
「UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ=ユーザー生成コンテンツ)」は、単なる口コミではない。顧客の許諾を得たうえで、ブランディングや販促など多岐にわたって企業のマーケティング活動に使われ始めている。Instagramの登場によって、その傾向は加速した。本特集では、Instagram上のUGCを有効活用して、成果を上げている3社の事例を紹介する。第1回は、イスラエル発の美容品ブランド「SABON(サボン)」を展開するSABON Japan(東京・渋谷)だ。同社はInstagramのアカウント運用を見直すことで、月間のUGC数を1.4倍に増やした。
Twitter、FacebookなどSNSには、日々たくさんの投稿があふれている。投稿者の気分や日常に関するとりとめのないものから、商品レビューまで、幅広い投稿がある。そうした一般ユーザーによる投稿の中でもマーケティング活用で重要性が高まっているのが、後者のレビューや口コミといった類いのもので、UGCと呼ばれる。
平たく言えば「消費者による口コミ」だが、その効果は侮れない。UGCは商品購入を検討する人の背中を後押しする、大きな影響を持つといわれているからだ。米SNS活用支援会社オラピックによる調査「Facebook & Instagram Advertising With UGC : A Practitioner’s Guide」では、「生活者の63%が購入の前に商品のUGCをSNS上で探している」「20~30代の53%が、UGCが購買行動に影響を及ぼしたと明言」といった結果が出ている。
その理由は「消費者目線」にある。消費者による口コミである分、従来の企業発信の広告よりも信頼を得やすい。その商品が同じ消費者間でどのように使われているのか、生活シーンがリアルに想像できることが、UGCが購買につながりやすいとされる所以(ゆえん)でもある。
そうした傾向を後押ししたのがInstagramだ。ビジュアルに特化したInstagramは、プロ顔負けの写真や動画を投稿する利用者も多い。質の高い写真や動画が投稿されるInstagramの登場で、販促にとどまらずブランディングにもUGCを活用できる土壌が整った。D2Cビジネスやマーケティングを支援するAnyMind Japan(東京・港)のインフルエンサーマーケティング事業部の藤田翔大氏は、「UGCは増え続けて、蓄積されていくアセット(資産)。半永久的に消費者に影響を与えられる可能性を持つ」とその重要さを説く。
こうしたUGCの効力に可能性を感じて、自社のマーケティングに取り入れる企業が増えている。ただし、UGCは投稿した消費者のもの。活用するうえでは事前に許諾を得なければ、かえって不信感を招く恐れがある。例えば、Instagramで自社商品について投稿をしている利用者に直接連絡をして写真利用の許諾を得て、自社のInstagramアカウントでその投稿をシェアしたり、自社のECサイトや広告でUGCを表示したりするといった具合だ。UGCを収集し、マーケティング利用の許諾を得るためのツールも多く提供されている。
さらに、自社のブランドの世界観に合った投稿を増やしていく工夫をすることで、より効果的な活用が可能になる。そうして、UGCの生成、収集、活用、最適化というサイクルを生み出すことがInstagram時代のUGC活用では重要になる。まずは、自社のアカウント運用から根本的に見直し、UGCの増加に成功したSABONの事例から見ていこう。
フォロワー数増でも、SABONが感じた不安
「今はフォロワーが増えているが、いずれ頭打ちになる。この先5年を考えると、このままの運用では不十分だ」――。
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