2021年上半期に公開した日経クロストレンドの記事のうち、よく読まれたものを分析すれば、同時期の話題やトレンドが分かるのではないか――そんな仮説から企画した本特集。今年もちょうど折り返し、夏休みのタイミングで、上半期の話題をざっとおさらいしてみましょう。第1回は、公開後5日間の訪問者数が多かった記事トップ20をピックアップ。消費者ニーズを見直すことで、素材はそのままに新たな人気商品を生み出した事例が並びました。

日経クロストレンドが2021年1~6月に公開した記事のうち、公開後5日間の訪問者数(UB)が多かった記事上位20。各記事へのリンクは本文中、または記事末尾の一覧を参照
日経クロストレンドが2021年1~6月に公開した記事のうち、公開後5日間の訪問者数(UB)が多かった記事上位20。各記事へのリンクは本文中、または記事末尾の一覧を参照

 日経クロストレンドでは、2021年1~6月の半年間で約1500本の記事を公開しています。それらについて、会員・非会員を問わず、公開からの5日間に記事を閲覧した人の数(ユニークブラウザー、UB)が多い記事を抽出、上位20本を並べたのが上の表です。

 まず気になるのが、食品、飲料に関する記事が多いことです。

 1位は、「【特報】コーラ500ミリがスーパーから消える 25年ぶり大改革」。日本コカ・コーラがスーパー向けの「コカ・コーラ」ラインアップを刷新。従来の500ミリリットルと1.5リットルのペットボトルから、350ミリリットルと700ミリリットル、1.5リットルの3種類に切り替えたことをいち早く「特報」として発信しました。

スーパーでは350ミリリットルと700ミリリットルのペットボトルが売られるようになった
スーパーでは350ミリリットルと700ミリリットルのペットボトルが売られるようになった
【特集】2021年上半期人気記事ランキング

 この裏には、長年当たり前のように捉えてきた商品構成への見直しがあります。同社が消費者調査を実施したところ、自販機やコンビニと違い、スーパーで購入した商品は、家に持ち帰って飲むこと、3人に1人が家族などとシェアして飲んでいることが分かりました。それを踏まえ、スーパー向きには、1人で飲みきれる350ミリリットルと家族でシェアする700ミリリットルを新たに発売し、それらに注力すると判断しました。

 3位の「イオンのキューブ型冷凍魚が好調スタート あえて四角にしたワケ」は、21年5月にイオングループが発売した「トップバリュ パパッとできるお魚おかず」シリーズの話題です。サーモン、アジ、サバ、タラ、ブリの骨を抜き、キューブ型に加工した商品で、イオンリテールの販売量は計画比1.5倍と、好調なスタートを切りました。

 子供や高齢者を抱える家庭で顕著な「切り方が分からない」「扱いが面倒」といった調理上の不満、「骨が残っていると危ない」といった食べるときの不満を解消することを目的に、開発したとのこと。

イオンの「トップバリュ パパッとできるお魚おかず」シリーズ(写真提供/イオントップバリュ)
イオンの「トップバリュ パパッとできるお魚おかず」シリーズ(写真提供/イオントップバリュ)

 9位の「新発想 ローソンの『冷凍なのにすぐ食べられるスイーツ』が好調」は、新しいタイプの冷凍スイーツを取り上げました。

 冷凍スイーツ自体はさほど珍しいものでもありませんが、冷凍庫から出して解凍せずにすぐに食べられるのがこの商品の特徴。コロナ禍の外出自粛などでまとめ買いをする人が増える中、自宅にストックしておき、食べたいときに解凍せずにすぐ食べられるシーンを想定して、20~40代の女性をターゲットに開発しています。

冷凍庫から出してすぐに食べられる。写真は「ドライフルーツとナッツのカッサータ」
冷凍庫から出してすぐに食べられる。写真は「ドライフルーツとナッツのカッサータ」

 14位の「『生ジョッキ缶』成功 アサヒの体質変えた“外様取締役”の手腕」は、21年上半期の大ヒット商品の1つ、「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」について、アサヒビールの専務でマーケティング本部長の松山一雄氏に聞いたインタビューです。

 フルオープン缶と細かい泡をつくり出す缶の内壁の凹凸という2つのアイデアを融合させ、新しい缶ビールの楽しみ方を提案するまでを、商品はもちろん、組織づくりにまで踏み込んで、松山氏に語っていただきました。

大きく開いた缶の口に、泡が自然に盛り上がる「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」
大きく開いた缶の口に、泡が自然に盛り上がる「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」

 ほかにも11位の「『オートミール』が20~30代に激売れ! 温めて米代わりに」など、消費者の食の嗜好を取り上げた記事が目立ちます。

ヒットを生むのは新技術だけじゃない

 これらを読み比べてみると、直近のヒット商品は、消費者ニーズに改めて向き合うことで、商品設計を見直し、新たな価値を提案したことが話題性や人気につながったものが多いことが分かります。例えば、コカ・コーラは中身はそのまま、商品の量を変えただけ。キューブ型冷凍魚は原料の魚をキューブ型に加工したものです。ローソンの冷凍スイーツも、新しい冷凍技術を生み出したわけではなく、原料や素材の組み合わせを工夫することで、冷凍しても硬くなり過ぎないようにしたのが新しい点。アサヒの「生ジョッキ缶」も、肝は細かい泡を楽しめるフルオープン缶でした。ゼロから新しい商品を生み出すのではなく、既存の商品の容器や見せ方、使い方を変えるだけでもヒットは作れるということです。

 近年は、消費者が食品や飲料に求めるものが変わりつつあります。背景にあるのは、コロナ禍で外食を控え、家で食事を楽しむ人も増えていることや、健康志向の高まり、SDGs(持続可能な開発目標)への関心拡大など。既存の製品を今の消費者ニーズにどうフィットさせるか。各社はどんな分析と工夫をしているのか。そんな視点でこれらの記事を読んでみると、ヒットを生み出すヒントが見つかるかもしれません。

【ランキングした各記事へのリンクはこちら】
【1位】【特報】コーラ500ミリがスーパーから消える 25年ぶり大改革
【2位】話題の「Clubhouse」になぜハマる 起業家たちが語る“中毒性”
【3位】イオンのキューブ型冷凍魚が好調スタート あえて四角にしたワケ
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【9位】新発想 ローソンの「冷凍なのにすぐ食べられるスイーツ」が好調
【10位】コロナ禍なのに2億円かけてオフィスを新設した中小企業の末路
【11位】「オートミール」が20~30代に激売れ! 温めて米代わりに
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