打倒アマゾンの戦い方

銀行への進出がささやかれて久しい米アマゾン・ドット・コムより一足早く、2021年7月1日に銀行業に乗り出したのが、家電量販大手のヤマダデンキを傘下に抱えるヤマダホールディングス(ヤマダHD)だ。ヤマダHDは銀行を営むことで、競合他社にどのような差をつけようというのか──。その狙いを明らかにした。

ヤマダNEOBANKのサービス開始を記念して、ヤマダHDではサービス利用に応じて総額1億円相当のヤマダポイントをプレゼントするキャンペーンを実施中
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 アマゾンがいずれ「アマゾン銀行」に乗り出すと数年前から噂されていたのには、いくつかの根拠がある。2013年に決済サービス「アマゾンペイ」を米国で提供開始。17年4月からは、リアル店で支払い充当分を現金チャージできる「アマゾンキャッシュ」を米国で始めて銀行口座を持たないユーザーの取り込みを図った。この他にも金融関連サービスを積極的に展開しており、その延長線上に銀行への進出を予測するのは難しくない。

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 加えて、アマゾンがさまざまな特徴を持つ個人ユーザーを大量に抱え、そのユーザーの購買履歴や支払い実績などのデータを把握していることも、同社の銀行進出を予測する有力な根拠となった。データを分析することでユーザー一人ひとりについて独自の基準で信用供与が可能なので、個人向けローンを展開しやすく、多くの収益を確保しやすいとみられていたからだ。

 アマゾンは近い将来、銀行への進出によって自社会員(ユーザー)の利便性を引き上げて同社のサービスからの離脱を防ぎつつ、個人向けローンや保険といった金融ビジネスでも収益拡大を目指すと見なされてきたわけだ。

“ヤマダ経済圏”のユーザーが増えてくれればいい

 ところが、銀行進出が確実視されていたそんなアマゾンよりも一足早く、銀行へ進出した日本の小売り大手がある。家電量販大手のヤマダデンキを傘下に抱えるヤマダホールディングス(ヤマダHD)だ。

 これまでにも、グループ会社が銀行業免許を取得する形で、セブン&アイ・ホールディングスとイオン、ローソンが小売りとして本格的に銀行業に乗り出している。ヤマダHDは先行する3社とは異なり、20年10月に住信SBIネット銀行(東京・港)と交わした合意に基づき、住信SBIネット銀行がパートナー企業へ銀行機能を提供する「NEOBANK」サービスを利用して、銀行の免許を取得せずに、21年7月1日から「ヤマダNEOBANK」として銀行の業務を開始した。

 ヤマダHDが銀行に進出した狙いは、アマゾンに対する予測と同様、自社会員(ユーザー)の利便性を引き上げ、グループが提供する家電や家具、住宅といった商品・サービスの購入を促し、グループとしての収益拡大を目指すことにある。アマゾンに対する予測と異なるのは、金融ビジネス単独で必ずしも大きな収益を上げようとしていないことだ。

 ヤマダHD事業統轄本部金融事業部代表兼ヤマダファイナンスサービス代表取締役の古谷野賢一氏は、「銀行業務を自ら手がけることが、長期的なコスト引き下げとユーザーの利便性向上につながり、本業にプラスになる。金融で収益を稼がなくても、住宅建設やリフォーム、家電の購入などにつなげ、いわば“ヤマダ経済圏”のユーザーが増えてくれればいい」と銀行進出の理由を語る。

無金利分割払いサービスのおかげで売り上げ10億円増

 実はヤマダHDは、16年に設立した子会社のヤマダファイナンスサービスなどを通じて、17年から既に複数の金融サービスを展開し、グループとしての収益拡大につなげている。

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