
文具メーカーのヤマト(東京・中央)が開発・販売する布製の粘着テープ「OUTDOOR TAPE(アウトドアテープ)」は、生産中止になった商品をリブランディングしてよみがえらせた商品だ。アウトドアブームに乗り、デザインやパッケージを大幅に見直して2020年7月に発売すると予想以上の売れ行き。通常は早くても半年から1年後のところ、今回は約3カ月後に早くも追加生産をかけた。当初は一部で納品待ちだったという。
同じ機能を備えた商品でも、タイミングをうまく捉えて市場を再定義し、デザインやパッケージなどを変えることで開拓の余地はまだまだ出てくる。アウトドアテープのケースは、そうしたリブランディングの好例だろう。
段ボール箱の梱包といった用途に加え、重視したのが商品名にも象徴されるアウトドアの需要だ。粘着テープを巻く芯の部分をなくし、平たい形状にすることで携帯しやすくした。薄くて軽いといった特徴を訴求し、登山・キャンプや旅行、防災備品といった幅広いニーズに応えようとした。
例えばキャンプのときは、破けたテントやウエアの補修など、すぐに手でちぎって使える。添え木の固定など、けがをした場合も応急処置にも役立ちそう。防災備品では窓ガラスや屋根などの簡単な補修のほか、油性ペンなどで文字を書けるため、避難時の伝言メモ代わりにもなる。
「第30回日本文具大賞2021」(主催はRX Japan、東京・新宿)の機能部門の優秀賞を獲得。ポップでカラフルな8色を用意し、地味なイメージのある粘着テープの市場を華やかにした、と同賞の審査員は評価した。購入者は女性が多く、複数の色を購入する例もあるという。アウトドアに強い機能面だけでなく、色やデザインといった“かわいらしさ”も重視されているようだ。幅は50ミリメートルで長さは3メートル。価格は各649円(税込み)。
【第2回】 SDGs文具が50万本売れた 海洋ごみ製ボールペンが法人需要で人気
【第3回】 削りかすが花びらになる「花色鉛筆」 デザインと環境配慮を両立
【第4回】 これぞリブランディングの理想型 10年前の廃盤テープが大復活 ←今回はココ
【第5回】 コクヨがコロナ禍で出した答えは「仕事空間ごと持ち運ぶ」
過去の教訓を生かしリブランディング
実はヤマトにとって、平たい形状にした粘着テープの開発は今回が初めてではなかった。平らな巻き芯を使い、約10年前まで「エプコテープ」の名称で販売。アウトドアを意識した商品ではなかったが、今回と同様に携帯性をアピールしていた。根強いユーザーもいたが人気は続かず、生産中止となった。それでも苦心して開発したエプコテープに対するヤマトの思い入れは残り、生産中止後でも根強いユーザーからは毎年のように、再販売の問い合わせが来ていたという。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー