2021年8月4日発売の「日経トレンディ2021年9月号」では、「道の駅&サウナ 最強ランキング」を特集。人体にもたらす健康効果についても研究が進められているサウナ。「疲れが取れる」「二日酔いが覚める」などと言われるが、正しいのか。日本サウナ学会代表理事を務め、サウナの健康効果の研究を進める慶応義塾大学医学部特任助教の加藤容崇氏に聞いた。

※日経トレンディ2021年9月号の記事を再構成

前回(第6回)はこちら

 まずはサウナに入る際の注意点を押さえておく。サウナ室ではギリギリまで粘りたくなるものだが、無理は禁物だ。慶応義塾大学医学部特任助教の加藤容崇氏は、「客観的な指標として、心拍数を測るのがお勧め。脈拍は自律神経を非常によく表す指標。軽いジョギングや、階段を上る時くらいの心拍数になったらサウナ室を出る目安」と説明する。

加藤容崇氏
慶応義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事
慶応義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心としたがん全般と神経変性疾患の病理診断。サウナの健康効果を研究し、自身もほぼ毎日サウナに入るという

 なお、汗をたくさんかいたから良いわけではない。確かに体内の塩分や皮脂が一緒に流れ出す作用はあるが、「ととのう」かどうかという本質とは関係ない。頑張り過ぎは禁物だ。

 水風呂は1分間が目安。感覚的な指標としては、「深呼吸して、喉がスースー感じられたら出る」(加藤氏)。ぬるめの水風呂だと長く入れるケースもあるが、低体温症になるリスクがあるので避ける。

【Q】体の疲労が取れる?
【A】効果アリ

 疲労には自律神経が深く関連する。現代人は情報過多で、リラックス状態で働く副交感神経に対して、体にストレスがかかった状態で働く交感神経が優位になりがちだという。加藤氏は、「交感神経は瞬間的にパフォーマンスを上げるために働くものなので長続きせず、ずっと使い続けると疲労する。要するに、仕事のパフォーマンスが上がらなくなる」と説明する。

 慢性的に蓄積した疲労を解消してパフォーマンスを上げるためには、副交感神経を優位にさせ、交感神経を休める必要がある。「意図的にこのスイッチングをすることはできないが、サウナに入ることで、強制的に副交感神経を優位にさせられる」(加藤氏)

 特に、水風呂に入ることが重要。この観点では、「サウナ室はあくまで、冷たい水風呂に入れるように体を温めているという位置付け。水風呂の過酷な状況下では、普段の比ではないほど交感神経が優位になる。その後に外気浴などで休憩すると、反動で、同じく圧倒的に副交感神経が優位になる」(加藤氏)

 サウナ室→水風呂→外気浴のセットは3~4回繰り返すのが基本。注意点は水風呂を出た後、すぐ外気浴に移ること。「血中には興奮状態で出るアドレナリンが残っているのに、自律神経は副交感神経優位になっているという『真のととのい』と呼ぶべき稀有なリラックス状態は、水風呂を出てから約2分だけ」(加藤氏)というためだ。

■「真のととのい時間」は水風呂を出てから約2分
■「真のととのい時間」は水風呂を出てから約2分
サウナに入る前から外気浴をするまでの、自律神経の活動とアドレナリンの分泌の推移。水風呂から出て約2分は血中アドレナリンが高いのに副交感神経が優位に
【Q】脳疲労が取れる?
【A】効果アリ

 体だけではなく、脳の疲労も取れる。ボーッとしている時と集中している時とでは脳の使い方が違う。集中している時は脳のエネルギーの消費量が約5パーセントに対し、ボーッとしている時は70~80パーセントも消費するのだ。「家で1日中ボーっとしていても、夜になって疲れたと感じるのはこのため」(加藤氏)

 サウナ室では暑くて何も考えられなくなる。これが強制的に脳の“集中状態”を作り出している。結果的に脳を休ませることになるのだ。

 検証結果もある。加藤氏が「MEG」(脳磁図記録)という高精度な脳波計でサウナ後の脳の状態を計測したところ、「脳がリラックスしていることを示すα波の『正常化』が確認できた」と言う。しかも、その際MEGで計測したサウナ後30分までその状態が続いており、それ以降も脳が“休息状態”にあることが予想される。

【Q】デトックスできる?
【A】効果ナシ

 そもそも、体内に毒素が溜まっているという状態は存在しない。加藤氏は、「肝臓や腎臓など、人体に不要な物質をクリアする臓器は幾つもあり、それが機能しなければ病気として出てくる。そもそも毒素が汗から出ることはほぼない」と言う。ただし、「塩分摂取量が多い人は、体内の塩分が汗と一緒に出るので、良い影響が期待できるかもしれない」と続ける。

二日酔いが覚める? ダイエットには効果あり?

