
丸井グループ社長の青井浩氏インタビュー後編。同社は今後、D2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)企業との共創のみならず、Z世代を中心とした若い世代の個人や小規模事業者が手掛けるスモールビジネスを支援していくという。目指すのは個人が主体の経済圏。ネット通販の大手プラットフォーマーがまねできない、「丸井流ロングテール」とは?
――「売らない店」では、オーダーメードスーツのD2Cブランド「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」のようにリアル店舗の展開で成果を上げる企業も出てきています。
D2Cも含めてネットネーティブの企業は、これまでSNSなどのネット広告主体で伸びてきた。しかし、それだけでは成長に限界がある。ネット通販化が進んでいる米国でも、小売り全体に占めるネット通販の割合は2割ほどで、リアルの顧客が8割もいるのが現実だ。また、ネット上での1人当たり新規顧客獲得コストも高まっている。だから、ある程度成長した段階でリアル店舗に目が向く。
そこで必要なのは、販売を主体とした場ではない。新しい顧客との出会いの場として、商品に触って体験してもらう。あるいは、もともとファンの人なら、店舗で体験することでよりブランドを好きになり、多くの関連商品を使ってもらうきっかけになる店だ。
この図式はメルカリも同じで、本来、同社が拡大している二次流通市場は年齢やネットリテラシーに関係なくニーズがあるもの。ネットで取り切れていない層にリーチするときに、リアル店舗を必要とした。我々の店舗と強みである接客力を生かせる運営受託形態でメルカリステーションを出店し、新しい顧客の開拓につなげている。
このようにD2Cやネット企業が、なぜデジタルからフィジカルの領域ににじみ出ていく必要があるのかを理解することが重要だ。新しい顧客にリーチする、エンゲージメントを高めるなどKPI(重要業績評価指標)はさまざまだが、彼らが不得意なところを補完することに丸井グループとのパートナーシップの意味がある。
――オンラインとオフラインを融合するプラットフォーマーとして、丸井の店づくりは今後さらに変わっていきますか。
これまでは「売らない店」といっていたが、それに加えて今は「イベントフルな店」を目指している。
商品の段階的発展を考えると、「コモディティー」「グッズ」「サービス」「エクスペリエンス」という順序がある。従来の百貨店はグッズとサービスを提供しており、専門店がコモディティーを扱う。つまり、サービスとエクスペリエンスの提供に特化するところはまだない。我々が10年ほど前から考えてきた「百貨店業態のトランスフォーメーション」の狙いは、ここに集中することにある。
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