打倒アマゾンの戦い方

小売りや卸が、打倒アマゾンも視野に入れながら実践できる取り組みの例が、物流コストを抑えた「地産地消」の追求と、「限りなく顧客の近くへ」の実現である。前者の例としてクックパッドが運営する「クックパッドマート」、後者の例として機械工具専門商社のトラスコ中山が展開する「MROストッカー」を取り上げる。BtoC、BtoBの違いこそあれ、アマゾンが取り組むには難しいやり方で両社が顧客の支持をどう勝ち得ているか、明らかにする。

マートステーションでQRコードをかざして食材を受け取る。1カ所で40~50人が利用可能
マートステーションでQRコードをかざして食材を受け取る。1カ所で40~50人が利用可能

 2018年9月にサービスを開始した「クックパッドマート」とは、共同の宅配ボックス「マートステーション」を特定のエリア内に配置し、顧客(ユーザー)がアプリで注文した生鮮食品を、指定したボックスで受け取れるようにしたサービスだ。

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 利用に当たり、会員登録は不要。ユーザーの自宅に戸別の宅配はしない代わりに、宅配が当たり前のECについて回る送料は無料だ。ユーザーは受取場所とクレジットカード情報を入力後、1品から注文できる。前日21時までに注文すると、最短で翌日の昼12時以降の好きな時間にマンション、ドラッグストア、東京メトロの駅構内などにあるマートステーションで生鮮食品を受け取ればよい。

【特集】打倒アマゾンの戦い方

 マートステーションが設置されているのは東京都・神奈川県・埼玉県内の550カ所以上(21年7月時点)。20年にはサービスの利用者が19年の10倍、流通総額は20倍になるなど順調に数字を伸ばしている。

ユーザーに加えて地元の生産者にも近づく

 ユーザーの手元に食材を届けるだけなら、EC事業者やネットスーパーなどのように、自宅まで配送することをまず考えるだろう。それが顧客に近づく早道だからだ。しかし、自宅まで戸別に生鮮食品を配送してユーザーに“近づく”ためには、物流業者に依頼しても自前で物流網を構築しても、それなりの手間と多額のコストがかかる。クックパッドは地元の生産者に“近づく”仕組みを構築し、「地元の生産者がつくった生鮮食品」という新たな価値を持ち込んで、戸別配送に必要な多額の物流コストをかけなくても(=ユーザーの自宅まで配送しなくても)、ユーザーが納得するサービスを編み出した。

 アプリ上で注文を受けた地元の生産者は、午後9時までに生鮮食品をパッキングし、通い慣れた卸売市場や農産物直売所などにある「共同集荷所」に運ぶ。集荷所でラベルシールを貼れば完了だ。個々の梱包や宛名書きは必要ない。初期費用は不要で、自らが得た売り上げの額に応じた手数料をクックパッドに支払う。集荷所は東京・埼玉・千葉・神奈川の50カ所にあり、700以上の事業者が生鮮食品を提供している(21年7月時点)。共同集荷所からマートステーションへは、クックパッドマートの配送車がパッキングされた生鮮食品を運ぶ。

生産者は集荷所でラベルシールを印字して貼るだけで出荷できる
生産者は集荷所でラベルシールを印字して貼るだけで出荷できる

 地域の集荷所までは生産者が、集荷所からマートステーションまでは配送車が、その先はユーザー自身が食材を運ぶ──。こういう流通経路をつくったことで、新鮮な食材を新鮮なうちに、しかも配送車のルートは固定で済むので物流コストを抑えながら、ユーザーに届けることを可能にした。「(地元で)新鮮な食材を売買したい」という生産者とユーザーを近づけ、双方の満足度を引き上げられる仕組みといえる。

珍しい食材が安価で手に入る

 クックパッドマートがユーザーから支持されている理由は、食材が単に新鮮というだけではない。実家が農家の社員や食材に詳しい10人ほどの営業担当社員が日々、生産者や仲卸会社、青果店を回るなどして、隠れた名産品や旬の食材、おいしい食べ方などの情報を収集している。この営業力により、スーパーなどでは見かけない珍しい食材や、食べごろの生鮮食品のタイムセールなどで「お得」な食材を提供できる。これがユーザーの継続利用を促し、売り上げ増につながっている。

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