2021年3月、丸井グループはZ世代向けのシェアハウス「MARUI TOCLUS(マルイ トクラス)吉祥寺」(以下、マルイ トクラス)をオープンした。吉祥寺駅と井の頭恩賜公園からそれぞれ徒歩2分と好立地ながら、家賃は共益費込みで7万5000~9万円とリーズナブル。なぜ丸井グループがシェアハウス事業を手掛けるのか。その狙いに迫った。

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マルイ トクラスの外観。白とグレーをベースにした幾何学模様をあしらい、スタイリッシュな印象を与える(写真/太田拓実)
マルイ トクラスの外観。白とグレーをベースにした幾何学模様をあしらい、スタイリッシュな印象を与える(写真/太田拓実)

 「もともとエポスカードを持っていて、内覧の告知メールを受け取ったのがマルイ トクラスを知ったきっかけ。コロナ禍で新しい人に出会う機会がなかなかなく、生活する場でいろいろな人と交流できるのは楽しそうだと思った」

 そう語るのは、21年3月から「MARUI TOCLUS(マルイ トクラス)吉祥寺」に入居するA子さん(25歳・仮名)。彼女が住むのは、吉祥寺駅から徒歩2分、丸井吉祥寺店に直結する異例のシェアハウスだ。コロナ禍にもかかわらず多くの問い合わせを集め、43室ある居室の大半が埋まっている。

 丸井グループは、もともと賃貸住宅事業を手掛けるマルイホームサービスを擁する。首都圏に約8000室の賃貸管理物件を展開しているほか、グループのエポスカードと連携し、家賃収納型の保証人代行サービス「ROOM iD」の訴求を強化している。同社トクラス事業部開発企画課の吉野優子担当課長は、「一般的な賃貸住宅事業で中心になる収入は家賃と共益費だが、丸井グループは家賃や家賃保証サービスなどのエポスカード払いもあり、グループ全体で収入を確保できるのが特徴」と語る。

 マルイ トクラスは4階建てで43室が入る。元は隣接する丸井吉祥寺店の事務所が入っていたり、オーナーが自己使用していたりした建物をシェアハウス向けにリノベーションした。コンセプトやデザイン監修は、佐藤オオキ氏率いるデザインオフィス「nendo」が手掛けた。居室の広さは主に7.5平米、4畳半のコンパクトな作りだ。その分、家賃も共益費(電気、ガス、水道、インターネット含む)込みで7万5000~9万円とリーズナブルな価格設定としている。家賃は安くてもコンパクトな部屋にすることで、坪単価は吉祥寺の周辺相場と比べても遜色がない水準になるよう工夫している。

居室の様子。広さ4畳半のコンパクトな作り(写真/太田拓実)
居室の様子。広さ4畳半のコンパクトな作り(写真/太田拓実)

 居室がコンパクトである一方で、共有スペースは開放的だ。2階にはシャワーブースが併設されたラウンジがあり、そこには大型ソファも用意されている。さらに、最上階である4階には、井の頭公園など吉祥寺の街の風景を一望できるテラスがある。テラスと一体化する形で、キッチンが併設された多目的スペースもあり、開放感を味わえる空間となっている。そうした共用スペースでは、入居者同士の交流が自然と生まれるだろう。

テラスからは吉祥寺の街の風景が一望できる(写真/太田拓実)
テラスからは吉祥寺の街の風景が一望できる(写真/太田拓実)

 そんなマルイ トクラスでは、ターゲットとしてZ世代を中心とした若者を想定している。実際、20~30代の入居者が多いという。建物の外観には白とグレーをベースにした幾何学模様をあしらい、スタイリッシュな印象を与える。機能面でも、使用する電気は丸井グループが出資する「みんな電力」の再生可能エネルギーを使い、建物1階に併設されているランドリーは洗剤不要の仕様にしている。吉野氏は、「おしゃれな雰囲気や、サステナブルなところが共感を集めているのではないか」と分析する。

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