伝統工芸×テクノロジー 第10回(写真)

京都府宇治市にある南條工房は、寺や家庭で仏具として使われる鈴(りん)を中心に製造している。創業は1830年ごろで、佐波理(さはり)と呼ばれる銅とスズを溶かした合金で作る伝統技法を継承してきた。新しい市場を開拓しようと、2019年に仏具以外の鈴として発売した商品が独自ブランド「LinNe」シリーズだ。

「LinNe Chibi」。仏具の鈴もLinNeも、配合や作業工程は同じ。小さくするのに苦労したほか、生産性向上やコストダウンのため、型の作り方を工夫した。組みひも部分も宇治市の伝統工芸を生かした
「LinNe Chibi」。仏具の鈴もLinNeも、配合や作業工程は同じ。小さくするのに苦労したほか、生産性向上やコストダウンのため、型の作り方を工夫した。組みひも部分も宇治市の伝統工芸を生かした
[画像のクリックで拡大表示]

 「佐波理は、古くは正倉院宝物にも用いられた合金。音色と余韻を良くするために銅にスズを限界まで配合している。佐波理という合金を使っている工房は国内に、ほとんどないだろう。鳴り物に適する音色になるように、先祖が金属の配合を工夫した。とても澄みきり、心地よい余韻を奏でる独自の音色をずっと守ってきた」と南條工房の7代目となる南條和哉氏は話す。

前回(第9回)はこちら

 金属の配合に南條工房の特徴があり、鈴を鳴らすとスーッと真っすぐに伸びるような音色を響かせる。一般的な鈴は佐波理より軟らかい真ちゅうで作る場合が多いため、南條工房の鈴とは音色が大きく異なるという。

 ただし国内の仏具市場は減少傾向にあるため、新しい市場開拓が求められた。LinNeシリーズは新市場開拓のために開発したものだ。仏具の鈴とは違い、もっと身近に佐波理の鈴の音色を楽しんでほしいという思いがあったという。

 例えば「LinNe Chibi(M)」は直径3センチメートル弱の小さな鈴で、組みひもが付いている。打ち鳴らすための棒はなく、ひもを軽く振るだけで音色が響く。使い方はさまざま。音色をヒーリングや癒やしとして聴くなど、香やアロマと同様に気持ちの切り替えや心を整えるために使う人が多い。懐かしい、落ち着く、すっきりする、染み込んでくるなど、人によって音色の感じ方は異なるだろうが、もっと聴きたい気持ちになりそうな点は間違いないようだ。

「LinNe Ren」は風鈴のように使える
「LinNe Ren」は風鈴のように使える
[画像のクリックで拡大表示]
ヨガのときなどにLinNeの音色を聴いて、自分の気持ちを整えるために使う例が多い
[画像のクリックで拡大表示]
ヨガのときなどにLinNeの音色を聴いて、自分の気持ちを整えるために使う例が多い
ヨガのときなどにLinNeの音色を聴いて、自分の気持ちを整えるために使う例が多い
[画像のクリックで拡大表示]

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。