慶応義塾大学から医療系やIT系の有力スタートアップが次々と登場し、資金調達を拡大している。禁煙アプリが注目されるキュア・アップ、タンパク質繊維を開発するスパイバー、産直EC「食べチョク」がコロナ禍で伸びるビビッドガーデンなど、さらなる飛躍が期待されている。
※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成
慶応義塾大学発のスタートアップを語るうえで欠かせないのが、医療系の躍進だ。中でも、画期的なチャレンジとして注目されているのが、医学部卒の佐竹晃太氏と鈴木晋氏が2014年に創業したキュア・アップ(CureApp)。生活習慣の改善を図るデジタル療法に活用する「治療用アプリ」の開発が主な事業だ。
14年の薬事法改正によって、単体のソフトウエアが医療機器として認められたことが躍進の契機となり、17年に慶応イノベーション・イニシアティブ(以下、KII)から出資を受けた。
治療用アプリは、患者が次に通院するまでの間に「治療経過」「体調」などをアプリ上で記録して、治療ガイダンス(アドバイスなど)を受ける仕組みだ。患者を24時間・365日にわたってフォローすることで、症状改善に向けた生活習慣の行動変容を促す。
20年12月には、治験、薬事承認、保険適用を経て、ニコチン依存症に対する日本初の治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ」を上市。他にも医療向けアプリとして高血圧、アルコール依存症用なども開発中で、さらなる事業拡大が期待される。
【累計調達額/64億円】キュア・アップ「治療用アプリ」
大学が一丸となって研究を後押ししている分野もある。01年に創立された慶応の先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は、バイオテクノロジー分野で最先端の研究が行われており、数多くのスタートアップを輩出している。
代表格のスパイバーが手掛ける構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」は、石油原料に依存せず海中で生分解されるなどサステナブルなバイオ素材として、世界的にも注目度が高い。アミノ酸の組み合わせを変えることで、様々な物性を繊維に付加できるのも特徴。スパイバーの技術を使った約15万円のアウターが即完売するなど、アパレル業界の常識を変える革命児として期待されている。
【累計調達額/非公開】スパイバー「タンパク質繊維」
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