クックパッドが生鮮食品のEC(電子商取引)サービス「クックパッドマート」を拡大している。規格外の食品を“訳あり”として販売して人気となるなど、食品ロスを減らすことにも貢献する。受け取り専用冷蔵庫は約900カ所に成長した。
クックパッドが2018年から展開するのが生鮮食品EC「クックパッドマート」だ。その人気をけん引するのは、2つのサービスだ。1つは、22年3月に始めた「産直アウトレット」で、規格外品などのいわゆる“訳あり”を少量から安価で買える。廃棄されるはずだった食品ロスを減らし、生産者のサポートにもつながる。
もう1つは、毎週たまごや牛乳、食パンが税込み108円で買える「選べる!おいしい食卓応援定期便」(以下、「定期便」)。22年5月、たまごから始まり、8月から牛乳と食パンも加わった。物価の急騰も追い風となり、利用者が急増。定期便登録者は、この半年で約50倍に急伸した。
クックパッドマートは、専用アプリに出品されている約1000店舗、1万5000点から購入した商品を、受け取り専用冷蔵庫「マートステーション」に自分で取りに行く仕組み。マートステーションは、1都3県のコンビニエンスストアやドラッグストアなどに約900カ所に設置されている。送料は1品でも無料で、宅配は有料オプションとなる。産直品を扱うECはあるが、少量で送料無料になるサービスは珍しいだろう。
22年12月からは、新たにローソンの食品ロス削減実証実験に協力。実験店舗に置かれたマートステーションを活用し、消費期限内でありながら販売期限切れとなる、店頭から撤去されたデザート10品目を値引きして販売する試みだ。
さて、「産直アウトレット」だが、もともと生産者は個々で訳あり品を出していた。ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大で大量の食材が行き場を失う事態になった。22年2月、貝専門卸業者が飲食店に卸せなくなった殻付きの生牡蠣(なまがき)を訳ありとして、1キログラム577円で販売したところ、600キログラムが即日完売した。
これを先行事例に、同年3月に改めてプロジェクト化したものが「産直アウトレット」だ。食品ロスへの関心の高まりやコロナ禍の巣ごもり需要、物価急騰などが重なり、ユーザーの購買意欲を大いに刺激した。「プロジェクトにしたことで、ユーザーと出品者の双方に気づきを促すことができた」と、クックパッドマート プロダクトオーナーの末吉謙太氏は見ている。
「プロジェクトの企画が動くたびに広告なども展開するため、ユーザーさんが訳あり品に気づきやすくなりました。食品ロス削減などにつながるエシカルな消費をしたい人も多く、そうした方に安さの理由を商品ページで丁寧に伝え、納得してご購入いただいています。
また、規格外は廃棄しかないと思っていた出品者さんが、『これも商品として出せるの?』と物の価値を再発見できた。我々と『産直アウトレット』の商品として開発する動きにつながっています。と同時に、企画にかかわらず“訳あり”のタグを付けて出品する方や、新たな出品者さんも増えました。初めは当社社員が生産者に1軒ずつ、『廃棄している物はありませんか?』と訪ね回る状態でしたが(笑)、出品者やアイテムを増やすという当初の目標もかないました」(末吉氏)
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