「15」と上書き入力するのが手っ取り早い
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図19 「Ctrl」キーを押しながら直線を横にドラッグして複製(1)。「色」を「白、背景1」、「幅」を「6」、「実線/点線」を「破線」に変更する(2)〜(4)。ドラッグして複製元の黒い直線に重ねる(5)
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図20 線路を囲むようにドラッグして2本の直線を同時選択(1)。「書式」タブの「グループ化」から「グループ化」を選ぶ(2)〜(4)
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テキストボックスに駅名を入力
図21 「挿入」タブの「テキストボックス」から「縦書きテキストボックス」を選択(1)〜(3)。線路上をドラッグしてテキストボックスを描き(4)、「あおぞら駅」と入力する(5)
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図22 「書式」タブの「図形のスタイル」の「その他」ボタンを押して「塗りつぶし-黒、濃色1」を選ぶ(1)〜(3)
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図23 外枠をクリックしてテキストボックス全体を選択し(1)、「ホーム」タブの「B(太字)」と「中央揃え」を押す(2)〜(4)。白丸をドラッグしてサイズを調整し、外枠をドラッグして線路の中央に移動させる(5)(6)
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「10」の円で書式を整える、1桁に変えてもあふれない
マップ上の店舗は、すべて番号付きの「円」で示す。「楕円」を選び、「Shift」キーを押しながらドラッグして正円を描こう(図24)。大きさは点線の枠1つ分くらいにするといいだろう。
図7で「描画オブジェクトをグリッド線に合わせる」をチェックしたので、グレー点線の左上角からドラッグし始めると、きれいに1つ分に収まる。図形が選択されている状態で、半角の「10」を入力し、文字の書式と図形のスタイルを整えよう(図25、図26)。「10」としたのは、この後で複製して使い回すためだ。2桁の数字を入力して見栄えを整えておけば、後から1桁の数字に変更しても文字があふれる心配がない。
「Ctrl」キーを押しながら円をドラッグして複製しよう(図27)。今回は全部で14個の円を配置して、数字を書き換えた(図28、図29)。番号は1から11までで、郵便局は「〒」、駐車場は「P」とした。
図形をドラッグ中に表示される赤い線は、「スマートガイド」と呼ばれるものだ。ドラッグ位置がほかの図形の頂点と一致する際に現れるので、そこでマウスボタンを離せば簡単に位置を揃えられる。
円は店舗の分類ごとに色を変えるとわかりやすい。ここでは「図形のスタイル」機能を使い、飲食店を青、飲食店以外を緑、郵便局や駐車場をオレンジに塗り分けた(図30、図31)。色を選ぶときは、「図形のスタイル」の一覧で同じ段にあるものを使うと、デザインが統一されて見栄えが良い。
これで、道路と線路、店舗を配置したシンプルな商店街マップが完成した。このままでもよいが、建物や車のイラストを添えるとより華やぐ。パワーポイント2016の「アイコン」機能を活用しよう[注]。ここでは、車と2種類の建物のイラストを挿入し(図32、図33)、適宜マップ上に配置した(図34)。
[注]永続ライセンス版の2016ではアイコン機能は利用できない
仕上げにタイトルを作ろう。図21で描画した「あおぞら駅」の縦書きテキストボックスを左上に複製して使い回す(図35)。「文字列の方向」を「横書き」に変更し、図形のサイズと色、文字の書式を変更してから「あおぞら商店街MAP」と書き換える(図36~図38)。
店舗などを示す円を描く
図24 「挿入」タブの「図形」から「楕円」を選択(1)〜(3)。「Shift」キーを押しながらドラッグし、点線の枠1つ分くらいの大きさの正円を描画する(4)
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図25 図形が選択されている状態で「10」と半角で入力(1)。外枠をクリックして図形全体を選択し(2)、「ホーム」タブの「B(太字)」ボタンをクリック(3)(4)。さらに「フォントサイズの拡大」ボタンを何度か押して文字を大きくする(5)
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図26 「書式」タブの「図形のスタイル」の「その他」ボタンを押して「光沢-青、アクセント1」を選ぶ(1)〜(3)
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図27 「Ctrl」キーを押しながら外枠をドラッグして円を複製する
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図28 同様に複製して計14個の円を作り、外枠をドラッグして図のように配置する。その際は赤いガイド線を目安にして円同士の位置を揃える。道路などの位置も一緒に調整する
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図29 円内の文字を図のように書き換える。数字は半角。「〒」は「ゆうびん」で変換する
