大学において教育と並んで重要な「研究」について、早慶の実力はどれほどのレベルなのか。約2960誌の学術誌を発行する学術情報サービス企業のエルゼビアと共同で、早慶が強い学問分野を探った。医学・生物学系では慶応の、理学・工学系では早稲田の研究力が高く、論文引用数で東大を上回る分野も多い。

※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成

前回(第7回)はこちら

 早稲田大学も慶応義塾大学も理系の学部、大学院、研究所があり、研究者も数多くいる。では、その研究力は東京大学(東大)などの国立大学と比べてどうなのだろうか。よく語られる科学研究費(科研費)の配分額では東大が早慶の6倍以上あり、全く及ばないイメージがあるが、本当にそうか。そこで今回は、研究の「質」を評価するもう一つの手段として、各大学・大学院から発表された論文に着目する。

 一般的に、優れた論文ほど他の論文からよく引用される。その大学から発表された論文の被引用回数を調べて、全世界平均が「1.0」になるように調整した指標が「FWCI」(相対被引用度)だ。今回はエルゼビア・ジャパン(学術情報サービス企業・エルゼビアの日本法人)と共同で、早慶のFWCIを東大や全国立大学(計86大学)などと比較した。エルゼビアのデータベースに登録されているのは、主に海外論文誌(約2万6000誌)なので、国際的に通用する研究をしているかの目安にもなる。

■引用数で質を測れる「FWCI」に注目
■引用数で質を測れる「FWCI」に注目
優れた論文であれば多くの研究者に引用される。FWCI(相対被引用度)は、その大学から発表された論文のインパクトを表す指標。研究の種類によって平均的な被引用回数が異なるので、それを世界平均が「1.0」になるように補正したのがFWCIだ。数値が大きいほど、大学の研究の質が高いと言える

 まず言えるのは、20年前と比べると両大学の研究の質は確実に向上していることだ。20年前(1996~2000年)はFWCIが1前後で、国立大学平均と同レベルだったが、現在(16~20年)は慶応が1.13、早稲田が1.07と、国立大学平均(0.97)を上回る。また、論文数自体も2倍以上に増えている。特に、医学部を擁する慶応の「医学」と、理工学部を3つに再編して力を入れる早稲田の「工学」と「自然科学」は国立大学との差を広げている。

●医学系に強い慶応と工学系に強い早稲田
■20年前(1996~2000年)の早慶と国立大学のFWCI
■20年前(1996~2000年)の早慶と国立大学のFWCI
慶応の「農学」のFWCIが高いのは、この時期に医学部が提出した論文に農学と重複する研究があったため。 ※レーダーチャートの6分類は、OECDが「Frascati Manual」などで使用している分類。複数の学問分野にまたがるテーマの論文は2重に評価されている
■現在(2016~20年)の早慶と国立大学のFWCI
■現在(2016~20年)の早慶と国立大学のFWCI
慶応の医学、早稲田の工学はさらに強くなった。人文・社会科学は論文数が増え、国立大学に比べて相対的に向上している

 また、人文科学と社会科学のFWCIは、早慶共に大きく伸びている。一番の理由は、人文・社会科学で早慶共に国際学術誌への論文投稿が増えたからのようだ。例えば社会科学の論文は、慶応が20年前の238本から1390本に、早稲田が144本から1758本と、全体の伸びが2~3倍なのに比べると大きく伸長。「災害や、エネルギーなどのテーマを扱った人文・社会科学系の論文が以前よりも執筆されている。早慶共に人文・社会科学では文理融合型の研究の方が、インパクトが高い傾向がある」(エルゼビア・ジャパン)

このコンテンツ・機能は会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
6
この記事をいいね!する