
2020年6月、メルカリは、初のリアル店舗となる「メルカリステーション」を新宿マルイ 本館(東京・新宿)にオープンした。その後、期間限定のポップアップ店舗を含めて展開を進め、21年7月時点で丸井店舗を中心に11店舗を構える。いずれも体験を重視した「売らない店」だ。なぜ、メルカリはリアル店舗を必要としたのか。
2020年6月、フリーマーケットアプリを運営しているメルカリが、新宿マルイ 本館にリアル店舗をオープンした。その名も、メルカリステーション。「体験しながら学べる」ことをコンセプトとして掲げる。メルカリでの出品方法を教える「メルカリ教室」を予約制で受け付け、毎日開催している。
店舗には、メルカリ教室のほか、出品商品の撮影を行える撮影ブース、売れた商品をそのまま投函(とうかん)して発送できる「メルカリポスト」などが用意されている。販売商品は商品発送に使う梱包(こんぽう)資材がある程度。21年7月時点で、常設店舗である新宿マルイ 本館、ららテラス 武蔵小杉店(川崎市)に加えて、北千住マルイ(東京・足立)やなんばマルイ(大阪市)など期間限定のポップアップ店舗を含めて全11店舗展開している。コロナ禍にもかかわらず、全国のメルカリステーションには月に約1000~3000人が訪れる盛況ぶりだという。
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【第5回】 3600万人の潜在顧客を狙え メルカリと丸井、二人三脚のOMO ←今回はココ
メルカリがリアル店舗のオープンに踏み切ったのには理由がある。21年3月時点で月間1904万人が利用するメルカリだが、同社の調査によると、実はメルカリアプリでの出品意向はあるものの出品未経験の顧客は3610万人にのぼる。そうした潜在顧客の出品を後押しするために、オフラインで訴求することにした。
もちろん、アプリ内では「出品はじめかたガイド」を掲載したり、HPでは動画も合わせて出品の仕方を解説したりしている。だが、そうしたオンライン上でのコミュニケーションだけでは限界がある。そこで編み出された業態こそ、メルカリステーションというわけだ。
店舗展開をしていく上で条件となるのは、「人々の生活動線上に出していくこと」とメルカリGroup Strategy Mercari Station マネジャーの大堂由紀子氏は語る。そこで白羽の矢が立ったのが丸井の店舗だ。イメージ通り、新宿マルイ 本館の利用者は20~30代が多い。一方で、北千住や溝の口など地域密着型で展開する店舗もあり、そこでは若年層に加えて中高年層も取り込める。しかも、丸井グループは「コト消費」を意識した店舗づくりをしており、体験重視の「売らない店」を構えようとするメルカリの思惑とも合致する。まさに丸井グループは、メルカリがOMO(オンラインとオフラインの融合)を進める上で、うってつけの存在だった。
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