“世界で最も快適な靴”と評されたメリノウールのスニーカーで知られる米オールバーズは、環境配慮を徹底した製品を開発し続けることでも注目されている。その開発のきっかけやサステナビリティーにこだわる製品作りについて、オールバーズの共同CEO(最高経営責任者)で、元サッカー・ニュージーランド代表副キャプテンとして活躍したティム・ブラウン氏に聞いた。
2016年に米サンフランシスコで創業したフットウエアブランド「Allbirds(オールバーズ)」。オバマ元米大統領や環境活動家の顔も持つ俳優のレオナルド・ディカプリオなど、高感度なセレブリティーに支持されている。世界的人気歌手のブルーノ・マーズも愛用者で、22年10月に来日公演した際は、同社製品を履いてアフターパーティーに登場した。看板商品は、アッパーにメリノウールを用いたスニーカー「Wool Runners(ウールランナー)」で、米雑誌「TIME」に“世界で最も快適な靴”と評されたこともある。洗濯機で丸洗いできる点も斬新だ。使い勝手の良さだけでなく、環境配慮を徹底した製品を開発し続ける点でも注目されている。ソールに使われるサトウキビ由来の「SweetFoam(スウィートフォーム)」は、あえて特許を取らずオープンソースとし、adidas(アディダス)」や「UGG(アグ)」なども活用しているという。23年2月には、約2年かけて開発した100%植物性のプラントレザー「MIRUM(ミラム)」を使ったスニーカー「Plant Pacer(プラントペーサー)」も発表した。
――まず、Allbirds製品の特徴を教えてください。
ティム・ブラウン氏(以下、ブラウン) 3つの柱があると考えています。1つは、シンプルで洗練されたデザイン哲学です。ミニマルな美意識は、日本の方に特に共感していただけているなと感じますね。
2つめは、イノベーションされた天然素材を使っていること。私が生まれ育ったニュージーランドの特産品、メリノウールの中でも、「ARMANI(アルマーニ)」などの高級ブランドが使うスーパーファインメリノウールをスニーカーに適応するように開発し、今までにない快適性を生み出しました。
ほかにも、ユーカリの木から生まれた「Tree(ツリー)」。新製品に用いたビーガンレザーのPlant Pacerは、石油を使わず天然ゴムや植物油、もみ殻、かんきつ類といった素材で、リアルレザーをしのぐ素材を開発できたと自負しています。耐水性や革製品独特のにおいにまでこだわりつつ、カーボンフットプリント(原材料調達から廃棄・リサイクルされるまでに排出される温暖化ガスの排出量)は従来のレザーの40分の1まで削減できました。
3つめは、履き心地のよさです。他社製品もそうしたキャッチコピーを目にすることはありますが、デザイン性が高く環境に優しい素材である製品はほかにはありません。
――そもそも、なぜプロのアスリートだったあなたが、スニーカーを作ろうと思ったのですか。
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