菅政権が「こども庁」の設立に向けて検討を開始し、「少子化対策」が有力な相場テーマとなった。株のプロが狙い目に挙げるのは、成長が見込まれる学童保育分野に手を広げる学研ホールディングスや、婚活支援サービスのIBJなど。少子化対策を追い風に、業績拡大・株価上昇が期待される6銘柄を取り上げる。

※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成

前回(第1回)はこちら

 「政策に売りなし」。国策に関係がある企業の業績が向上し、株価も上昇しやすいことを指す相場格言だ。現在は、菅政権が「こども庁」の設立に言及し、一歩踏み込んだ取り組みに着手した「少子化対策」が有力なテーマとして浮上する。

■出生率は右下がりが続く
■出生率は右下がりが続く
2020年に生まれた子どもの数(出生数)は、前年から2.8%減って84万832人だった。これは1899年の統計開始以来、過去最少。合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)は1.34で、前年から0.02ポイント下がり、5年連続で低下した。少子化対策は急務となっている
株のプロ3人が注目銘柄をピックアップ!
  今後の相場の盛り上げ役と期待されるテーマとして、「脱炭素化」「新・少子化対策」「半導体部品・材料」「アフターコロナ」「巣ごもりエンタメ」「ブロックチェーン技術」の6つを編集部が設定。個別株に詳しいプロ3人に各テーマの注目銘柄を聞いた。
こころトレード研究所所長
坂本慎太郎氏

証券会社で株式と先物の売買を担当。かんぽ生命保険を経て、個人投資家育成のため、こころトレード研究所を設立する。ラジオNIKKEIの投資番組でも人気
株式アナリスト
鈴木一之氏

大和証券で株式の売買・分析に従事する。その後、インフォストックスドットコムで日本株チーフアナリストを務める。07年に独立
エフピーアイ代表
藤ノ井俊樹氏

投資歴約50年。本来あるべき株価と実際の株価とのギャップを利用した「ミスプライス投資」を通じて、個人投資家に情報提供を行う

 期待の関連銘柄としては、まず、教育関連の出版大手として知られる学研ホールディングス(東1・9470)が候補。近年は、「成長が見込まれる学童保育や介護など、従来とは違う領域にも手を広げている」(鈴木一之氏)からだ。

 例えば、グループ会社の学研エデュケーショナル(東京・品川)は21年7月、ショッピングセンターなどに展開する幼児教室「知能教育 めばえ教室」を買収。教育事業として顧客獲得の入り口となる幼児会員を拡大させる。2020年9月期は売上高1435億円、営業利益50億円。これを23年9月期にそれぞれ1650億円、75億円に押し上げると、中期経営計画で掲げている。

※以下の銘柄ボックスの情報は21年6月18日時点。PER・配当利回りは日経予想、PBRは実績ベース

 少子化対策の一丁目一番地ともいえる結婚関連の銘柄では、婚活支援サービスを主力事業に据えるIBJ(東1・6071)を狙う手もある。06年に設立された同社は、「婚活サイト運営の老舗的な存在。地方との連携も深めている」と鈴木氏は話す。地方会員の成婚を増やすため、日本各地の地方銀行と提携し、今後もその関係をさらに強化する考えだ。

IBJは、自社が運営する婚活パーティーサービスのオンラインパーティーに、初めて利用する人が無料で参加できるサービスを21年5月から始めた
IBJは、自社が運営する婚活パーティーサービスのオンラインパーティーに、初めて利用する人が無料で参加できるサービスを21年5月から始めた

 20年には大手結婚相談所のZWEI(ツヴァイ、東京・中央)をグループ会社化したことで、会員基盤を拡大させるとともに、これまで直営店が無かった地域にも拠点を広げた。その結果、お見合い成立件数が大幅に増加している。

 出産した後も、夫婦がそれまでと変わらずに働く条件として必要な保育園はどうか。保育園運営には補助金ビジネスという一面がある。「運営助成金や内装費・備品、保育士などの各種補助金があり、入園料などの営業収入の他に営業外収入を見込めるのが特徴」(藤ノ井俊樹氏)。「施設の数を増やした会社は、業績を伸ばしやすい傾向にある」(坂本慎太郎氏)。専門家たちはこう分析する。

 そうした中での狙い目銘柄の1つが、さくらさくプラス(マザ・7097)。保育ニーズが高い東京に焦点を当てて事業を展開中だ。20年10月上場と若い会社だが、設立初年度の18年7月期以降、収益を着実に伸ばし、21年7月期は売上高が前期比26%増、営業利益は同92%増を見込む。

 ライク(東1・2462)は、病院や企業が設置する事業所内保育施設・認可保育園などを運営。今後も事業者への設置提案に注力していくことを21年1月に策定した中期経営計画で明らかにしており、業績拡大に期待が持てる。

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