
大栗紙工(大阪市)が開発・製造した「mahora(まほら)」シリーズは、発達障害がある人の声を基に企画し、紙の色やケイ線を工夫したノートだ。「目に優しい」「集中しやすい」「書きやすい」といった、本来は発達障害がある人に向けた特徴を、開発途中から文具店や卸などが評価。「年配の人や子供など誰にでも使いやすいノートとしてアピールできるのでは」と注目された。
「まほら」が完成すると、大栗紙工は自社でECサイトを立ち上げて2020年2月に2品目からテスト販売を開始。同年8月には卸の取り扱いもスタートし、21年2月までの1年間で約1万7000冊を販売した。さらにユーザーの意見から21年2月には商品の色や大きさなどラインアップを強化。同年7月までに累計で約5万冊を売り上げるヒット商品となった。発達障害がある人だけでなく、誰が使っても目に優しいノートとして人気を博した。
大栗紙工のECサイトではA6判の商品の価格は330円(税込み)。売上高が数億円規模の同社にとって、約5万冊の販売は小さくないビジネスといえるだろう。「第30回日本文具大賞2021」(主催はRX Japan)のデザイン部門における優秀賞も獲得。いわゆるインクルーシブデザインの商品として注目される。

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商品化のきっかけは、発達障害がある人を支援する一般社団法人UnBalance(大阪市)の担当者から、「通常のノートに対して不便を感じている」と聞いたことだった。「ケイ線以外の情報が気になって集中できない」「紙からの反射がまぶしくて書きにくい」「いつの間にか書いている行が変わってしまう」などの声があったという。大栗紙工は50年以上もノートの製造をOEM(相手先ブランドによる生産)で手がけてきたが、以前から自社ブランドを持ちたいという意向もあって今回、開発に臨んだ。
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