2021年8月4日発売の「日経トレンディ2021年9月号」では、「道の駅&サウナ 最強ランキング」を特集。クルマで近場を旅するマイクロツーリズムの受け皿として、近年急激な進化を見せている道の駅とサウナの魅力に迫っている。道の駅では今や、地場産品を買ったり味わったりはもちろん、そこにしかない遊びや宿泊などのレジャー体験も可能だ。まずは、その最新トレンドを紹介する。

※日経トレンディ2021年9月号の記事を再構成

 コロナ禍により遠出の旅行が制限される中で、クルマで1時間程度の移動で地元を巡る「マイクロツーリズム」に脚光が当たっている。そして、地元再発見の拠点として有望なのが、全国各地に1193カ所ある「道の駅」だ。

 道の駅と言えば野菜の直売所に駐車場とトイレのみといった、ドライブ中の休憩所というイメージを抱いている人も多いが、それは違う。1993年4月に全国で103カ所が登録されてから30年弱で劇的な変化を遂げているのだ。

 例えば、96年に開業した群馬県「川場田園プラザ」は、人口約3700人の村に年間200万人もの客を呼び込む一大観光地になっている。お目当ては地元産の乳製品などを使ったオリジナル商品だけではない。果物狩りや陶芸など、遊べる要素もたっぷり。東京から近い身近なリゾートとしての地位を確立している。

 道の駅の役割は時代と共に変化している。2013年に国土交通省が、「道の駅の目的地化」を掲げたことで、各地で地域の特色を生かしたご当地グルメ、土産物、直売所の設置が加速した。2015年には、年間の利用客は累計2億人を突破。年間売上高も約2500億円と一大市場を築き上げている。20年からは「地方創生・観光を加速する拠点」「地域との交流促進」「防災拠点」などを打ち出している。

 各地に個性ふれる道の駅がひしめく “群雄割拠”の時代、どこに向かうべきか。「日経トレンディ2021年9月号」では、道の駅に詳しい達人の協力の下、全国を9つのエリアごとの「今行くべき価値のある道の駅」1~5位を聞いた。ゼンリンの協力を得て実施した約3000人の会員へのアンケート結果と合わせて「道の駅ランキング」を作った。さらに、編集部が今行くべきと感じた場所へ実際に行って、その進化を取材した。

 ランクインした駅の共通点は何か。まず注目すべきは、“エクストリームな体験”を売りにする駅だ。18年に開業した「たるみずはまびら」(鹿児島県)は、ボート上に立って海の上を移動する「SUP」が体験できるマリンパークたるみずに隣接している。「田野駅屋」(高知県)の製塩体験施設など、わざわざ行く価値のある体験を提供する道の駅が数多くある。

【トレンド1】エクストリーム体験

■たるみずはまびら(鹿児島県)
■たるみずはまびら(鹿児島県)
鹿児島県の道の駅では、立ちながらボートを漕ぐマリンスポーツ「SUP(サップ)」が楽しめるところもある。写真はハンドルで操作する「ミラージュエクリプス」
■田野駅屋(高知県)
■田野駅屋(高知県)
天日塩づくりができる製塩体験施設。塩を採集し袋詰めにするまでを行うなど他には無い体験を味わえる
■サーモンパーク千歳(北海道)
■サーモンパーク千歳(北海道)
隣接した水族館で、サクラマスやギンザケが悠々と泳ぐ姿を見られる。サケの名産地ならではのエンタメだ

 次に、グルメも進化している。単に地場の野菜や魚介類を売るだけではなく、創意工夫を凝らした「ここでしか食べられない」特別なグルメを用意する道の駅が増えているのだ。

 例えば、一口に海鮮丼といっても、地域色を出して差別化を図っている道の駅もある。「うずしお」(兵庫県)は、「白い海鮮丼」という白身魚だけで作った丼ものを提供し、話題をさらった。「米沢」(山形県)が20年6月から販売を開始した「米沢牛ユッケ寿司」は、特別に生肉加工の許可を得て開発した、米沢でしか味わえない一品だ。

【トレンド2】行かなきゃ食べられない

■うずしお(兵庫県)の「白い海鮮丼」
■うずしお(兵庫県)の「白い海鮮丼」
淡路島近海の地魚を使った海鮮丼。マグロやイワシなどの赤身魚が取れないことを逆手にとり、白身魚を売りにしたアイデア商品
■米沢(山形県)の「米沢牛ユッケ寿司」
■米沢(山形県)の「米沢牛ユッケ寿司」
特別な許可を得てユッケを提供しており、ほぼここでしか食べられない。全長50センチメートル
■萩しーまーと(山口県)の「萩の地魚」
■萩しーまーと(山口県)の「萩の地魚」
首都圏には流通しづらい小ぶりなアマダイが買えるのは産地ならでは。道の駅の市場にはこんな掘り出し物もある
■お茶の京都 みなみやましろ村(京都府)の「村抹茶ソフトクリーム」
■お茶の京都 みなみやましろ村(京都府)の「村抹茶ソフトクリーム」
特産品のお茶を最大限生かすため生まれた、「濃すぎる」抹茶スイーツ

 日帰りで遊べるだけでなく、もっと長く滞在する目的地を目指し、宿泊施設を設ける道の駅も増えている。「保田小学校」(千葉県)は、廃校を利用した道の駅で、昔の学校のノスタルジーにひたれる空間を作っている。そして、教室を使った異色のホテルを開設。「一度は行ってみたい」と評判を得ている。

【トレンド3】泊まれるテーマパーク

■保田小学校(千葉県)
■保田小学校(千葉県)
廃校を利用したエンタメ感あふれる道の駅。教室の雰囲気を残した客室に泊まれる
■神戸フルーツ・フラワーパーク(兵庫県)
■神戸フルーツ・フラワーパーク(兵庫県)
遊園地「神戸おとぎの国」を有する道の駅。城のような外観のホテルがある

 この動きをさらに加速させそうなのが、世界最大のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルの参入だ。「フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅プロジェクト」をスタート。現在14カ所の道の駅のそばに宿泊施設を開業している。食事は道の駅を利用し、そのそばのホテルで寛ぐ、翌日はまた次の道の駅へと向かうという新しい旅のスタイルを提案する。

 海外旅行に行けない…と嘆いている暇はない。地元の道の駅にこそ、新しい発見があるはずだ。21年後半のマイクロツーリズム計画に、この特集を役立ててほしい。

日経トレンディ2021年9月号
「道の駅&サウナ 最強ランキング」の主な内容を紹介
【道の駅編】
●関東エリア:リゾート駅「川場田園プラザ」に人が殺到
●関西・四国エリア:テーマパーク型の道の駅がトップ
●中部・北陸エリア:EVミニカーのガイドツアー体験も
●東北エリア:全国で唯一、「無印良品」が入る駅が誕生
●北海道エリア:水族館も楽しめる「サーモンパーク千歳」
●中国・九州エリア:食べるべき、萩の「瀬付きアジ」
●取材して分かった! 道の駅のお取り寄せヒット
●全国1157駅を制覇した達人が薦める超体験型道の駅7選

【サウナ編】
●プロ30人に聞いたサウナランキングTOP10
●日本海水風呂から屋上サウナまで 5大トレンド徹底調査
●サウナ基礎講座 今さら聞けない作法、健康効果
●漫画『サ道』のタナカカツキ 特別インタビュー
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