大和証券SMBCでネット企業の新規株式公開(IPO)を主に担当した後、ミクシィ最高財務責任者(CFO)を経て、現在メルカリの会長と鹿島アントラーズ・エフ・シー社長を兼任する小泉文明氏。彼は経営者としての片りんを、早稲田大学時代に早くも見せていた。
※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成
〈早稲田大学 商学部 2003年卒〉
――商学部への進学を決めたのは、やはり早くから実業家を志していたからなのでしょうか。
そうなんです。原体験は、山梨県で過ごした中学生時代に、社会現象にもなった米ナイキのスニーカー「エアマックス95」を手に入れたことにあります。ファッションがとても好きだったので、いち早くその存在を知って定価で買えたのですが、その後あまりの人気で価格がどんどん高騰していく現象がとても面白いと思いました。需要と供給のバランスが釣り合わないところに、商機が生まれるんだと。
自分の目利き力で商品を仕入れてそれを売る貿易のような仕事は面白そうだなと、そのとき思ったんです。どこかの大学の商学部か経営学部を受験しようとなんとなく考えていました。
いざ受験になり早稲田大学への進学を決めたのは、スポーツに強い大学というイメージがあったのが大きいです。私は、野球やテニスに夢中なスポーツ少年でしたから。ちょうど当時の早稲田は、清宮克幸さんがラグビー部で大活躍し、箱根駅伝も優勝していました。もう、一択でした。
――上京して実際に入学してみて、早稲田の校風はどうでしたか。
いい意味で、自分がそれまで信じ切っていた価値観が見事に崩れ去りました。山梨県の進学校にいた自分にとって、良い成績を取って良い大学に行って、4年で卒業して良い就職先に行くというステレオタイプな価値観が理想形でした。
しかし早稲田に入ると、バンドにはまって留年する人あり、演劇ばかりやって大学に来なくなる人あり。みんなこれだと思ったものに対して好き勝手にのめり込んでいる。こういう人生もあるんだな、自由な生き方を選んでもいいんだなと衝撃を受けました。
そしてみんなそんなに他人に興味が無いのか、つるみません。それがなんとも居心地が良くって。とにかく色々なことにチャレンジする人ばかりを目の当たりにしていると、「あいつにできているなら僕もやれそうだな」と妙な自信を持てるようになりましたね。そんな経験がどこよりもできる点が、早稲田の良いところかもしれません。
――学部は違いますが、メルカリの山田進太郎社長は3学年上の先輩ですね。当時から親交はあったのですか。
いや、それがまったく接点はありませんでした。ただ、彼がやっていたサークル「早稲田リンクス」が発行するフリーペーパーは有名だったので、一読者としてよく読んでました。こんなすごいものをいったい誰が作っているんだと。その後一緒に働くことになるとは人生分からないものです(笑)。
振り返ってみると、私の前後5年ぐらいの早稲田出身者は、現在IT業界で活躍している人が多いように思います。例えば、リクルートマーケティングパートナーズで最年少の執行役員になり、2020年12月に上場したKaizen Platformの須藤憲司社長は商学部の同級生。とても優秀でしたね。
――大学の授業で、経営者になるのに役立つような経験はありましたか。
ゼミは、当時花形だったITシステムを使ったサプライチェーンマネジメントを学び、様々な企業を研究しました。おかげでシステムの仕様書や業務フローはだいたい理解できるようになりました。新卒後、大和証券SMBCでミクシィやDeNAといったネット企業の新規株式公開(IPO)を担当することになるのですが、大学時代にかじっていたことが多いに役立ちました。
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