市場の成長期待が大きい相場テーマから、狙い目の日本株を発掘する特集の1回目。最初のテーマは「脱炭素化」だ。洋上風力発電に強みを持つ五洋建設、開発に成功したバイオジェット燃料の将来性を見込むユーグレナなど、株のプロ3人が様々な角度から選んだ注目の6銘柄を取り上げる。
※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成
最近、注目度が急上昇している相場テーマの一つが「脱炭素化」だ。2015年のパリ協定合意以降、世界各国が脱炭素化に向けてかじを切っている。日本では、20年10月に菅義偉首相が「50年までに脱炭素社会の実現を目指す」と所信表明演説で宣言。その取り組みが、企業間で加速している。
こうした動きに乗る脱炭素化関連銘柄は、再生可能エネルギー、EV(電気自動車)、洋上風力発電、アンモニアなどと多岐にわたる。中でも注目は洋上風力発電だ。これからの約10年で規模が100倍以上になり、30年度に9000億円規模の市場に育つとする向きもある期待の分野だ。

坂本慎太郎氏
証券会社で株式と先物の売買を担当。かんぽ生命保険を経て、個人投資家育成のため、こころトレード研究所を設立する。ラジオNIKKEIの投資番組でも人気

鈴木一之氏
大和証券で株式の売買・分析に従事する。その後、インフォストックスドットコムで日本株チーフアナリストを務める。07年に独立

藤ノ井俊樹氏
投資歴約50年。本来あるべき株価と実際の株価とのギャップを利用した「ミスプライス投資」を通じて、個人投資家への情報提供を行う
脱炭素化関連でまず押さえておきたいのが、五洋建設(東1・1893)とコスモエネルギーホールディングス(東1・5021)。五洋建設は海洋土木の最大手で、洋上風力発電に強みを持つ。21年4月に、有数の実績と技術ノウハウを有するDEME Offshore(ベルギー)と、合弁会社設立に合意(五洋建設の出資比率は51%)。今後の事業拡大を見込んでいる。21年3月期は減収減益に終わったものの、売上高4700億円に対して受注残が8200億円も残っていて、当面は安定した収益確保が期待できる。
コスモエネルギーは石油元売りだが、この業界は現在、総合エネルギー企業への転換を加速させようとしている。同社の場合、風力発電の収益化に力を入れ、洋上風力発電では日本各地でプロジェクトを計画中だ。
レノバ(東1・9519)も洋上風力発電に取り組むが、同社は違った理由でも有力な検討候補になる。「米テスラと同じように化ける可能性を秘めている」。そう期待するのは、株式アナリストの鈴木一之氏だ。
EVの分野で好業績ぶりが伝えられるテスラだが、最大の要因は温暖化ガス排出枠(クレジット)の外販だ。鈴木氏は「多い時で売上高の7割を占めた」と指摘する。
レノバに話を戻すと、同社は21年3月期の売上高が200億円規模の太陽光発電大手。「全産業が『30年度の温暖化ガスを13年度比46%減にする』という目標達成に動いているが、現実は厳しい。目標未達分はレノバのような発電事業者からクレジットを購入することになるだろう。当面は排出権取引が活発で、同社が受ける恩恵は大きそう」(鈴木氏)
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