
気象予測事業のウェザーニューズ(千葉市)は2021年7月16日から、「天気」「エリア」「行動」を掛け合わせた新たな広告商品の販売を始める。ダウンロード数が2600万件を超える天気予報アプリ「ウェザーニュース」の利用データを基に、気象データと趣味嗜好に基づく興味関心データを掛け合わせた広告だ。さらに、広告技術会社と共同で気象データを活用した天気連動型広告を開発し、年内にも外部広告でも提供を始める。脱クッキー時代を迎える中、「天気」というプライバシーを侵害しない新機軸のデータで広告市場を切り開く。
「明日も良い波が来るといいな」。昼下がりの波打ち際。サーフィンを終えて天気予報アプリを開くと、ちょうど近くにある飲食店の広告が目に飛び込んできた――。
ウェザーニューズが新たに提供を始める広告商品は、同社が得意とする気象データに加え、「ゴルフ」「釣り」「マリンスポーツ」といった興味関心情報を掛け合わせて開発。これらの情報は同社のスマホアプリ「ウェザーニュース」の利用動向から取得する。広告はアプリの週間天気予報や天気ニュースなどのコーナーに設けた広告枠に配信する。
ウェザーニューズは自社でコンテンツを開発する部隊を持ち、気象情報を生活に合わせてより分かりやすい表示に変えて、アプリ上でコンテンツとして配信してきた。例えば、「お洗濯情報」は気象情報を基に、地域ごとに洗濯適合度を4段階で表示。直感的に居住地域が洗濯日和か分かる。紫外線の強さを指標化し、地域ごとに5段階で表示して日焼けを注意喚起する「紫外線予報」、花粉の飛散情報を確認できる「花粉 Ch.」、桜の開花情報が分かる「さくら Ch.」など、季節性の高いコンテンツも開発している。
その延長として、行動が伴う趣味を軸としたコンテンツを拡充させている。例えば、全国のゴルフ場の天気がピンポイントで分かる「ゴルフ場の天気」、波の高さでマリンスポーツや釣りに適した地域が分かる「マリン Ch.」「釣り Ch.」といった具合だ。こうしたコーナーの閲覧データは、スマートフォンから取得したIDをベースに蓄積している。これらの行動につながるデータを、ウェザーニューズでは「ユーザーインサイト」と呼ぶ。「ユーザーインサイトを組み合わせることで、よりターゲティングがしやすい広告商品を開発できる」とウェザーニューズのモバイル・インターネット事業部の森下良治グループリーダーは言う。
これに、位置情報の取得のしやすさという、天気予報アプリならではの特徴を組み合わせる。「自分の居住地や今いる地域の天気情報を知りたいというニーズが高いため、『アプリ起動時のみ利用を許諾する』を含めると8割の利用者が位置情報の利用を許諾している」と森下氏は明かす。これまではそれらのデータをコンテンツ配信に生かしてきた。例えば、アプリ利用者の位置情報に合わせて、ゲリラ豪雨が迫っているというアラートを出している。
これらのデータを掛け合わせて、ウェザーニューズのアプリ上の広告枠に広告を配信できるようにする。単純な例であれば、ゴルフ場の天気情報を見た履歴を持つ利用者のうち、週末に晴れの予報が出ている地域にだけゴルフ関連商品やスポーツドリンクの広告を表示するといった具合だ。
外部媒体でも天気連動型広告を年内開始
こうした気象データを活用した新たな広告商品の開発と並行して、天気連動型広告を自社アプリ以外の広告枠でも配信できる仕組みづくりを広告技術会社と協力して進めている。
というのも、サード・パーティー・クッキー規制の動きが加速するにつれ、気象データが新たな広告配信のデータとして注目が高まっているからだ。「1年前は気象データの活用を広告技術会社に提案したときは、あまり関心を持たれなかった。ところが、脱クッキーの動きが加速するにつれ、新しい広告メニューとして天気連動型広告を提供したいという事業者が増えている」と森下氏は手応えを語る。
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