早稲田大学「大隈塾」と慶応義塾大学「すずかんゼミ」。講義やゼミの枠にとどまらず、“私塾”的精神で活動の場を広げる、注目のリーダーシップ教育の現場を訪れた。その絶大な人気の鍵の一つに、学生による自主運営の仕組みがある。

※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成

前回(第13回)はこちら

世代を超えて社会貢献のコミュニティーを形成

【早稲田】大隈塾(講義:たくましい知性を鍛える)
●設立/2002年 ●学生数/70人(コロナ感染対策のため減員中)

 早稲田大学の一授業ながら、活動を通じ、大学の枠や世代を超えた独自のコミュニティーを築く“私塾”的集団がある。通称「大隈塾」と呼ばれるこの講座、主にリーダーシップをテーマに著名人を講演に招いて知見を深めつつ、学生に社会貢献活動を実践させるのが狙いだ。

 2021年のゲスト講師は、元早大ラグビー部監督の中竹竜二氏や書道家の武田双雲氏ら、リーダーシップを多様な角度から考える人選となっている。「中竹竜二さんを講師に選んだのは、自ら先頭で引っ張っていくより、どうすれば周りが輝くのかを考えていたリーダーだったから。カリスマ的リーダーシップ以外の選択肢もあることを学ぶことができた」(運営代表の政治経済学部2年・梨本真帆さん)。講義の後には、意見の共有やディスカッションを行うのが通例だ。

ゲストスピーカーを迎えた講義の様子。現在は教室とZoom上とのハイブリッドで授業を行っている
ゲストスピーカーを迎えた講義の様子。現在は教室とZoom上とのハイブリッドで授業を行っている

 大隈塾は02年、当時の奥島孝康総長と早大OBのジャーナリスト、田原総一朗氏が社会のリーダー育成を目的に立ち上げた。当初は政財界から大物ゲストを迎え「学生に毎週、シャワーのように彼らの成功談・失敗談を浴びせかけるリーダーシップ講座として構想された」(授業担当の村田信之氏)が、学生のニーズに沿って17年に運営体制を大きく見直した。

 新体制の最大の特徴は、運営のほぼすべてを学生が担うこと。4人の幹部学生と、それを実務面で支えるスタッフを中心に、学生たちの声を取り入れながら、履修希望の学生の選抜や講師の選定、授業設計を行う。定員に対し約3倍の応募が殺到する人気講座だ。

 「運営担当の学生は、参加学生にどういう学びを提供したいか、世間では今どのようなワークショップがトレンドなのか、様々な調査を行い、それをいかに大隈塾流の授業として形にできるかを考えます」(梨本さん)

 大隈塾ではとりわけ、講義での学びを実践に移すことを重要視している。学生は様々なユニットを不定期に組んで、社会貢献活動などのプロジェクトを立ち上げて実践する。これまでのプロジェクトは、都会と地方との教育格差を埋めることを目的に、各地の高校で「出張大隈塾」を開催した「U-18」、早慶の学生が共同で被災地支援を行う「東日本きずなプロジェクト」、第一フロンティア生命保険と組んだ、新たな生命保険商品のシミュレーションなど多岐にわたる。

プロジェクト参加学生によるミーティングの様子。21年の春学期は、計15のプロジェクトが進行中
プロジェクト参加学生によるミーティングの様子。21年の春学期は、計15のプロジェクトが進行中
養豚を通じ、食の問題や家畜の人道的扱い(アニマルウェルフェア)などを考えるプロジェクトを代々にわたり実施
養豚を通じ、食の問題や家畜の人道的扱い(アニマルウェルフェア)などを考えるプロジェクトを代々にわたり実施

 国際教養学部2年の大串夏鈴さんは、「私の学年は入学してからずっとオンライン授業だったので、受け身の講義が続いて物足りなさを抱えていた。学生主体の大隈塾で、自発的に動く充足感を初めて得られた」と語った。

 卒業後も大隈塾のプロジェクトを継続しているOB・OGも多い。今後は、20年近くにわたる活動で、縦横に拡大したコミュニティーを維持・再構築するための運営基盤も整えていく計画だという。

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