
丸井グループは百貨店型のビジネスモデルから大きくかじを切り、「売らない店」に象徴される体験型店舗など新たな挑戦を続けている。最近は「イベントフルな店」を掲げ、アニメやゲームなどイベント開催による集客にも力を入れている。新型コロナウイルス禍で商業施設を取り巻く環境が大きく変わる中、小売事業を担う事業会社の丸井で社長を務める青野真博氏に、今後の店づくりなどを聞いた。
――丸井グループは小売事業において、体験型の「売らない店」などを強化しています。オンラインとオフラインの融合が進む中で、どのような店づくりを目指していきますか。
中期経営計画の中では、「オフラインとオンラインを融合するプラットフォームを作る」という戦略を掲げている。イメージとしては「ウーバーイーツ」。今まで出前をアナログで取っていたものが、スマートフォンを使って急いでいるときでも簡単に注文できるようになった。食事を届けるというフィジカルとデジタル技術が融合して新しい価値を創造している。そういったビジネスの受け皿として店舗を活用できるのではないかと仮説を立て、「売らない店」を進めている。
【第2回】 GAFA“反乱軍” D2C、Z世代と共創する「丸井流ロングテール」とは
【第3回】 「体験型」が物販テナントを逆転へ “売らない”丸井の近未来 ←今回はココ
【第4回】 「熱狂ブランド」が丸井に集まるワケ 急成長BASEとコラボ加速
【第5回】 3600万人の潜在顧客を狙え メルカリと丸井、二人三脚のOMO
売り上げは結構危険な指標だ。売り上げがいいブランドや商品を入れようとすると、百貨店もショッピングセンターもファッションビルも駅ビルもだんだん同じような品ぞろえ、同じようなテナント構成になってしまう。お客様の側から考えても、「売らない」とすることによって来店のハードルが下がる。
――これまでどんな企業と協業してきたのですか。
例えば、メルカリが丸井に出店している。オンラインビジネスなので、基本的に店舗では売り上げが立たない。なぜメルカリが出店しているのかというと、みんなが知っているようなサービスだが、知らない人や使ったことがない人も多くいるからだ。出品するときにどう写真を撮ればいいのか、値付けはいくらが適切なのかというアドバイスをスタッフがする。オンラインサービスとオフラインの接点になり、新しいビジネスになっている。
他にも、ネットショップ作成サービスのBASE(ベイス)が2年前に数日間限定で店舗を試した。直接お客様を見たことがないオンラインプレーヤーが、お客様との会話の中でなぜ買ったのか、どこが好きなのかを知り、もの作りに生かせるということが分かった。それが今では、21年6月に「渋谷モディ」へ移転オープンした「SHIBUYA BASE」の取り組みにつながっている。
「イベントフルな店」をどうマネタイズするか?
――2021年6月には新宿マルイ 本館に「コンセプトショップス」を開きました。小規模D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)や個人などのスモールビジネスが出店しています。
これからどんどん世の中が変わって、スモールプレーヤーが増えてくると思っている。スモールプレーヤーがオフラインに気軽に出店できるような受け皿が小売りの中にあまり存在しないので、受け皿を作りたいと考えている。これを新宿や上野で実験している。
一般的に商業施設へ出店する場合、店装を考え、売り場を作り、家賃を払って借りるとすると、イニシャルコストで2000万円、当面の資金として3000万円程度は最低かかる。オンライン企業が、オフラインに出ていくのはハードルがある。ただ、丸井グループのリソースを使えばスムーズにできる。
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