マーケティング担当者なら一度は資料に盛り込んだことがあるベン図やSWOT。プレゼン資料や報告書では、組織図やフローチャートなどのチャート(図解)を使うことが多い。オフィスソフトの「スマートアート」機能を使えば、それらを簡単に見栄え良く作成できる。
※日経PC21 2019年11月号の記事を再構成
スマートアートはエクセルやワードでも使えるが、今回はパワーポイントを使ってベン図とSWOT(スウォット)分析チャートを作ってみる(図1)。さらに、完成したチャートをワード文書に貼り付けるときのコツも紹介する。
まずは、チャートの中でも使用頻度の高いベン図を作りながら、スマートアートの基本操作をおさらいしよう。
ベン図は集合関係を表すもの。数学でも使うが、ビジネスチャートでは複数の要素の関係性を示すときに使う。ここでは健康の3条件をベン図で表す。
パワーポイントを起動してスライドのレイアウトを整えたら(図2、図3)、スライド全体のデザインとなるテーマを設定する(図4~図6)。ここでは「シャボン」を適用した。この前準備をしておくと、スマートアートでチャートを作った際、自動的にテーマに沿った色やデザインになる。色にこだわらないなら、テーマを設定せずに白紙のスライドのままでもかまわない。
●サンプルファイルはこちら(「日経PC21」提供のファイルをJストリームから直接ダウンロードできます)
スマートアートを使えばアッという間
図1 オフィスソフトの「スマートアート」機能を使えば、組織図やフローチャート(流れ図)などのチャート(図解)を簡単に見栄え良く作れる。エクセルやワードでも可能だが、今回はパワーポイントでベン図とSWOT分析の解説チャートを作ってみる。結果を図としてワード文書に貼り付ける手順も紹介しよう
[画像のクリックで拡大表示]
スライドの背景などを整える
図2 パワーポイントを起動して「新しいプレゼンテーション」を選ぶ
[画像のクリックで拡大表示]
図3 「ホーム」タブの「レイアウト」ボタンから「タイトルとコンテンツ」を選択する(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図4 「デザイン」タブの「テーマ」欄にある「その他」ボタンを押す(1)(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図5 テーマの一覧から「シャボン」を選ぶ。なお、図4の「テーマ」欄に「シャボン」が表示されているときは、それをクリックすればよい
[画像のクリックで拡大表示]
どういうときに使うものかチャートの説明文が重宝
スマートアートの作成手順は簡単。図7の操作でスマートアートの選択画面を開いたら、左側の分類欄で「集合関係」を選び、右側で「基本ベン図」を選ぶ(図8)。目的のチャートがどの分類かわからないときは、一番上の「すべて」を選ぼう。右側に表示されるチャートをクリックすると、どういったときに使うものかの説明文が表示される。
最初は3つの円で構成されるベン図が表示される(図9)。それぞれの円に入れる文字は左側のパネル(テキストウインドウ)で入力してもいいが、図形内に直接入れたほうが直感的でわかりやすい。テキストウインドウを使わないなら閉じておこう。
円内の「テキスト」と表示された箇所をクリックして、3つの図形それぞれに文字を入れる(図10)。文字サイズは文字数に合わせて自動的に調整されるが、後から「ホーム」タブの「フォントサイズ」ボタンで変更もできる。仕上げに、ベン図全体の色やスタイルを変更すれば完成だ(図11、図12)。
ちなみに円の数を増やしたいときは、「SmartArtのデザイン」タブにある「図形の追加」ボタンをクリックする。反対に、不要な円は「Delete」キーで削除できる。
ここまででスマートアートの基本操作を習得できたら、本題のSWOT分析シートに取りかかろう。SWOTとは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの頭文字を取ったもの。これら4つの項目で自社の内部環境や外部環境についてプラスおよびマイナス要素の分析を行い、経営戦略につなげる手法のことだ。
図1左下のようなSWOT分析シートを作るには、手動で図形を1つずつ描いて組み合わせるよりも、スマートアートの「マトリックス」をベースにして、足りない部分をほかの図形で補うほうが簡単だ。
新規プレゼンテーションを開いたら、スライドのレイアウトを変更してタイトルを入力(図13)。スマートアートの選択画面を開いて左側で「マトリックス」を選び、右側で「グリッドマトリックス」を選ぶ(図14)。これで4つの四角形と縦横の両端矢印で構成されたチャートが表示される(図15)。
スマートアートのベン図を挿入する
図6 テーマを変えたことで背景に色が付いた。なお、テーマを変えずに作業を進めても問題はない
[画像のクリックで拡大表示]
図7 「タイトルを入力」という枠をクリックして「健康に過ごすための3つの条件」と入力(1)。6つのアイコンの右上にある「SmartArtグラフィックの挿入」をクリックする(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図8 左側で「集合関係」を選び(1)、右側で「基本ベン図」を選んで「OK」を押す(2)(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図9 3つの円で構成されたベン図が表示される。すぐ隣に文字編集用のパネルが開くが、邪魔なら右上の「×」を押して閉じてよい
