
丸井グループの青井浩社長は、「Webメディア、Eコマースの補完として店舗を活用し、ポップアップストアやイベントなどを実施する」と語り、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドや個人、小規模事業が手掛けるスモールビジネスなどとの連携を強化していくという。なぜ、あえて一般的な知名度が低いことも多いブランドと消費者の橋渡し役を担うのか。その現場から、丸井グループが目指す新しい商業施設の姿が見えてくる。
丸井が渋谷駅近くで運営する商業施設「渋谷モディ」(東京・渋谷)で、ひときわにぎわいを見せる一角がある。1階に21年7月1日~14日までの期間限定で営業しているアパレルのD2Cブランド「NieR CLOTHING(ニーア クロージング)」だ。黒を基調とした独特の世界観で10~60代まで幅広い層から熱狂的な支持を得ている。ツイッターなどSNSで口コミが広まり、発売から5分で完売してしまう商品も出るほどの人気店だ。
「(リアルに出店する)2週間は店とお客さんとのお祭り」と語るのは、店舗責任者の今野礼仁さん。店舗先行販売の商品を企画したり、ネットで通常5000~6000円のシャツを「ゲリラ販売」として1100円で販売したり、Twitterでの告知も功を奏して平日の昼間でも客足が途絶えない。
【第2回】 GAFA“反乱軍” D2C、Z世代と共創する「丸井流ロングテール」とは
【第3回】 「体験型」が物販テナントを逆転へ “売らない”丸井の近未来
【第4回】 「熱狂ブランド」が丸井に集まるワケ 急成長BASEとコラボ加速 ←今回はココ
【第5回】 3600万人の潜在顧客を狙え メルカリと丸井、二人三脚のOMO
毎日来店するファンも多いため、「朝一番に来店した人限定」など商品やイベントも毎日変えて飽きさせない工夫をしている。「少しでもお客さんに楽しんでもらいたい」と、ネットではできない顧客とのコミュニケーションを充実させている。
「アニメイベントの帰りに見かけて、かわいいなと思って」
「こういうダークな世界観好き」
渋谷モディ1階にあるNieR CLOTHINGの売り場では、渋谷モディの上層階で開催されたイベントなどで来館したお客も次々と足を止めていく。価格帯もアパレルとしては手ごろな1000円程度から購入できるため、10~20代でも手を出しやすい。
それでも、顧客の多くはネット告知を見た既存顧客が中心だ。ネットをきっかけに来店した顧客が渋谷モディの上層階についでに足を運ぶなど、オフラインとオンラインのテナントが連携した“相互送客”にもつながっている。
NieR CLOTHINGが商業施設内に店舗を構えるのは初めて。商業施設での販売実績がないブランドが渋谷の一等地に店を構えることは業界の慣習では難しい。さらに、本来なら什器(じゅうき)や器材といった設備代などに多額の費用も必要だ。では、なぜ出店が可能になったのか。
急成長BASEとのコラボ店舗が好調
NieR CLOTHINGが渋谷の一等地に出店できたのは、「SHIBUYA BASE」の仕組みを活用したからだ。丸井グループとネットショップ作成サービスのBASEが2018年から手掛けている、BASE加盟店に対するポップアップショップの出店支援の取り組みだ。これまで、累計170ショップが同スペースへの出店に挑戦した。1週間単位で多くのブランドが入れ替わる。21年内には累計30ショップ超の出店を見込んでいる。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー