共に100年以上の歴史がある早稲田大学と慶応義塾大学。この20年間で目立ったのが、両大学が強みを生かすべく設置した新学部の影響力だ。新たな分野の学問が学べるだけではなく、大学全体に変化をもたらす存在となっている。

※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成

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 学部の新設や再編について、特に動きが激しかったのが早稲田大学だ。2003年にはスポーツ科学部、そして人間科学部の通信教育課程を設置し、翌04年には国際教養学部を設置。さらに07年には文学部、理工学部の再編も行った。中でも、大学全体に影響を与えたのが国際教養学部の新設だ。

早稲田大学の学部新設・再編の変遷
2003年
●スポーツ科学部設置 ●人間科学部通信教育課程設置
2004年
●国際教養学部設置 ●政治経済学部国際政治経済学科設置
2007年
●第一文学部、第二文学部を文化構想学部、文学部に再編
●理工学部を基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部に再編

 国際教養学部は、文理を問わず、リベラルアーツ教育を英語で受けられる場。生命・環境・物質・情報科学といった理系の科目群から哲学・思想・歴史といった文系の科目群まで、7分野にわたる学問を学べる。今でこそ、多くの私立大学に国際系の学部があるが、当時はこのような学びができるのは国際基督教大学や立命館アジア太平洋大学など、ごく少数しか無かった。

 もともと英語ができる学生しか入れないようにも思えるが、国際教養学部の池島大策学部長は「決して帰国子女のための学部ではない」と強調する。レベル分けをしたうえで英語の基礎学力を身に付ける講座や、1クラス4人程度に限定し、英語での会話力を付ける講座も用意するなど、国内の高校出身者にも配慮している。

 国際教養学部の成功により、そのノウハウは徐々に他学部にも波及するようになった。まず、10年から政治経済学部と理工系3学部で、英語による授業で学位を取得できる「英語学位プログラム」が導入され、11年には社会科学部、17年には文化構想学部が続いた。現在は早稲田の全13学部のうち7学部で、全課程で英語による授業を受けられるコースがある。英語学位プログラムには海外からの留学生も多く集まるため、国際教養学部以外でもグローバルな環境で学べるようになった。

早稲田大学 国際教養学部

早稲田キャンパス11号館。主に商学部、国際教養学部の拠点となっている
早稲田キャンパス11号館。主に商学部、国際教養学部の拠点となっている
【ココが予想外!】英語による授業が他学部にも 大学全体がグローバル環境に
研究、実習も英語で実施される。10年に英語学位プログラムが導入された際は9月入学のみだったが、18年から4月入学も可能になった
研究、実習も英語で実施される。10年に英語学位プログラムが導入された際は9月入学のみだったが、18年から4月入学も可能になった
理工学術院での「国際コース」(英語学位プログラム)の様子。日本にいながら、外国人学生と一緒に少人数教育を受けられる
理工学術院での「国際コース」(英語学位プログラム)の様子。日本にいながら、外国人学生と一緒に少人数教育を受けられる

 国際教養学部のもう一つの大きな特徴が、日本語を母語とする学生は1年間の海外留学が必須であること。留学するとなると、多額の費用がかかるうえ、日本で在籍する大学での単位取得が滞り、卒業が遅れるといったイメージがある。しかし、早稲田の国際教養学部の場合、基本的に留学先大学の学費は早稲田に支払う学費で相殺され、渡航費や留学先での生活費などだけを負担すればよい。

 留学先で取得した単位も、早稲田の卒業単位に換算でき、4年間で大学を卒業できる。しかも、留学先は800以上の選択肢がある。「コロナ禍で、この1年間の留学は卒業要件から外したが、状況が戻ればまた復活させる」(池島氏)という。

 国際教養学部の新設後、他学部の学生も留学するハードルが大幅に下がった。早稲田大学が協定を締結している留学プログラムは早稲田の全学生が参加でき、その海外協定校の数は中長期のものだけで何と400を超える(国際教養学部の学生しか参加できない協定は含まない)。

 国際教養学部生の留学と同じく、留学先の学費免除や単位認定の制度があり、日本学生支援機構の調査によれば、コロナ禍前の19年度に、日本人学生の海外派遣数は早稲田が2914人で国内大学のトップに立った。

【ココが予想外!】留学しやすい環境を整え、学生の海外派遣数が日本一に
早稲田で学ぶ留学生を増やすと同時に、留学先の学費免除や単位の認定制度など、早稲田から留学しやすい制度を大学全体に整備。学生の海外派遣数も日本一になった
早稲田で学ぶ留学生を増やすと同時に、留学先の学費免除や単位の認定制度など、早稲田から留学しやすい制度を大学全体に整備。学生の海外派遣数も日本一になった
■日本人学生の海外派遣数
■日本人学生の海外派遣数
注)日本学生支援機構の19年度日本人学生留学状況調査結果より編集部で作成。コロナ禍前の結果だが、参考として掲載。海外派遣数は大学が把握している数

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