CDO(最高デジタル責任者)は、単なるデジタル領域のトップではない――。味の素社でCDOとして全社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進するのが、福士博司氏だ。若手マーケターがDX時代のマーケティングや組織、人材について注目企業の経営層に直撃する連載の第5回は、福士氏がいかにして縦割りの“堅い企業”だった味の素を変革していったのかを聞く。

若手マーケターの現場から見えたDXの問いに答えるのは、味の素CDOの福士博司氏
若手マーケターの現場から見えたDXの問いに答えるのは、味の素CDOの福士博司氏
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今回の若手マーケターからの疑問と課題
●全社にDXの号令をかけた後、具体的にはどのように現場に浸透させていったのか。

●DXは既存事業や既存組織の効率改善に使われる場合も多いが、イノベーションを生む意味ではどのように活用しているか。

●CDOはどのような役割を担うべきか、そしてDX推進のためにどのようなことに注意をしているのか。

前回(第4回)はこちら

 本連載では、日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構の若手マーケターが集まる「U35プロジェクト」のメンバーがインタビュアーとなり、現場から感じるDXへの疑問や課題を注目企業の経営陣に直接ぶつけていく。

 第5回は、DXによる企業変革を積極的に推し進める味の素でCDO(最高デジタル責任者)を務める福士博司氏に、パーソルキャリアP&M本部の若手マーケター、小山貴弘氏が迫る。

【本日の語り手】
福士博司氏
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福士博司氏
取締役代表執行役副社長
Chief Digital Officer(CDO)

北海道大学大学院工学院 合成化学工学修士修了後、1984年に味の素に入社。アミノ酸事業を中心に技術畑を経験。MBA(経営学修士)を取得後には事業畑に転じ、2009年にアミノ酸事業部長に就任。当時、営業赤字だった同事業の黒字化を果たす。その後、専務執行役員アミノサイエンス事業本部長として事業改革を断行。現在は、代表執行役副社長、CDOとして全社のDX推進を担う

株価急落からの抜本的立て直しを図るためにDXを推進

小山貴弘(以下、小山) 近年、DXがバズワードのようになっていますが、手段と目的を混同しているような事例も見受けられます。そんな中、御社ではDXの目的をパーパス経営のトランスフォーメーションだと位置づけ、「2030年には、食と健康の課題解決企業になる」と宣言されています。まずはその狙いと進捗状況を教えてください。

福士博司(以下、福士) DXを推し進めてきて、まる3年ほどたちました。そのきっかけは、企業のパフォーマンス向上が急務だったからです。

 端的に言えば、株価が長期低迷していたから。16年頃から既存の企業戦略では通用しなくなったことで株価の低下が続き、一時は時価総額で1兆円を割りそうな事態になりました。これには相当な危機感を覚えました。

 その企業価値を高めるために軸に据えたのがDXです。私は、企業価値は、企業の資産・文化を高めることで上がると考えています。資産とは、人材資産、金融資産、顧客資産などに分けられますが、どれも直接は見えないものです。デジタル技術を用いてこうした見えない資産を数値化し、検証し、効率的に回していく。そうすることで企業価値の向上につながると考えました。

 ここでボトルネックになっていたのが、事業ごとに組織が硬直している縦割り構造でした。

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