福永紙工(東京都立川市)の「マグネタクト アニマル」は、磁石の力を利用した科学玩具だ。磁石と厚紙を紙に貼るだけの簡単な構造ながら、組み合わせによって様々な動きが生まれる。ヘビが口をパクパクさせたり、身をくねくねさせながら前に進んだり、ゴリラが両手で地面をたたくような「パタパタ」とした動きが軽快な音とともに生まれたりする。これまでにない新しいキネクト・トイ(動くおもちゃ)だ。

紙製のヘビを磁石シートの上で滑らせると、口がパクパクと開閉する。クリップに近づくとパクッと飲み込んでしまう
紙製のヘビを磁石シートの上で滑らせると、口がパクパクと開閉する。クリップに近づくとパクッと飲み込んでしまう

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 仕組みはこうだ。動物を動かす“地面”となる大きな磁石シート内部は、N極とS極が交互に現れるストライプ状の磁石になっている。動物側の小さな磁石シートも同じ構造になっている。これを大きな磁石シートの上で滑らせると、同じ極同士が重なったときは反発し合い、違う極同士が重なったときは引き合う。大きな磁石シートの上を滑らせることでその状態が交互に現れ、動きが生まれるというわけだ。小さい磁石シートを複数使えば、複雑な動きを生み出すこともできる。

 この技術はもともとNTTコミュニケーション科学基礎研究所の安謙太郎博士が生み出したもの。磁石シート同士を滑らせると、手にブルブルとした振動が伝わり、ストライプの幅などを変えれば違った触感になる。そのため、電気を使わず触覚に訴えるコミュニケーションやインターフェース技術として研究されてきた。この「マグネタクト」という技術を、クリエイターの石川将也氏が触覚だけでなく「動き」の領域に発展させて生まれたのが、マグネタクト アニマルだ。小さい磁石シートを直接手で動かすのではなく、小さく切った厚紙と連結したことがポイントだ。

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製品とワークショップは不可分

 おもちゃとはいえ、買ってきてすぐそのまま遊べる一般的なものとは訳が違う。製品はキットの形で販売され、購入した人は自分の手で紙を切り、磁石シートを貼るといった工作をする必要がある。こうした工作を通して磁石という身近な材料が見せる科学現象の面白さを体験し、動く仕組みを理解する教育玩具、知育玩具でもある。

 その楽しみをより多く引き出し、あるいは理解をより深めてもらうために、「マグネタクト アニマルオンラインワークショップ」という仕組みも用意した。このワークショップでは、マグネタクト アニマルのキットを郵送し、子供たちとやりとりしながら工作を進める。説明書や一方通行の配信動画では伝えきれないコミュニケーションが生まれ、オンラインであっても工作手順がよく分かり、科学現象に手で直接触れられるワークショップを実現する。

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