パワーポイント(以下、パワポ)の資料を素早くつくるにはどうすればいいか。そういうときは、全部パワポで作らないのがコツ。ワードやエクセルを活用してプレゼン資料を作る時短テクニックを身に着けよう。
※日経PC21 2020年11月号の記事を再構成
推敲はワード、表はエクセル、仕上げのデザインは最低限で
パワポのプレゼン資料は手早く作るに限る。よくやり玉に挙がるのが、内容の推敲(すいこう)ではなく見た目にこだわって無駄に時間を費やすご仁。会社によっては「パワポ禁止令」が出るくらいだ。
そこで今回は究極の時短術、全部パワポで作らずに、ワードやエクセルと連携してプレゼン資料を作る時短ワザを紹介する。文章(内容)の推敲や編集ならワード、表やグラフの作成ならエクセルのほうがパワポより楽。ならば、それらを活用しない手はない。今回はプレゼンの骨格となるアウトライン(階層構造の文書)をワードで練り上げ、表やグラフをエクセルで準備して、パワポのスライドに取り込む(図1)。仕上げのデザインなどは最低限にとどめて究極の時短を目指そう。
まずは、ワードでプレゼンのアウトラインを作る。見た目を気にせず、内容の推敲に注力するのがポイントだ。箇条書きを次々と入力していこう(図2)。ただし、改行した際に自動で付く連番には注意。図3の操作で解除して、手動で数字を入力する。そうしないと、後でスタイルを適用した際に連番が消えてしまう。
●サンプルファイルはこちら(「日経PC21」提供のファイルがJストリームから直接ダウンロードできます)
パワポだけで作るよりもずっと楽
図1 ワードとエクセルを併用して、パワーポイント(以下、パワポ)のプレゼン資料を手早く作ろう。ワードでアウトライン(階層構造の文書)を作り、それを読み込んでスライドを自動作成。さらにエクセルのグラフや表をスライドに貼り付ける。パワポだけで作るよりもずっと時短になる
[画像のクリックで拡大表示]
ワードで文章の骨組みを作成する
図2 ワードで新規文書を開き、「オンライン会社説明会」と入力して「Enter」キーで改行。さらに「株式会社21文具」と入力して改行する。続けて「1.こんな会社です!」と入力して改行すると、次の行に連番が自動で表示される
[画像のクリックで拡大表示]
図3 左横の「オートコレクトのオプション」をクリックして「段落番号を自動的に作成しない」を選ぶと(1)(2)、次の行の連番が消える。この操作をしないと、後で「見出し1」スタイルを設定した際に先頭の数字が消えてしまうので注意する
[画像のクリックで拡大表示]
図4 続けてこのように残りの文章を入力していく。面倒なら、日経PC21ホームページに入力済みのワード文書(文字のみ)を用意したので、それを入手して作業を進めるとよい
[画像のクリックで拡大表示]
「見出し1」が各スライドにアウトライン表示で編集する
プレゼンの筋書きが完成したら(図4)、パワポにうまく流し込めるようにスタイルを設定する。スタイルとは、さまざまな書式のセットに名前を付けて登録したもので、最初から「見出し1」「見出し2」などが用意されている。それらを適宜適用してパワポで読み込むと、「見出し1」で始まるブロックが1枚のスライドとなり、「見出し2」以降は当該スライド内で箇条書きになる。
まずは、スライドのタイトルにしたい1行目に「見出し1」、箇条書きにしたい2行目に「見出し2」を適用する(図5、図6)。
あとはこの操作を繰り返せばよいのだが、こうした階層の編集ではアウトライン表示がお薦めだ(図7)。スタイルが階層構造で表示されるので、直感的でわかりやすい(図8~図10)。ここでは「見出し3」まで設定した(図11)。
内容の入れ替えが簡単なのもアウトライン表示のメリット。4番目の「見出し1」のブロックを3番目に移動してみよう(図12)。「+」アイコンをドラッグすると下位階層も一緒に移動する。
アウトラインが完成したら、文書全体のフォントを「メイリオ」に変えておく(図13)。パワポではフォント情報も一緒に読み込まれるからだ。最後にワード文書を保存して閉じる(図14)。これで、ワードの出番は終了だ。
なお、今回はゼロからワード文書を作ったが、既存の企画書などを基にする手もある。全体のスタイルを「標準」にして文章を編集した後、「見出し1」などを適用していけばよい。
では、パワポでワード文書を読み込もう。新しいプレゼンテーションを開いて「アウトラインからスライド」を選択(図15、図16)。図14で保存したワード文書を選ぶ(図17)。
スライド向けにスタイルを適用する
