
伝統工芸とサブスクリプションサービス──。一見、縁遠い2つを組み合わせて市場拡大を図ろうとしているのが、「CRAFTAL(クラフタル)」だ。2019年6月に誕生した和食器のサブスクで、飲食店と一般消費者双方にサービスを提供。「伝統工芸品は高い」というイメージを払拭し、日常使いの市場を切り開く。トヨタファイナンス(名古屋市)や日比谷花壇(東京・港)とも提携、事業を広げている。
2011年設立のCulture Generation Japan(CGJ、東京・中央)は地場産業に対する支援事業(コンサルティングやビジネスプロデュース)や、伝統工芸品の小売り/卸売りなどの事業を展開してきた。同社が19年6月に立ち上げたのが、和食器のサブスクリプションサービス「CRAFTAL(クラフタル)」だ。事業者向けと家庭向けの2種類があり、有田焼や瀬戸焼、新潟漆器や江戸硝子(ガラス)など、幅広い種類の伝統工芸品をそろえた。事業者向けは月額3万3000円(税込み、以下同)、家庭向けは月額3300円から利用できる。
スタート時はわずか1店舗しかユーザーが集まらなかったが、現在は20店に拡大し、売り上げも約6倍に増加した(19年6月と21年7月を比較)。家庭向けプランはコロナ禍の20年5月にスタートし、約2カ月で50世帯からの申し込みがあったという。現在はさらに申し込みが増え、約190世帯が契約している(21年7月時点)。
CRAFTALの特徴の一つが、サービスを利用して気に入った器があれば実際に購入できること。その場合、支払い済みの利用料が買い取り価格に充当され、通常よりも安く購入できるという。CGJの堀田卓哉代表取締役は、「レンタルのみのサービスにしたほうが利益率は高いが、伝統工芸の産業としての循環を良くするために、購入もできるようにした」と話す。実際、同サービスを利用している事業者の約5割が、気に入った器を購入した経験があるという。
【第2回】 伝統工芸の食器サブスクが人気? トヨタや日比谷花壇とも提携 ←今回はココ
サブスクを阻む3つの課題
堀田氏は、CRAFTALを思いついたきっかけをこう話す。
「CGJでは以前から地場産業に対する支援事業を行ってきたため、各地の窯元を訪れる機会が多かった。すると、工房に眠っている大量の在庫の存在に気づいた。その中には良い商品がたくさんあり、それが市場に届いていないことをもったいないと思った」
こうした在庫が市場に届いていない背景には、これまで伝統工芸品の流通を担ってきた専門の卸業者の力が弱まっていることがある。
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