[画像のクリックで拡大表示]
文字を入れて配色などを調整する
図10 上の円をクリックし「睡眠」と入力、残りの2つの円には「食事」「運動」と入力する。文字数によって自動的に文字サイズが変化する
[画像のクリックで拡大表示]
図11 「SmartArtのデザイン」タブ(エクセルのバージョンによっては「SmartArtツール」の「デザイン」タブ)の「色の変更」から「カラフル - 全アクセント」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図12 続けて「SmartArtのスタイル」欄にある「その他」ボタンから「立体グラデーション」を選ぶ(1)〜(3)。これで右のようにカラフルで立体的なベン図が完成する
[画像のクリックで拡大表示]
別文書でSWOT分析シートを作る
図13 「ファイル」タブの「新規」で新規文書を開き、図3の手順でレイアウトを「タイトルとコンテンツ」にする。図4の状態になったら「SWOT分析シート」とタイトルを入力し(1)、「SmartArtグラフィックの挿入」を押す(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図14 左側で「マトリックス」を選び、右側で「グリッドマトリックス」を選択(1)(2)。画面下の「OK」を押す
[画像のクリックで拡大表示]
行間を広げすぎない裏ワザ「Shift」+「Enter」
それぞれの四角形に文字を入れていこう。3行で入力するときは、入力後に「Shift」+「Enter」キーで改行するのがポイントだ(図16)。「Enter」キーだけで改行すると、図16右下の失敗例のように、行間が広がりすぎてバランスが悪い。
4つの四角形にそれぞれ文字を入力した結果が図17だ。ここではSWOT分析そのものの説明を入れたが、実際には例えば強みとして「立地が良い」といった具体的な内容を記述する。
入力した文字のサイズはすべて同じになる。このままでも悪くはないが、「S」などの頭文字4つが目立つように強弱を付けよう。前準備として、スマートアート全体の文字サイズをやや小さめに縮小(図18)。その後、左上の四角形にある「S」を大きくして、「太字」と「文字の影」の飾りを付ける(図19)。
この「S」に適用した3つの書式を「W」「O」「T」にコピーしよう。それには「書式のコピー/貼り付け」ボタンをダブルクリックする(図20)。ただのクリックだと1回だけで機能が解除されるが、ダブルクリックなら連続して機能が使えるので効率が良い。
マウスポインターがはけの付いた状態になったら、「W」の文字をドラッグして書式を貼り付ける(図21)。続けて「O」と「T」もドラッグし、最後に「書式のコピー/貼り付け」ボタンをクリックしてコピー機能を解除する。
文字が完成したら、ベン図と同じ手順で色とデザインを変更しよう(図22、図23)。SWOT分析では4つの図形をすべて違う色にすると、4つの要素それぞれが際立って効果的だ。
次に、このスマートアートの上側に「プラス要因」「マイナス要因」、左側に「内部要因」「外部要因」というラベルを追加する。マトリックスにはこうしたラベルの追加機能がないので、周りに手動で四角形を追加する。
改行方法を工夫して文字を入力
図15 4つの四角形と縦横の両端矢印で構成されたチャートが挿入される
[画像のクリックで拡大表示]
図16 左上の四角形をクリックして「S」と入力し、「Shift」キーを押しながら「Enter」キーで改行する(1)。さらに「Strength」と入力して「Shift」+「Enter」キーで改行(2)。最後に「強み」と入力する(3)。ただの「Enter」キーで改行すると、右のように行間が空きすぎてしまうので注意する
[画像のクリックで拡大表示]
図17 同様の要領で残りの3つには「W」「Weakness」「弱み」、「O」「Opportunity」「機会」、「T」「Threat」「脅威」とそれぞれ入力する
[画像のクリックで拡大表示]
文字の大きさと書式を変更する
図18 余白をクリックしてスマートアート全体を選択し(1)、「ホーム」タブの「フォントサイズ」から「16」を選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図19 全体に文字が小さくなったら、左上の「S」という文字をドラッグして選択し(1)、「ホーム」タブの「フォントサイズ」を「48」に変える(2)(3)。さらに「B(太字)」ボタンと「文字の影」ボタンを押す(4)(5)
[画像のクリックで拡大表示]
図21 マウスポインターがはけの付いた字形に変わったら、「W」の文字をドラッグする(1)。はけではなく字の部分で「W」をなぞるようにドラッグしよう。さらに「O」と「T」の文字も順にドラッグして書式をコピーする(2)(3)。終わったら、「書式のコピー/貼り付け」ボタンをクリックして書式コピーモードを解除する
[画像のクリックで拡大表示]
スマートアート全体の配色を変える
