
話題の「プロセスエコノミー」とは何か。前回はその名付け親である連続起業家のけんすう(古川健介)氏と書籍『プロセスエコノミー』の著者であるIT批評家の尾原和啓氏に、プロセスエコノミーの本質について聞いた。今回はプロセス(過程)を開示するうえで意識すべきことを探っていく。
「プロセスが面白くてもアウトプットの質が低いと本末転倒。アウトプットのレベルが高いのが前提なのに、プロセスだけを頑張ってアウトプットがおろそかになると失敗する」。けんすう氏はこう警鐘を鳴らす。
高いアウトプットが生み出せることが前提
前回の記事ではWHY(なぜ)からスタートし、HOW(どうやって)やWHAT(何を)に至るプロセスを公開することで、消費者が自分に寄り添ってくれていることを実感できたり、課題が解決される瞬間を体験できたりするのがプロセスエコノミーの本質だと述べた。しかし、これは提供側が高いアウトプットを生み出せる前提があってのことだという。
「誰もが自分のルーツやビジョンを発信するようになっているが、全然知らない人に『自分は○○という街に生まれて』みたいなことを語られても聞きたくないだろう。知名度がない人はまず有益な情報を出していくしかない。知らない人の意見や日記を誰も読まないし、読まれるとしても刺激が強いものばかり。極論ばかりが注目され、それはそれで良くない」(けんすう氏)
ビジョンだけ掲げて実が伴わなかったケースが、“血液1滴で病気が分かる”とうたって投資を集めた米国のスタートアップ「セラノス」。企業の評価額が1兆円を超え、女性版スティーブ・ジョブズとして話題となったCEOの個人資産が数千億円にもなったといわれたが、実はそういった技術は実現しておらず、できるように見せかけていた。できもしないことを言い続け、プロセスで人々の関心を引き付けて企業評価額を肥大させていたわけだ。
「プロセスエコノミーは人気や知名度がない人にとって新しくて魅力的に見えるが、そんなポジティブな話ではない。アウトプットの質が高いレベルで差が付かないのでプロセスさえも見せていかなければならない時代になったわけで、より難易度が高いステージに上がったと考えたほうがいい」(けんすう氏)
フィルターバブルの危険性も
尾原氏も、プロセスエコノミーという言葉が分かりやすいからこそ、書籍ではその弊害を伝えることを強く意識したという。
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