図5 1行目にカーソルを置いて、「ホーム」タブの「スタイル」欄にある「見出し1」をクリックする(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図6 さらに、2行目にカーソルを置いて「見出し2」を押す(1)(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図7 2行目が「見出し2」スタイルの箇条書きになったのを確認したら、「表示」タブの「アウトライン」を押す(1)(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図8 「見出し1」「見出し2」をそれぞれ適用した1〜2行目がアウトラインの項目と見なされて「+」マークが付く。3行目をクリックして(1)、「アウトライン」タブの「アウトラインツール」の左端にある「見出し1に変更」を押す(2)(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図9 4〜9行目の左余白をドラッグしてそれらを同時選択し(1)、「レベル下げ」を押す(2)。これで選択範囲に「見出し2」が適用される
[画像のクリックで拡大表示]
階層と並び順を整える
図10 同様の操作で残りの部分も、このような「見出し1」と「見出し2」の2階層のアウトラインにする。パワポで読み込むと、「見出し1」で始まるブロックがそれぞれ1枚のスライドになる
[画像のクリックで拡大表示]
図11 「文具の開発・販売」の下にある4行を 左余白のドラッグで同時選択し、「レベル下げ」を押す(1)(2)。選択部分に「見出し3」が適用されたら、同様の操作で「オフィスのトータルプロデュース」の下にある2行も「見出し3」にレベル下げする(3)(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図12 ここでアウトラインの順番を入れ替えよう。上から4つめの「見出し1」の「+」アイコンをドラッグして3つめの上に移動する(1)。入れ替わったら、番号を上から「2」と「3」に書き換える(2)
[画像のクリックで拡大表示]
フォントを一括変更し、保存して閉じる
図13 「Ctrl」+「A」キーを押してすべての文字列を選択し(1)、「ホーム」タブの「フォント」から「メイリオ」を選ぶ(2)〜(4)。パワポにはフォントの一括変更機能があるが(「デザイン」タブの「バリエーション」にある「フォント」)、ワード文書から読み込んだ文字列には適用されないので、事前に一括変更しておく
[画像のクリックで拡大表示]
図14 これで図1左上のアウトラインが完成。文書を保存して閉じる。閉じないとパワポから読み込めないので注意する
[画像のクリックで拡大表示]
パワポでワード文書を読み込む
図15 パワポを起動して「新しいプレゼンテーション」をクリックする
[画像のクリックで拡大表示]
図16 「ホーム」タブにある「新しいスライド」の「▼」メニューから「アウトラインからスライド」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図17 図14で保存したワード文書を選択して「挿入」を押す(1)(2)
[画像のクリックで拡大表示]
図18 ワード文書の「見出し1」がスライドのタイトル、「見出し2」や「見出し3」がその中の箇条書きになる。左側の一覧で1枚目のスライドをクリックし、「Delete」キーで削除する
[画像のクリックで拡大表示]
「パワポ禁止令」が嫌ならスマートアートはここ一番で
ワード文書には6つの「見出し1」があったので、6枚のスライドが追加されて計7枚になる。元からある1枚目は不要なので削除しよう(図18)。続けて、繰り上がった1枚目のスライドのレイアウトを「タイトルスライド」に変えて、プレゼン資料の表紙にする(図19)。その後、1枚ずつスライドをチェックして、行間や文字サイズなど、気になった箇所を適宜修正する(図20、図21)。余白が広すぎるなら文字を大きくしてバランスを取ろう。色などの装飾は必要最低限にする。
とはいえ、4枚目のように単語が3つだけのスライドは、文字だけだと味気ないし説得力にも欠ける。見る人に強調したい重要キーワードならばなおさらだ。派手な装飾はこういうときにこそ使う。
ここでは箇条書きをスマートアートに変換する。スマートアートは組織図やベン図、フローチャートなどを簡単に作れるオフィスソフト共通の機能だが、入力済みの箇条書きをスマートアートに変換できるのはパワポだけ。これを使わない手はない。
操作は簡単。箇条書きを選択して「SmartArtに変換」を押し、図表の種類を選ぶだけだ(図22、図23)。ここでは、「横方向ベン図」を選び、さらに3つの円の色を「色の変更」機能で変えた(図24)。
各スライドの細部を調整する
図19 2枚目のスライドが1枚目に繰り上がる。左側でそれを選択して(1)、「ホーム」タブの「レイアウト」から「タイトルスライド」を選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図20 左側で2枚目のスライドを選び(1)、箇条書きの外枠をクリックして「ホーム」タブの「行間」から「1.5」を選ぶ(2)〜(5)。これで行間がやや広がる
