プロセスマーケティング 第5回(画像)

ベースフード(東京・目黒)が展開する完全栄養食ブランド「BASE FOOD」は、シリーズ累計販売数が1000万食を突破するなど堅調だ。同社は1万人を超える顧客コミュニティー「BASE FOOD Labo」を運営。同コミュニティーでは会員を研究員と呼び、商品開発プロセスを開示して参加してもらう。2021年6月に発売した完全栄養クッキー「BASE Cookies」もそうして開発された。顧客と共創するものづくりが成長の源泉になっている。

完全栄養食ブランド「BASE FOOD」は商品開発のプロセスをすべて、自社コミュニティーの会員に開示する。2021年6月に発売した完全栄養クッキー「BASE Cookies」も顧客との共同開発で生まれた
完全栄養食ブランド「BASE FOOD」は商品開発のプロセスをすべて、自社コミュニティーの会員に開示する。2021年6月に発売した完全栄養クッキー「BASE Cookies」も顧客との共同開発で生まれた

 BASE FOOD Laboは、これぞプロセスマーケティングの理想形ともいえる取り組みだ。LaboのメンバーはBASE FOODの定期購入者が中心。同社にとって優良顧客化が期待できる層だ。商品が定期的に届くため、ブランドとの関与度が高くなる。ただし満足のいく商品でなければ、厳しく意見する「もの言う客」でもある。購入者から直接得られる声は、ベースフードの商品作りに欠かせない。

前回(第4回)はこちら

 ベースフードはそうして得た会員の声を取り入れ、改善した点を活動報告として都度発表している。会員は報告を通じて、きちんと自分たちの意見が取り入れられていることを実感できるため、ますますブランドへの関与度が高まるという好循環を生み出している。同社の顧客単価は年々上昇傾向にあり、この2年で39%増加した。会員の声を基に毎年4商品ずつ新商品を開発しており、新商品発売のたびに定期購入に追加する顧客が多いからだ。

ベースフードは顧客の声を反映した改善点を「カイゼン報告」として自社サイトに掲載。会員は自分の声が届いているという実感が得られる
ベースフードは顧客の声を反映した改善点を「カイゼン報告」として自社サイトに掲載。会員は自分の声が届いているという実感が得られる

 ベースフードにとってLaboは、経営の根幹といっても差し支えない存在だ。では、同社がLaboを通じてどのようにプロセスをマーケティングに取り入れているのか、詳しく解説していこう。

会員数は1万人超、アクティブ率は約30%

 「プロセスを開示することで、アウトプットである商品の改善スピードや品質が高まり、さらにプロセスにかかわる仲間が増える。そのような循環をつくることが、我々にとってプロセスマーケティングに取り組む意味だ」

 ベースフードCMO(最高マーケティング責任者)の齋藤竜太氏は、BASE FOOD Laboで商品開発のプロセスを会員に開示する理由をこう説明する。同Laboは会員による写真などの投稿、ベースフードが提案するレシピ、そして会員へのアンケートなどの機能を持ったコミュニティーサイトだ。

ベースフードの顧客コミュニティー「BASE FOOD Labo」には1万人超が登録する。会員を「研究員」と呼び、一緒に食のイノベーションを研究する仲間という位置付けだ
ベースフードの顧客コミュニティー「BASE FOOD Labo」には1万人超が登録する。会員を「研究員」と呼び、一緒に食のイノベーションを研究する仲間という位置付けだ

 会員数は1万人超で、月間利用者数(MAU)は会員の約30%と非常にアクティブ。投稿には管理栄養士やコミュニティー担当者だけでなく、橋本舜社長もコメントするなどして、活性化につなげている。新商品を開発する場合は、必ずこのLaboの会員に開発プロセスを開示しながら意見を求めて完成に近づけていく。

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