大学発スタートアップの動きが加速する中、早稲田大学からも、様々な起業促進策によってIT系を中心にスタートアップが増えつつある。コンテンツを映し出すスマートミラーを開発するミラーフィット、食用コオロギの供給インフラを構築するエコロギーなど、早大発の注目ベンチャーを取り上げる。
※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成
テクノロジーを生かした、気鋭のスタートアップがミラーフィットだ。早稲田大学大学院経営管理研究科の卒業生3人が中心となって創業し、鏡とディスプレー機能を一体化させたスマートミラーを使った、オンラインフィットネス事業を展開する。
このミラーフィットは、2017年から始まった、国と大学が共同して起業家教育の様々な取り組みを行う文部科学省次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)から生まれた。同事業で早稲田が提供するプログラム「2018年度Business Communication workshop」(オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールにて開催)にも参加。そして、20年にウエルインベストメントが運営する早大専用ファンドからの出資を受けた。
同社のミラーデバイスは、専用アプリと接続することで、筋トレやヨガといった様々なフィットネスコンテンツを映し出す。入会金3万3000円(税込み、以下同)に加えて、ミラーデバイス本体費用の16万4780円(本体一括購入プランの場合)とサービス利用料の月額6578円がかかりやや高額だが、高所得層を中心に需要が見込めるという。
代表の黄皓氏は、「オンラインフィットネスはコロナ禍の外出自粛による健康課題解決にもなり、注目度が日増しに上がっている。将来はトレーニングだけではなく、ヘルスケア、美容やコスメ、ファッションなど、ライフスタイル全般をサポートする機能を追加する予定だ」と狙いを語る。
【累計調達額/1.6億円】ミラーフィット「スマートミラー」
早稲田大学商学部が実施している寄付講座「起業家養成講座Ⅰ・Ⅱ」やビジネスプランコンテストから、起業につながるケースも増えてきた。代表格は、食用・水産養殖飼料用コオロギの大量生産を仕掛けるエコロギーだ。
カンボジアでコオロギ農家の人たちと共に、食料生産ネットワークを築くというビジネスモデルが画期的。将来的に起こる可能性がある世界的な食料危機で、代替タンパク質を安定的に供給することを目的とし、そのインフラの構築を目指す。グローバルな需要が期待できるため注目度が高く、15年にビジネスプランコンテストで最優秀賞を獲得した。
「商学部生だった代表の葦苅晟矢氏は、コオロギの大量生産技術の研究のため、大学院進学時に先進理工学研究科に“理転”した。アイデアにテクノロジーを融合させる大学ならではのキャリアパスを活用したロールモデルだ」(早稲田大学商学学術院の井上達彦教授)
【累計調達額/非公開】エコロギー「コオロギ・インフラ」
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