
焼き物と文具、一見かけ離れて見えるが、どちらも机やテーブルの上で使うもの。ならば実用とインテリアを兼ねる文具を焼き物で作ったらどうか?そんな独自の視点で文具を開発し、展開している焼き物のブランドがある。唐津、伊万里、武雄、嬉野、有田の5市町と佐賀県によるブランド「HIZEN5(ヒゼンファイブ)」だ。
HIZEN5は、2017年にスタート。アクセサリーなどから手掛け始め、19年11月に焼き物文具を発売した。焼き物産地として400年の歴史を持つ「肥前国」と呼ばれた一帯にちなんで名付けた。
県や佐賀財務事務所が調べたデータによると、伊万里・有田焼の主要な企業の売り上げは1991年に249億円に達したが、2019年には33億円まで落ち込んだ。5市町の他の産地でも顧客の高齢化が進み、売り上げは落ち込んでいるという。佐賀県文化・スポーツ交流局文化課課長の水町智子氏は、「若い方、特に女性に手に取ってほしい」と語る。
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HIZEN5で開発したのは、陶磁器を素材とするペンやペンスタンド、釉薬(ゆうやく)の色みを表現したインクなどの嗜好性の高い文具雑貨だ。ブランドが主にターゲットとするのは、「20代~40代の女性で、少し高価なものでも価値を感じれば購入する人」。文具好きの女性は、ブランドが求める人物像と一致した。
産地が一緒に活動できる
HIZEN5の商品は九州を中心としたショップやECサイトで販売しながら、大都市圏でも積極的なプロモーションを打っている。定期的に出展を続ける「東京インターナショナル・ギフト・ショー」に加え、焼き物文具では、福岡市内で人気の「六本松 蔦屋書店」でのポップアップストアや19年の「文具女子博」の出店でも認知度を上げた。
「文具女子博」の出店時には、「これがやきものなの!?」と驚く声が多く、東京では有田焼・伊万里焼の知名度が高いが、文具女子博を通じて唐津焼、武雄焼、肥前吉田焼などを知ったという人もいた。万年筆のインクを愛好する「インク沼」の広がりを見て唐津焼の産地が釉薬(ゆうやく)のようなインク「カラツイロ」を開発すると、狙い通り人気を博して一時的に品切れとなる事態も発生した。一般の顧客が手にとって購入するだけでなく、流通企業からも取り扱いたいと連絡が来た。
20年8月には焼き物文具などをセットにした限定20セットのレターセットを発売。即、完売した。20年12月から、大阪・枚方や東京・代官山の蔦屋書店でも順次ポップアップショップを開設。本格的に販路開拓に乗り出したところ、取扱店舗も増えてきた。ハンドメード品の通販サイト「minne(ミンネ)」のほか、フィンランドのテキスタイルメーカー「フィンレイソン」、BEAMS(東京・渋谷)が展開する「BEAMS Planets(ビームスプラネッツ)」ともアクセサリーなどの商品開発でコラボレーションしている。
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