パワーポイント(パワポ)で使える技をもう少し知っていれば、さらによいプレゼン資料を効率的に作れたのに……こんな苦い経験をしたことがある人も少なくないはず。この連載では、知っておくと資料作りが圧倒的に上達するテクニックを紹介する。第1回目は、複数のプレゼン資料を作り分けるためのテクニックだ。
※日経PC21 2021年6月号の記事を再構成
パワーポイント(パワポ)では、何十枚ものスライドを使ったプレゼンテーション資料を作ることもある。その際の課題はスライドの管理だ。
スライドをグループ(セクション)に分けるのは効率的管理の第一歩(図1)。そのうえで、各セクションの先頭のスライドをサムネイルにした目次を作ったり(「ズーム」機能を活用)、全社員向けや新入社員向けなどの目的別にスライドショーを作ったりするテクニックを習得しよう。全スライドに共通の変更を「スライドマスター」で一括適用するワザも覚えておくとよい。
今回は「健康診断のお知らせ」を例に、スライド管理のコツを解説する(図2)。パワポにある程度慣れた中上級者向けだ。
●サンプルファイルはこちら(PC21提供のファイルをJストリームから直接ダウンロードできます)
たくさんあるスライドを「セクション」でグループ化
まずはスライドを複数のセクション、すなわちグループに分ける。ここでは全9枚のスライドを「タイトル」「概要」「検査内容」「受診の流れ」の4つのセクションに分ける。具体的には、左側の一覧で上から1、2、5、8番目のスライドを、それぞれのセクションの先頭に指定する。左側でスライドを選択して「セクションの追加」を選び、セクション名を入力すればよい。1番目と2番目のスライドでの操作は図3〜図6の通り。5、8番目の操作も同様だ。
図7のように「タイトル」「概要」「検査内容」「受診の流れ」の4つのセクションが完成したら、表示方法を「スライド一覧」に変えて全体を見渡そう(図8)。スライドのサムネイルがセクションごとに横並びになる。必要なら、サムネイルの大きさを右下のスライダーで調整しよう。
スライドをセクションに分けると、全体の構成を把握しやすくなるだけでなく、セクション単位での移動も簡単に行える。実際に試してみよう。
セクションを折り畳んで階層を丸ごと移動できる
表示を「標準」に戻して、「セクション」から「すべて折りたたみ」を選ぶと、左側のスライド一覧がセクション名だけの表示に変わる(図9)。かっこ内は当該セクションに含まれるスライドの枚数だ。この状態で、必要なセクションを展開したり折り畳んだりしながら、セクション単位で全体構成を推敲(すいこう)できる仕組みだ。
セクション名を上下にドラッグすると、中身のスライドを丸ごと移動できる(図10)。何枚ものスライドを1つずつ移動する手間が省けて時間の節約になる。今回は実験なので、移動したセクションは元に戻しておく。
次に、スライド修正の強力な助っ人「スライドマスター」を使ってみよう。これは例えば、すべてのスライドのタイトル文字を黒色から緑色に変更したいときなどに重宝する。1枚ずつ手動で変更する手間が省けるので、ぜひ習得しておきたい。
マスターはいわば設計図、直すと全スライドに即反映
スライドマスターはいわばスライドの設計図で、すべてのスライドは何らかのスライドマスター(以下、マスター)をベースに作られている。今回の作例では、2枚目以降はすべて「タイトルとコンテンツ」という名前のマスターだ。このマスターを編集することで、全スライドに共通の修正を施せる。
図11の操作でマスター画面を開くと、左側にマスターの一覧が並ぶので、上から3番目の「タイトルとコンテンツ」を選ぶ(図12)。必ず、基にしたマスターを選ぶのがポイントだ。例えば「新しいスライド」のメニューで「タイトルのみ」を選んでスライドを追加したなら、マスターの修正でも「タイトルのみ」を選ぶ必要がある。
修正の操作自体は簡単。例えばタイトルの文字色なら、「マスタータイトルの書式設定」の外枠をクリックして、「フォントの色」のメニューで緑色に変更すればよい。マスター画面を閉じると、「タイトルとコンテンツ」のマスターで作った2枚目以降のタイトル文字がすべて緑色に変わる(図13、図14)。1枚ずつ修正するのと違って修正漏れを防げるので、スライドの枚数が多いときには非常に助かる。
パワポのプレゼンテーションでは、冒頭で目次を提示してプレゼンの概要を説明することがある。パワーポイント2019やマイクロソフト365に搭載された「ズーム」機能を使うと、目次スライドを簡単に作れる。
プレゼンの冒頭に目次、「ズーム」機能で自動作成
今回の9枚のスライドには、全社員向けと新入社員向けの内容が混在しているので、最初に全社員向けの目次を作ってみる。目次スライドは表紙の次に置きたいので、1番目のスライドを選択してから「ズーム」ボタンをクリックする(図15)。
「ズーム」のメニューには「サマリーズーム」「セクションズーム」「スライドズーム」の3種類があるが、目次を作るときはサマリーズームが便利だ。その設定画面には全スライドが表示されるので、目次に含めたいスライドをチェックする(図16)。
ここでは2、5、8番目を選択したので、自動挿入された2枚目の新しいスライドに3つのサムネイルが並ぶ(図17)。この目次スライドは「サマリーセクション」という名前の新しいセクションになる。目次スライドのタイトルを変更し、サムネイルのレイアウトを整えよう(図18)。さらにセクション名の「サマリーセクション」を「目次」と変えておく(図19)。
サマリーとスライド、2つのズーム機能を使い分け
次に新入社員向けの目次を作ってみる。ここでは「スライドズーム」を使う。「サマリーズーム」でも作れるが、ここでは両者の違いを比較してみたい。ちなみにそれらとは別の「セクションズーム」は、各セクションの先頭スライドをピックアップするものだ。
スライドズームでは既存のスライドにサムネイルが配置されるので、あらかじめ目次用のスライドを用意(挿入)しておく必要がある(図20)。そうしたら、そのスライドにタイトルを入力し、「ズーム」ボタンから「スライドズーム」を選ぶ(図21)。
開く画面で新入社員用の目次に含めるスライドを指定すると(図22)、選択したスライドにサムネイルが配置される(図23)。サマリーズームとは違い、最初は重なって表示される。1つずつドラッグして配置し直そう。
続いて、これらのスライドから全社員向けと新入社員向けの2種類のスライドショーを作る。ファイルそのものを分けると、共通の修正があったときに都合が悪い。「目的別スライドショー」機能を使えば、同じファイルで複数のスライドショーを用意できる。
全社員向けと新入社員向け2つのスライドショーを作る
図24の操作で「目的別スライドショー」画面を開いて「新規作成」ボタンを押したら(図25)、「スライドショーの名前」を「全社員」に変更し、使用するスライドを選択する(図26)。新入社員向けのスライドショーも同様の操作で作れる(図27〜図29)。あとは、プレゼンの対象者に合わせて「目的別スライドショー」から「全社員」もしくは「新入社員」を実行すればよい(図30)。
スライドショーの実行時は、ズーム機能で作った目次スライドの機能にも注目したい。目次スライドのサムネイルには当該スライドへのリンクが自動的に設定されている。サムネイルのクリックでジャンプできることを確認しよう(図31)。
最後の仕上げにスライド番号を付ける。スライドの右下などに連番があると、質疑応答の際に「○番の」と指定できて重宝する。表紙には付けず、2枚目以降に1から始まる連番を付けるとスマートだ(図32〜図37)。ただし、この設定を行うと、ズーム機能の設定画面でサムネイルのタイトルがずれてしまう(図38)。必ず最後に行おう。