【Q】二日酔いが覚める?
【A】効果ナシ&危険!

 加藤氏は、「悪化する。脱水になって危険」と警鐘を鳴らす。

 二日酔いの時は、体には水分が保持されにくい。二日酔いの原因成分であるアセトアルデヒドを体外に放出するために、尿量を増やそうとするからだ。水を飲んでも、すぐに薄い尿として出されてしまう。

 つまり、二日酔いの時は水を飲んでも脱水が解消されづらい。この状態でサウナに入り、汗でさらに体内の水分を放出するのは危険だ。「体感としてラクになったという人もいるが、それは二日酔いが治りかけだっただけ。サウナに入っても入らなくても、結局二日酔いは覚めている」(加藤氏)

【Q】ダイエットできる?
【A】正しく入れば効果アリ

 「サウナに入ると代謝が上がることで、ダイエット効果が期待できる側面もある」(加藤氏)と言うが、必ず注意しなければならない点がある。それは、サウナ後の食事に気を付けること。サウナ後に食欲が増すという研究報告がある。思うままに食べると、結果的に総摂取カロリーがサウナに入らない場合より多くなってしまい、逆効果になる可能性があるのだ。さらに、「サウナに入ると皮膚に血流が集中して消化管にいかなくなるので、消化不良を起こす可能性がある。サウナ直前やサウナ中の食事も好ましくない」(加藤氏)

【Q】美肌効果がある?
【A】効果アリ

 美肌を健康的な皮膚の状態と定義すると、美肌効果はあるといえる。サウナに入ると皮膚の毛細血管の密度を上げることで、熱を下げようとする作用が働く。皮膚の毛細血管の密度が高い代表例が、赤ちゃん。「サウナ好きの女性から、ファンデーションがいらなくなったという話も聞いたことがある」(加藤氏)

【Q】睡眠の質が上がる?
【A】効果アリ

 サウナに入った人の75パーセントが、睡眠の質が改善したという研究結果が公表されている。そのメカニズムは解明されていないが、加藤氏は「DPG」の変化で、睡眠のスイッチが入るからではないかと分析する。

 DPGとは、体の中心部の深部体温と、手足などの末梢体温との差のことだ。末梢体温が深部体温より高ければ高くなるほど、人は眠くなるという報告がある。横になると眠くなるのも、重力で深部に戻りづらくなっていた末梢の血液が循環し、深部の熱を奪って末梢に移動することが原因と分析されている。

 加藤氏は、「推測の域は出ないが、高温のサウナ室では、体の深部まで温められる。その後、外気浴で副交感神経が活性化することで末梢の血流が増加するので、温かい深部から末梢に血液が循環し、末梢で冷やされた血液が深部に戻ることで深部の体温が低下し、相対的に末梢の体温が上昇する。つまり、横になった時と同じような状態がつくられていると考えられる」と言う。

 実際に加藤氏は、サウナに入った日とそうでない日の夜の睡眠の質を、睡眠計を使って比較した。すると、サウナに入った日は深い睡眠の時間が5日間の平均で1.5倍になることが分かった。睡眠時間は同じでも、脳や体の疲労を回復する質の高い睡眠が得られるようになったのだ。

■睡眠の質が上がる
■睡眠の質が上がる
サウナに入った日の方が、深い睡眠が得られることを示した解析結果

加藤氏が薦める! 注目サウナ トップ3

【1】森のスパリゾート 北海道ホテル
北海道・帯広にある。「モール温泉水をかけるロウリュ『モーリュ』や、壁にロウリュする『ウォーリュ』などがあり、サウナ客を快適に楽しませることを優先している」(加藤氏)

【2】森のサウナ Replus
京都市北区の森の中にあるプライベートサウナ。水風呂は鴨川源流の天然水を掛け流しで使っている。「マスターの和田さんは理学療法士、鍼灸師でもあるため医学知識もあり、安心感がある」(加藤氏)

【3】KURA SAUNA
築90年を超える旧呉服店の庭に佇む蔵をリノベーションしたという、茨城県結城市のサウナ。「地元の味噌だるを使った水風呂も格別。都心から近く、存分にサウナの良さが味わえる」(加藤氏)

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