モビリティ産業の大変革をグローバルな視点でリポートする「シリコンバレーD-Lab」プロジェクトメンバーによる寄稿第2弾。今回は、米テスラのビジネスモデルを“丸裸”にする。単なる高級電気自動車(EV)メーカーではない、その本質を探る。
脱炭素の波が来ると、米テスラのビジネスモデルが究極の姿なのでは?
そんな考えが我々シリコンバレーD-Labメンバーの頭をよぎったのは、2019年に発表した前回のシリコンバレーD-Lab第3弾リポートで取り上げた、各社のMaaS(Mobility as a Service)ビジネスについてアップデートを行っていたときだった。
2019年4月、突然テスラCEOのイーロン・マスク氏が、Twitterでライドシェアへの参入を表明した。同じ頃、シリコンバレーで米Uberのライドシェアを利用したところ、なんとテスラの電気自動車(EV)が配車されたことがあった。思わず運転手に「お金持ちだね」と話しかけると、運転手は「一定の距離以上乗るとテスラのほうが運用コストは安くなるんだよ」と笑いながら答えたのを覚えている。
その根拠は分からなかったが、自動車のCO2排出規制が強化されているカリフォルニア州では、明らかにテスラを目にすることが多くなっていた。直近でカリフォルニア州は、21年5月にライドシェアサービスの走行距離の90%をEVまたはFCV(水素自動車)にしなければならないという規制を発表している。
テスラは、モビリティ事業に加えて、太陽光発電、蓄電、電力需給調整システムも手掛ける。本連載第1回ではエネルギー産業がモビリティ産業に染み出してきている状況を説明したが、テスラのアプローチはその逆だ。テスラが名称を以前のTesla MotorsからTeslaに変え、蓄電ビジネスに相当程度重心を置いたことからも、すでに単なるモビリティ企業ではないことが想像できる。
テスラのロボタクシー普及シナリオとは?
テスラはロボタクシー(自動運転×ライドシェア)の領域を虎視眈々(たんたん)と狙っている。19年、テスラは街中のテスラ車が駐車している時間を使って、ロボタクシーとして勝手に“出稼ぎ”にいくというプランを発表した。EV×自動運転×ライドシェアの構想である。
正直まだ先の話ではあるものの、もしこのサービスが仮に将来現実のものとなれば、一気に100万台の規模での自動運転ライドシェアが提供されることになる。これが未来の効率的なモビリティの“本命”ではないか、ともいわれている。
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