伝統工芸×テクノロジー 第14回(写真)

歴史的な名作絵画を明るい場所でじっくり鑑賞したい──。だが、作品の劣化を防ぎ、後世に伝えていくためには、照度を上げて展示するのは難しい。文化資産が持つこんな課題を解決する一つの方法が、文化資産をデジタル化するデジタルアーカイブだ。

新感覚デジタルアート展「巨大映像で迫る五大絵師─北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界─」
新感覚デジタルアート展「巨大映像で迫る五大絵師─北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界─」
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 この技術を活用するメリットは、文化資産を記録し、劣化や消失を防止できること。さらに「産業利用することで、作家が何を考えて何をしたのか、創造の秘密を解き明かすことができるようになる」と、超高精細デジタルリマスター技術を持つアルステクネ(東京都調布市)の久保田巖社長は語る。

 2021年7月16日から9月9日まで大手町三井ホール(東京・千代田)で開催された新感覚デジタルアート展「巨大映像で迫る五大絵師─北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界─」は、産業活用例の一つ。同イベントでは日本美術史を飾った五大絵師の代表的な傑作を巨大スクリーン映像で堪能できる。

東京オペラシティタワー(東京・新宿)のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催された「Digital×北斎【破章】北斎vs廣重」
東京オペラシティタワー(東京・新宿)のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催された「Digital×北斎【破章】北斎vs廣重」
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縦7メートル、横45メートルの3面ワイドスクリーンで巨大映像を体感
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 またNTT東日本が運営する文化施設NTTインターコミュニケーション・センター(ICC、東京・新宿)で開催されている「Digital×北斎【破章】北斎vs廣重」は、久保田氏が監修まで担当。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」全47作品と、歌川廣重の「東海道五拾三次」全56作品の展示用マスターレプリカを展示している。展示されているマスターレプリカは、20億画素というアルステクネが持つ高精細デジタル化技術とDTIP(超高品位質感情報記録処理技術)で実現した。

 下の画像は歌川廣重の「赤阪 旅舎招婦ノ図」のマスターレプリカである。これを部分拡大したのが、下の2点だ。プリントアウトされたものであるにもかかわらず、和紙の繊維1本1本、凹凸一つひとつまで再現されていることが分かる。会場では部分拡大するルーペも用意してあるので、明るい照明の下で浮世絵をじっくり鑑賞できる。

20億画素でデジタル化した展示用マスターレプリカ、歌川廣重の「東海道五拾三次 赤阪 旅舎招婦ノ図」(大阪浮世絵美術館所蔵) ©Ars Techne・Innovation/Arstechne
20億画素でデジタル化した展示用マスターレプリカ、歌川廣重の「東海道五拾三次 赤阪 旅舎招婦ノ図」(大阪浮世絵美術館所蔵) ©Ars Techne・Innovation/Arstechne
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