2021年8月4日発売の「日経トレンディ2021年9月号」では、「道の駅&サウナ 最強ランキング」を特集。サウナブームを語るのに欠かせない作品が、多方面で活躍するクリエイターのタナカカツキ氏が手掛ける『サ道』だ。実際のサウナ体験をユーモラスに文章化し、サウナにハマる人が続出するきっかけとなった。ブームを象徴する言葉「ととのう」も、漫画化した作品から誕生。なぜ、人々は『サ道』を通して、サウナの魅力にハマっていくのか。タナカ氏に聞いた。
※日経トレンディ2021年9月号の記事を再構成
サウナブームを語るのに欠かせない作品がある。2009年のウェブマガジン連載開始をきっかけに、11年に書籍化、16年に漫画化、19年にドラマ化された『サ道』だ。作者は、マンガ家や映像作家など多方面で活躍するクリエイターのタナカカツキ氏。12年発売の大ヒットカプセルトイ「コップのフチ子」(奇譚クラブ)の仕掛け人としても知られる。
ウェブマガジンでは、タナカ氏のサウナ体験を基にしたエッセイ形式の文章を配信した。水風呂に入って快感を得るに至るまで、試行錯誤して時に失敗したり、先達を参考にしたりする様子をユーモラスに文章化。これをきっかけにサウナにハマる人が続出するなど大きな反響を呼んだことで、その内容を一冊にまとめた書籍も発行された。
漫画では、登場人物たちがサウナ体験をしていくショートストーリーを通し、サウナの魅力や豆知識が学べる。さらにここで、サウナブームを象徴する言葉「ととのう」が登場する。
「『ととのう』という言葉は、仲間内ではずっと使っていました。でも一般表現として使われる言葉ですし、文章だけだと伝えづらいので、『トランス』や『トリップ』と書き、書籍化の段階までは、『ととのう』という言葉を使うのは見送っていたんです」
「ただ、『ととのう』はネガティブなエッセンスが無い、良い言葉だと思っていました。16年に漫画化した際、絵なら登場人物の表情などで補える部分があると、『ととのう』という言葉を使い始めたんです。すると、この言葉が合言葉のように言われるようになった。『サウナに入れば、ととのう』という良いイメージが広がり、サウナに興味を持つ人が増えたのではないかと思います」
なぜ、人々は『サ道』を通して、サウナの魅力にハマっていくのか。書籍を読むと、タナカ氏の目線を通したエッセイで、無知な状態から魅力を知っていく体験そのものが大きな要因の一つであることが分かる。
「子供の頃からサウナには入っていましたが、おじさんが汗をかいている空間は環境が良くないし暑くてつらい。おじさんがなぜ好んでサウナに入るのか、意味が分からなかったです」
「40歳になる手前くらい、07~08年ごろに近所にサウナ併設のジムができ、運動不足も気になっていたので入会しました。風呂には入っていましたが、サウナなんて視界に入っていなかった。扉はただの壁だと思ってました(笑)。でも、あるときサウナに入ってみると、出来て間もなかったこともあり、サウナ室には木の香りが漂っていた。これが最も魅力を感じた部分で、精神的な安らぎがすごく得られました」
水風呂も最初は入れなかったというから驚きだ。でも体に水をかけたり、腰までつかったりしているうちに首まで入れるようになり、椅子で休んでいる時に体がじんじんする感覚を得られた。
「繰り返すうち、ある時ものすごい恍惚を感じる瞬間があったんです。サウナの魅力に気付き、『ああ、おじさんはこれを味わうためにサウナに入っていたのか』と納得しました。その後は、自身を被験者にして色々な入り方を実験しました。時には気分が悪くなることもありました(笑)。ネット検索で『サウナ 恍惚』『サウナ 気持ち良い』などと調べてみたり、情報を集めて試行錯誤を繰り返したり、自分にベストな方法を探っていきました」
タナカ氏がサウナについて積極的に情報発信を始めたのは09~10年。TwitterなどのSNSが広く使われるようになった頃だ。
「SNSで盛んにつぶやいたことで、文章やエッセイとしてまとめないかという声がかかり、ウェブマガジン『サ道』のスタートや書籍の発行につながりました。13年には日本サウナ・スパ協会のサウナ大使にも任命されて、テレビやラジオにも積極的に出演するなど、サウナの魅力をあらゆる形で伝える活動も活発にしました。既にその頃から、サウナブームという言葉がちまたで聞かれるようになっていました」
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