「100年に一度」といわれるモビリティ産業の大変革をいち早く捉え、発信してきた有志組織「シリコンバレーD-Lab」プロジェクト。欧米発の「脱炭素化」のトレンドが今後、モビリティ産業にどのような「破壊と創造」をもたらすのか。全3回にわたってシリコンバレーD-Labメンバーがリポートする。

欧米の石油メジャーや電力会社がモビリティ分野への攻勢を強めている(写真/Shutterstock)
欧米の石油メジャーや電力会社がモビリティ分野への攻勢を強めている(写真/Shutterstock)

 ちょうど1年前、モビリティ業界にエネルギー業界のプレーヤーが次々と参入してきていることにふと気づいた。今思えば、もっと早く気付くべきだった。

 この数年、モビリティ業界ではCASE (Connected、Autonomous、Sharing、Electricの頭文字を取った造語)や、MaaS(Mobility as a Service)の一大潮流が注目されてきた。これにより、自動車関連のビジネスが従来の自動車業界だけのものではなくなってきたことは認識していた。しかし、昨今のエネルギー業界のアプローチの力強さは、テック業界のそれとは異質なものを感じる。

 一体どう違うのか。その答えは「強烈な危機感」だ。脱炭素化の盛り上がりを考えれば自然な流れだが、この重要な胎動の本質を見誤ってはいけない。

 脱炭素問題について、日本ではこの半年余りで急激に取り沙汰されるようになった。しかし、パリ協定が採択され、CO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの目標が掲げられたのは6年も前のことである。

 すでに欧米では、地球温暖化対策へ積極的に取り組んでいない企業が市場から淘汰され始めている。サプライヤーとの取引でもカーボンニュートラルが求められるなど直接的な影響が出始め、グローバルに活動している日本企業は、この潮流にいや応なく巻き込まれている。

 国内ではまだ様子見の企業も多いが、欧州の環境意識などは我々の想像をはるかに超える。政治的なゲームの一部でもあったことは否定しないが、ここまで地球規模で走り出した脱炭素社会の実現への取り組みは、もはや一時的なブームでは終わらない。覚悟を決めて早めにかじ取りをしないと、グローバルなビジネス環境においては根本からひっくり返される可能性のある問題だ。

脱炭素視点で「未来のエコシステム」づくりが始まっている(出典/シリコンバレーD-Lab第4弾リポート)
脱炭素視点で「未来のエコシステム」づくりが始まっている(出典/シリコンバレーD-Lab第4弾リポート)

 そこで、19年に発表した「シリコンバレーから見えてきたMaaSの世界」に続く第4弾となる、今回のシリコンバレーD-Lab最新リポートでは、脱炭素を契機としたビジネスの変革をモビリティ業界とエネルギー業界の双方の視点で分析している。日本のエネルギー業界の変革全体についてはすでに様々な観点で分析されているので、ここでは特にデジタル化に着目した。これまで分析してきたモビリティ業界の変革と、今般のエネルギー業界のデジタル変革が不可分の関係になっているのではないかとの仮説の下で分析を行った。

 決して国内の再生可能エネルギー含むエネルギー構成や、ガソリン車のあり方などについて意見を呈するものではない。詳細資料は以下の経済産業省のサイトから無料でダウンロード可能だ。世界を巻き込む脱炭素の潮流への中で、今後の日本企業のアクションのきっかけとなれば幸いである。

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化石燃料は「悪役」、加速する世界のグリーン電力化

 世界的な脱炭素シフトによって、欧米では石炭、石油、天然ガスといった化石燃料はすっかり悪役となってしまった。日本ではほとんど報道されていないが、2年前、欧州石油メジャーのTOTALが2024パリオリンピックのスポンサーにふさわしくないと言われ、断念したほどである。

 自動車をはじめとする化石燃料ビジネスでは、軒並み「電化=クリーン」というイメージを植え付けられ、その電力は再生可能エネルギー由来のグリーン電力が求められるようになった。再生可能エネルギーは電力供給が安定しないため、電池の利用も加速する。燃焼してもCO2を排出しない水素が次世代の電力源として主役の一つに躍り出て、社会実装への投資が一気に進んだ。

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