図22 「SmartArtのデザイン」タブの「色の変更」から「カラフル - 全アクセント」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図23 続けて「SmartArtのスタイル」から「立体グラデーション」を選ぶと(1)(2)、右のように光沢がある立体になる
[画像のクリックで拡大表示]
四角形でラベルを追加し複製して使い回す
図24の操作で「正方形/長方形」を選び、「S」の上側をドラッグして四角形を描画。そのまま「プラス要因」と文字を入力し、図形と文字の色を変更する(図25~図28)。そうしたらこれを右に複製する。「Ctrl」キーと「Shift」キーを押しながら図形の外枠を右にドラッグし、文字を「マイナス要因」と書き換えればOKだ(図29、図30)。
同様の操作で文字入り四角形を「S」の左側にコピーして文字を書き換え、縦書きになるように「回転」と「文字列の方向」を変更する(図31、図32)。この文字入り四角形を真下にコピーして文字を書き換えれば、SWOT分析シートの完成だ(図33)。
では、これをワード文書にコピペしよう。今回はスマートアートだけでなくラベルの四角形も一緒にコピペする。こういうときは、全体を「図」として貼り付けるとよい(図34、図35)。その後、全体のサイズを整え(図36)、トリミング機能で左右の空白を削除しよう(図37〜図39)。中央揃えで配置すると(図40)、図1右下のワード文書が完成する。
説明の図形を追加する
図24 「挿入」タブの「図形」から「正方形/長方形」を選択(1)〜(3)。左上の四角形の上側をドラッグして四角形を描く(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図25 四角形が選択されている状態で、「プラス要因」と入力する
[画像のクリックで拡大表示]
図26 「図形の書式」タブ(バージョンによっては「図ツール」の「書式」タブ)の「図形の塗りつぶし」から「オレンジ、アクセント2、白+基本色80%」を選ぶ(1)〜(3)。この色は縦横の矢印に合わせた
[画像のクリックで拡大表示]
図27 続けて「図形の枠線」から「枠線なし」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図28 外枠をクリックして四角形全体を選択し(1)、「文字の塗りつぶし」から「黒、テキスト1」を選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図29 「Ctrl」キーと「Shift」キーを押しながら、「プラス要因」の外枠を右にドラッグする。すると水平方向にコピーできる
[画像のクリックで拡大表示]
図30 コピーした四角形の文字を「マイナス要因」と書き換え(1)、「Ctrl」キーを押しながら外枠を左下にドラッグしてコピー(2)。「内部要因」と書き換える(3)
[画像のクリックで拡大表示]
文字を縦書きにする
図31 「内部要因」の四角形を選択し(1)、「図形の書式」タブの「回転」から「左へ90度回転」を選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図32 続けて、「ホーム」タブの「文字列の方向」から「右へ90度回転」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図33 「Ctrl」キーと「Shift」キーを押しながら、「内部要因」の四角形を外枠を下にドラッグして垂直方向にコピー(1)。「外部要因」と文字を書き換える(2)。これでSWOT分析シートが完成する
[画像のクリックで拡大表示]
図形全体をワードにコピペする
図34 スマートアートの余白をクリックしたら(1)、「Shift」キーを押しながら4つの四角形を順にクリックして同時選択(2)。「ホーム」タブの「コピー」をクリックする(3)(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図35 本誌ホームページに用意したワード文書「SWOT分析のすすめ」を開いて文末をクリック(1)。「ホーム」タブにある「貼り付け」の「▼」ボタンから「図」を選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図36 このように2ページ目に送られてしまうので、左下のサイズ変更ハンドルを右上にドラッグして図を小さくする
[画像のクリックで拡大表示]
余白をトリミングして中央揃えに
図37 1ページ目に送られた図を選択して(1)、「図の形式」タブ(バージョンによっては「図ツール」の「書式」タブ)の「トリミング」を押す(2)(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図38 左辺中央のトリミングハンドル(黒い太線)を内側にドラッグして左余白を縮める。白丸(サイズ変更ハンドル)をドラッグしないように注意する
[画像のクリックで拡大表示]
図39 さらに右辺中央のトリミングハンドルを内側にドラッグして右余白を縮め、作業が終わったら「Esc」キーを押す
[画像のクリックで拡大表示]
図40 図形をクリックして選択し(1)、「ホーム」タブの「中央揃え」ボタンをクリックする(2)(3)。これで冒頭図1右下のようになる
[画像のクリックで拡大表示]