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飲食店以外の色を変える
図30 2番の円をクリックしたら、「Shift」キーを押しながら6番と9番の円を順にクリック(1)(2)。「書式」タブの「図形のスタイル」の「その他」ボタンから「光沢-緑、アクセント6」を選ぶ(3)〜(5)
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図31 郵便局の円をクリックしたら、「Shift」キーを押しながら2つの「P」の円を順にクリック(1)(2)。「図形のスタイル」の「その他」ボタンから「光沢-オレンジ、アクセント2」を選ぶ(3)〜(5)
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イラスト(アイコン)を配置する
図32 道路と店舗が完成したところで、イラスト(アイコン)を入れよう。「挿入」タブの「アイコン」をクリックする(1)(2)
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図33 左側で「車両」を選び(1)、図の3つのアイコンにチェックを入れて「挿入」ボタンを押す(2)〜(5)
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図34 3つのアイコンが挿入されたら、それぞれをドラッグして右図のように配置する
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商店街マップのタイトルを作る
図35 「Ctrl」キーを押しながら、駅名のテキストボックスの外枠を左端までドラッグして複製する
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図36 複製されたテキストボックスが選択された状態で、「ホーム」タブにある「文字列の方向」から「横書き」を選ぶ(1)〜(3)
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図37 白丸をドラッグしてテキストボックスの形を横長に変更(1)。テキストボックス全体が選択された状態のまま、「ホーム」タブの「フォントサイズの拡大」ボタンを何度か押して文字を大きくする(2)(3)。そうしたら文字を書き換えよう(4)。「あおぞら商店街」で改行して「MAP」と続ける
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図38 「書式」タブにある「図形のスタイル」の「その他」ボタンから「塗りつぶし-青、アクセント5」を選ぶ(1)〜(3)
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店舗名の位置を揃えるなら「Tab」キーが簡単
最後に、下側の四角形に店舗名を入力しよう。まずは、四角形をクリックして文字の配置や色などの書式を設定しておく(図39)。そうしたら、「Tab」キーで先頭位置を変えながら、3行に分けて店舗名を入力する(図40、図41)。ひと通り入力し終えたら、全体の見栄えを確認しながら「Tab」キーで丸数字の位置を揃え(図42)、行間を広げれば完成だ(図43)。「表示」タブの「グリッド線」のチェックを外し(図44)、全体の仕上がりを確認しよう。
なお、「デザイン」タブの「テーマ」を変更すると、マップ全体の配色ががらりと変わるので、いろいろなパターンを楽しめる(図45)。
店舗名の一覧を作る
図39 下側の四角形をクリックし(1)、「ホーム」タブの「左揃え」と「B(太字)」をクリック(2)〜(4)。さらに「フォントの色」の「▼」メニューから「黒、テキスト1」を選ぶ(5)
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図40 「Tab」キーを押し(1)、カーソルが右へ移動したら「①坂本珈琲」と入力する(2)。「①」は「まる」や「すうじ」「いち」で変換できる。さらに「Tab」キーを押してタブ文字で区切りながら、残りの店舗名を入力していく
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図41 途中で改行して計3行をこのように入力する
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図42 区切りのタブ文字(「Tab」キー)を適宜、追加挿入して、このように店舗名の位置を揃える
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図43 四角形の外枠をクリックし(1)、「ホーム」タブの「行間」ボタンから「1.5」を選ぶ(2)〜(4)
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図44 商店街マップが完成した。「表示」タブの「グリッド線」のチェックを外して(1)(2)、仕上がりを確認しよう
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テーマを変えれば配色が一変
図45 「デザイン」タブで「テーマ」を変更すると(1)(2)、このように配色などをがらりと変えられる。画面は「インテグラル」を選んだところ
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●サンプルファイルはこちら(「日経PC21」提供のファイルをJストリームから直接ダウンロードできます)