丸井のOMO革命

丸井グループの収益を支えるのがフィンテック事業だ。709万人の会員がいるクレジットカード「エポスカード」や証券などを手掛け、「売らない店」や「イベントフルな店」を掲げる小売事業を後押しする役割も担う。ECで勃興するスモールビジネスの決済機能も支えるフィンテック事業の展望について、エポスカードの斎藤義則社長に聞いた。

2021年4月に券面デザインを刷新した「エポスカード」(写真提供/丸井グループ)
2021年4月に券面デザインを刷新した「エポスカード」(写真提供/丸井グループ)

――丸井グループの中期経営計画では、26年3月期のエポスカード取扱高を21年3月期の2倍以上、5兆3000億円とする高い目標を掲げています。

 これまでの年平均成長率15%と同程度の年16%成長で伸ばしていけば実現可能だ。規模が大きくなり、成長率が鈍化するということは想定してない。新しい取り組みを積み上げてエポスカードの会員数を増やし、利用金額を増やすことで成長がぐっと加速していくと思っている。

――以前から家計の支出に占めるエポスカード決済のシェア最大化に向けた取り組みをしています。

前回(第5回)はこちら

 公共料金、保険料、携帯電話料金などエッセンシャルな支出を銀行の口座振替からクレジットカード決済に置き換えていこうとしている。日本のキャッシュレス全体のマーケットを見ると、口座振替の金額は相当なボリュームがある。定期的な支出をクレジットカード決済に切り替えていくことで、常に安定してカードを使ってもらえる。さらに利用頻度が高まり、メインカードになることが多い。

 家計シェア最大化の大きな狙いは、ゴールドカード会員を増やすことだ。利用回数と金額の2つの条件を満たした人に対して招待状を送り、ゴールドカードに切り替えてもらう取り組みをしている。

 国内の中でも年会費無料のゴールドカードは珍しい(編集部注:エポスカードからの招待、プラチナ・ゴールド会員の家族からの紹介は永年無料、年間利用額50万円以上で翌年以降永年無料)。しかも、空港ラウンジの無料利用や海外旅行傷害保険など、世の中一般のゴールドカードと遜色のないサービスを提供している。年会費がかからずサービスを受けられるので、エポスのゴールドカードに決済を一本化してくれるようになっていく。そうすると利用金額がもう一段上がってくる。

エポスカード社長の斎藤義則氏
エポスカード社長の斎藤義則氏

――家計シェア最大化に向けて、エポスカードアプリを刷新しました。

 新アプリでは、カードの支払い明細を家計簿のように見せる「エポ家計」機能で、定期的な支払いの内訳を確認できるようにした。例えば、電気、ガス、水道、携帯、保険という項目があったときに、支払額が入っていない項目があると、これもカード決済できると気付く。企業側から「カード決済してください」と案内するのではなく、お客様がアプリを使いながら自発的に気付く仕掛けだ。他にも、一般カードを持っているお客様に対してゴールドカードまでの道のりが分かるようにしている。

 既存のアプリ会員の新アプリへの移行は、21年8月から約50万人ずつ切り替えていこうと思っている。また、新規のエポスカードはアプリから入会してもらっているため、アプリが既にダウンロードされている状態だ。これからはカードだけ、アプリだけではなく、カードとアプリ一体でビジネスを考えている。アプリのデジタル接点を活用してエポスカード会員との付き合いを深め、LTV(顧客生涯価値)を向上していく。

新エポスカードアプリ。家計管理機能の他、支払額が多いときに分割払い、リボ払いに切り替えられる「ピンチ回避」機能、割引クーポン、ポイントアップサイトの確認などが可能。エポスカードを使って積み立て投資ができるtsumiki証券もアプリから利用できる(画像提供/丸井グループ)
新エポスカードアプリ。家計管理機能の他、支払額が多いときに分割払い、リボ払いに切り替えられる「ピンチ回避」機能、割引クーポン、ポイントアップサイトの確認などが可能。エポスカードを使って積み立て投資ができるtsumiki証券もアプリから利用できる(画像提供/丸井グループ)

アニメコラボカード利用者はLTV7倍に

――店舗だけでなく、ネットでのカード入会の機会を増やしています。

 6~7年前まで遡ると、エポスカードは丸井の店舗での発行に依存していた。新規会員70万人のうち、丸井の店舗での入会が60万人だった。丸井は2015年3月期から定借化を進め、アパレルの圧縮、体験型テナントの強化など構造改革を進めてきた。その中の1つとして自主売り場の選択と集中を実施しているので、どうしても丸井の店舗でのカード発行パワーが下がってきてしまう。そこで、ネット入会を強化してきた。

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