[画像のクリックで拡大表示]
図21 左側で3枚目のスライドを選び(1)、箇条書きの外枠をクリックして「ホーム」タブの「フォントサイズの拡大」ボタンを2回押す(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
箇条書きをスマートアートに変換する
図22 左側で4枚目のスライドを選択(1)。箇条書きをクリックして「ホーム」タブの「SmartArtに変換」から「その他のSmartArtグラフィック」を選ぶ(2)〜(5)
[画像のクリックで拡大表示]
図23 開いた画面の左側で「集合関係」を選び(1)、右側で「横方向ベン図」を選んで「OK」を押す(2)(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図24 スマートアートが選択されている状態で、「SmartArtのデザイン」タブの「色の変更」から「カラフル-アクセント4から5」を選ぶ(1)〜(3)
[画像のクリックで拡大表示]
表もグラフもコピペでOK、貼り付け方の違いに注意
今度は、プレゼン資料に欠かせないグラフと表を準備しよう。グラフや表はパワポでも作れるが、エクセルで作成済みの場合も多いだろう。そこで5枚目のスライドには、エクセルで作成済みのグラフを貼り付ける。
まずはエクセルでグラフの外枠を右クリックして「コピー」する(図25)。そうしたらパワポの5枚目のスライドに切り替えて、箇条書きの枠を削除してから「貼り付け」ボタンで貼り付ける(図26)。この操作で貼り付けると、パワポでテーマを変更した際にグラフの色も連動して変わる。
グラフが貼り付けられたら位置とサイズを調整しよう(図27)。グラフ選択時に現れる「グラフのデザイン」タブなどで細部を修正することも可能だ。
続いて6枚目のスライドには、エクセルで作成済みの表を貼り付ける。ここではエクセルで設定した書式をそのまま生かしたいので、「元の書式を保持」の形式で貼り付けた(図28~図31)。
以上で6枚の内容が整った。仕上げに「テーマ」機能で全体のデザインを調整すれば完成だ(図32~図34)。
エクセルのグラフを貼り付ける
図25 日経PC21ホームページに用意したエクセルファイルを入手して開き、「年代別構成比」のシートを表示。グラフの外枠を右クリックして「コピー」を選ぶ(1)(2)。このエクセルファイルは開いたままにする
[画像のクリックで拡大表示]
図26 パワポに切り替えて5枚目のスライドを選択(1)。箇条書きの外枠をクリックして枠全体を選択し、「Delete」キーで削除する(2)。続けて「ホーム」タブの「貼り付け」をクリック(3)(4)。この貼り付け方法だと、パワポの「テーマ」を変更した際にグラフの色も変化する
[画像のクリックで拡大表示]
図27 グラフの頂点をドラッグして大きさを調整し(1)、外枠をドラッグして位置を整える(2)
[画像のクリックで拡大表示]
エクセルの表を貼り付ける
図28 エクセルに切り替えて「募集要項」シートを表示。A3~B15セルを選択し(1)、同範囲内を右クリックして「コピー」を選ぶ(2)(3)
[画像のクリックで拡大表示]
図29 パワポに切り替えて6枚目のスライドを選択(1)。箇条書きの外枠をクリックして「Delete」キーで削除する(2)。「ホーム」タブの「貼り付け」をクリック(3)(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図30 右下の「貼り付けのオプション」を押して「元の書式を保持」を選ぶ(1)(2)。この方法だと、テーマを変えてもエクセルの書式が保持される
[画像のクリックで拡大表示]
図31 表の頂点をドラッグして大きさを調整し(1)、外枠をドラッグして位置を整える(2)。外枠をクリックして表全体を選択し、「ホーム」タブの「フォントサイズ」で文字の大きさを変える(3)〜(5)
[画像のクリックで拡大表示]
スライド全体のテーマを変更する
図32 スライドの1枚目を表示しておく(1)。「デザイン」タブの「テーマ」にある「その他」をクリックし、一覧から「縞模様」など好みのデザインを選ぶ(2)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]
図33 6枚すべてのデザインが変更され、グラフなどの配色も変わる。1枚ずつ細部を確認して、箇条書きなどの配置が不適切だったら修正する。「表示」タブの「スライド一覧」を押すと、図1下の表示になってすべてのスライドが画面全体に並ぶ
[画像のクリックで拡大表示]
図34 6枚目の文字は白に変えよう。表の外枠をクリックし、「ホーム」タブの「フォントの色」を「白、テキスト1」に変更する(1)〜(4)
[画像のクリックで拡大表示]