
「なんとなく見覚えがある」「昔使っていた」「小さい頃に食べていた」──。そんな感覚を呼び起こし、懐かしさが込み上げる「昭和レトロ」な雑貨が今、人気を集めている。令和の時代に、昭和の遺産を掘り起こして発売する各社の取り組みはどれも、高い再現性を追求。実売や話題づくりといった成果を生んでいる。
包装資材を専門に扱う老舗メーカーのシモジマが、創業100周年となる2020年12月に復刻発売したのが、自社ブランドHEIKOの小袋や紙袋に使用していた「ストップペイル」柄のアイテムだ。赤い格子の中に動物のイラストやローマ字を描いたこの模様は、名前こそ知れ渡っていないものの、見れば多くの人が懐かしいと感じる昭和レトロの代表格だ。
ストップペイル柄は、1970~80年代にかけて、主にファンシーショップや書店、文具店、洋服店の商品袋に使われた。
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きっかけは見本市の展示コーナー
商品袋の定番として人気を博したストップペイル柄ではあるが、文具店や書店の減少、模様入りではなくシンプルな包材が求められるようになったことなどで需要が減少し、2000年ごろから徐々に販売休止となっていった。こうした既製品ではなく、独自の買い物袋を用意する店舗が増えたことも要因だ。
今回の復刻のきっかけは、19年秋に出展した見本市。ブースの一角に、自社の歴史を振り返る展示コーナーを設けたところ、ストップペイルに注目が集まり、「懐かしい」「復刻してもらいたい」との声が多く集まった。その声を受けて、同社ではほとんど前例がなかった復刻、再販売に踏み切った。
20年夏、ストップペイル柄の小袋や紙袋などを発売したところ、メディアに取り上げられ、多くの反響が寄せられた。復刻に当たり、黒い輪郭線から赤い塗りがはみ出した版ずれの再現や、色使いを当時の朱色に近づけるなどの工夫で、懐かしい雰囲気づくりを追求した。
現在、ストップペイル柄の人気の高まりは、ライセンス商品の相次ぐリリースとなって表れている。21年9月には、ステーショナリーなどを企画・製造・販売するフロンティア(大阪市)から、貼り箱やノートなどが発売。今後も、他社へのライセンス提供によって、商品ラインアップを広げていく予定だ。すでに5社ほどで商品化が進行しているという。
「来年に向けて、洋服、雑貨、文具が一気に出る予定だ」(シモジマのマーケティング本部 特販営業部部長の佐藤元一氏)
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