打倒アマゾンの戦い方

アマゾンの業容拡大やネット販売の進展による様々な業界への影響を意味する「アマゾンエフェクト」。米国では、玩具のトイザラス、百貨店のシアーズホールディングス、家電量販店のフライズ・エレクトロニクスなど、名門の大手企業が次々と飲み込まれている。一方でそうした中でも生き延びている企業も少なくない。何が明暗を分けているのか。米国の最新状況から分析する。

シリコンバレーにあるFry's Electronics(フライズ・エレクトロニクス)の店舗。2021年2月に突如として営業中止を表明した。事業停止となり広大な駐車場も空になった(撮影/シリコンバレー支局)
シリコンバレーにあるFry's Electronics(フライズ・エレクトロニクス)の店舗。2021年2月に突如として営業中止を表明した。事業停止となり広大な駐車場も空になった(撮影/シリコンバレー支局)

 米シリコンバレーでは家電を購入する際、ベストバイとFry's Electronics(フライズ・エレクトロニクス)の2つの大手家電量販チェーンの店舗で実物と価格を見比べることができた。しかし2021年2月、フライズが全店舗を突然閉鎖し、家電量販店はベストバイだけとなった。フライズは米西部のカリフォルニア州や南部のテキサス州を中心に約30の大型店舗を展開しており、多くの地域で同様の状況だ。

フライズの店舗内。ケーブルなどの棚も欠品が目立ち(左)、アップル製品は撤去されていた(撮影/シリコンバレー支局)
フライズの店舗内。ケーブルなどの棚も欠品が目立ち(左)、アップル製品は撤去されていた(撮影/シリコンバレー支局)

 会員制の倉庫店コストコホールディングスと同等の床面積を誇る広大な店舗のフライズは品ぞろえがウリだった。売上高も18年ごろには年間2500億円程度あったとみられる。しかし全米に巨大倉庫を持つアマゾンの登場でその座を譲ることになった。大手スーパーのウォルマートやターゲットなども集客のために、大型の液晶テレビを特売するなどで顧客を奪っていった。アマゾン、そしてベストバイや大手スーパーの挟み撃ちに合い、それでも経営スタイルを変えなかった。まさに、17年に破綻した米玩具大手のトイザラスと同じ構図だ。

【特集】打倒アマゾンの戦い方
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 こうした状況だったため、以前から「フライズの経営がなぜ成り立っているのか不思議だ」との声は多かった。来店客はまばらで、人件費を削減しているからか店員を探すのにも苦労する状況だった。

 近年は店舗の棚を各メーカーに貸し出す委託販売に乗り出していたとみられるが、アップル製品など商品が撤去されている棚も散見された。広大な店舗に顧客の欲しい商品は置いていなかったのだ。筆者の住むシリコンバレーにはフライズが4店舗あったが、立地も分かりにくかった。

適正規模で店舗を顧客拠点に

シリコンバレーにあるベストバイの店舗。ハイウエー沿いのショッピングセンター内など目立つ場所に位置している(撮影/シリコンバレー支局)
シリコンバレーにあるベストバイの店舗。ハイウエー沿いのショッピングセンター内など目立つ場所に位置している(撮影/シリコンバレー支局)

 一方のベストバイは積極的なデジタル投資で、アマゾンエフェクトをはねのけている。ベストバイの店舗の床面積はフライズと比べると3分の1から4分の1程度だ。その代わりに全米中に約1000店舗を展開し、それらはハイウエーや幹線道路から見える場所に出店している。クルマを運転しているとベストバイの店舗を目にすることが多い。

 ベストバイのコリー・バリーCEO(最高経営責任者)は21年1月、世界最大のデジタル見本市「CES 2021」のオンライン基調講演に登壇。「店舗は顧客に商品を届けるフルフィルメントのセンターとしても欠かせない。顧客は商品を欲しいときに欲しい場所で、できるだけ早く手に入れたいと思っている」と述べた。

 実際、筆者もアマゾンでなくベストバイで買い物することがある。理由は幾つかあるが、「今すぐ欲しい」というニーズに明確に対応しているのが大きい。同社のサイトでは、所望の商品が近くの店に在庫があるのかどうか、配送の場合いつ届くのかがすぐに分かる。品物をすぐに欲しい場合、ネットで注文したうえでその店に行けばいい。価格もアマゾンに合わせているようだ。

ベストバイの店舗におけるピックアップ場所(出所/Shutterstock.com)
ベストバイの店舗におけるピックアップ場所(出所/Shutterstock.com)

 店舗は受け取りの場ともなる。米国では玄関のドアの前などに置く「置き配」が基本である。高価な商品はサインが必要とされるが、実際には置かれていくこともある。そうした場合、店舗ピックアップを選んで盗難のリスクを回避することも可能だ。

 ベストバイはこうして店舗を活用して顧客のわがままに応えることで、アマゾンエフェクトを巧みにかわしてきている。21年2月通期の売上高は前年比9.7%増の472億6200万ドル(約5兆2000億円)、営業利益は19%増の23億9100万ドル(約2600億円)と好調だ。

衣料品と百貨店で相次ぐ破綻

ここ数年間で事業停止に追い込まれた小売りやサービス関連企業。20年以降の案件について強調している
ここ数年間で事業停止に追い込まれた小売りやサービス関連企業。20年以降の案件について強調している

 米国では様々な大手小売りが、アマゾンエフェクトで事業停止に追い込まれている。もちろんその多くが従来型の経営を続け、消費者のニーズから離れていってしまったことが挙げられる。

 その代表例が17年に経営破綻した玩具販売のトイザラスだ。店舗を重視するあまり、ネットでの品ぞろえが不十分だった。トイザラスはアマゾンと提携した時期もあったが、ネットを利用し購入頻度の少ない商品まで用意する、ロングテールと呼ばれる戦略の優位性を学ぶことができなかったようだ。

 ここ1~2年は衣料品や百貨店の破綻が多いことに気づく。衣料品は、フォーエバー21のようなカジュアルからブルックス・ブラザーズのような高級服、幼児服まで様々な業態が影響を受けている。百貨店でも、20年に高級品を扱うニーマン・マーカスが破綻している。

店舗閉鎖に向けセールを行うフォーエバー21の店舗。19年11月に米サンフランシスコ市の大型店「XXI Forever」を撮影(撮影/シリコンバレー支局)
店舗閉鎖に向けセールを行うフォーエバー21の店舗。19年11月に米サンフランシスコ市の大型店「XXI Forever」を撮影(撮影/シリコンバレー支局)

生死を分けた3つの分かれ道

 これらの各社の破綻劇から分かることが幾つかある。過去の業績がよかった時代のビジネスをそのまま続け、商品力の低下や顧客ニーズとの乖離(かいり)を放置していた点だ。それ以外にも共通している3つの点がある。それらがアマゾンエフェクトから逃れる分かれ道と言える。

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