
連綿と受け継がれてきた仏教の教えを、今の時代に合った形で人々に伝えるにはどうすればいいのだろうか。仏像を彫る仏師という立場から、新しいテクノロジーを積極的に取り入れて、この課題に取り組んでいるのが土御門仏所(京都市)の三浦耀山氏だ。カプセルトイとして気軽に手に入れられる仏様や、ドローンに乗って宙を飛ぶ仏像などを生み出し、人々が仏像と関わる場を広げようとしている。
木彫り仏像専門の工房、土御門仏所を運営する三浦氏は、伝統的な技法を受け継ぎ、寺にまつられるような荘厳な仏像を制作する。その一方で、3Dプリンターで出力し、カプセルトイとして気軽に手に入れられる仏様や、ドローンに乗って宙を飛ぶ仏像など時代に合わせた新しい仏像も生み出している。
カプセルトイ、いわゆる「カプセル自動販売機」で手に入る「ガチャ仏さま」は、子供のような姿のかわいらしい、手のひらサイズの仏像だ。「お地蔵様に代表されるように、仏像をかわいらしい身近なものとしてめでる文化は、江戸時代からある」と三浦氏は言う。だから三浦氏をはじめ現代の仏師の多くも、大きく威厳のある仏像から、小さく親しみやすい仏像まで幅広く制作している。
「仏像を家に飾りたいというニーズは高まっていると感じる」と三浦氏。それも、今までのように仏壇に安置するのではなく、インテリア感覚で、あるいは美術品のように飾りたい仏像好きが増えているというのだ。「しかし、小さいものとはいえ、私が木彫りで作るとそれなりの値段になってしまう。3Dプリンターを使うことで、数百円で手に入れられるようになる」(三浦氏)
三浦氏の工房では、古い仏像の修復も仕事の大きな柱だ。古い仏像をデータとして残しておけば、焼失など万が一の際のバックアップにも役立つとして、3Dスキャナーと3Dプリンターを導入した。ガチャ仏さまは浄土宗龍岸寺(京都市)との共同開発であり、ガチャガチャを使って何かしたいという龍岸寺の思惑と、3Dプリントした仏像を使って何かしたいと思っていた三浦氏の思惑が合致して誕生した。
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