ダイキンがAI(人工知能)を活用したエアコン事業の改革を進めている。AI活用で企業の課題解決などを支援するJDSCと組み、ビッグデータからエアコンの運転異常の予兆などをつかめるAIなどを開発した。DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成とあわせて進める業務改革の成果と背景を取材した。

 ダイキンがAIを活用したエアコンの故障・品質管理を強化している。JDSCと共同開発したAIで、エアコンの具体的な不具合箇所や交換必要箇所を特定したり、運転異常が出る予兆を検出したりできるようにした。現在は、エアコン製品の修理状況から設計の改善が必要かをAIが判定する取り組みも進めている。

 既に成果を上げていることの1つは、エアコンの不具合を次の製品開発などに生かすための業務プロセスの改善だ。

 従来、部品の経年劣化や設計の不具合の増加傾向の把握は、人手で確認するために時間がかかっていた。部品のロット不良の場合は、通常よりその部品の故障率が増加する。その増え方が異常だと品質管理者が気づいた段階で、何か大きな要因があるのではと品質管理部門や開発の担当者が集まって故障の原因を探ってきた。

 しかしJDSCのソリューションである「maintenance insight(メンテナンスインサイト)」をベースに共同開発した不具合監視AIでは、部品のロット不良など故障しやすい箇所を見つけ出してアラートを出せるアルゴリズムを実装した。過去の不具合と、それに伴う製品対応のデータを学習したAIだ。

 このAIを2021年夏から業務に適用した。不具合発生などへの対応情報から、製品対応や設計上考慮すべき可能性のある事象を警告して、人の判断をアシストする。従来より早い段階で設計の改善に取り組むべきか判断できるようになった。ダイキン工業 堺製作所 空調生産本部 デバイス技術グループ グループリーダー主任技師の池田基伸氏によれば、「従来の製品対応・改善などのPDCAサイクルに比べて1年以上早く、対応を要する不具合のフィードバックができることが確認できた」と言う。

ダイキン工業 堺製作所 空調生産本部 デバイス技術グループ グループリーダー主任技師の池田基伸氏
ダイキン工業 堺製作所 空調生産本部 デバイス技術グループ グループリーダー主任技師の池田基伸氏

 22年春から取り組んだのは、故障などへの対応の効率化・高度化だ。不具合監視AIとは別のAIをJDSCと共同開発して活用を始めた。

 例えば、コールセンターに「エアコンが冷えない」という問い合わせが入ると、サービス担当者は状況を確認しに現場に行くのが一般的。部品や本体を交換したりしなくてはいけない場合もでてくるが、そもそもリモコンの設定が間違っている場合もある。わざわざ現場に行かなくてもいい事例もあるし、予測して持っていた部品と異なっていたなどで、1度の訪問で済まないケースもある。運転データや故障事例などのビッグデータから、トラブルの原因を特定できれば、故障のときなら必要な部品を持って現場に行けば1度の訪問で済む。

 ダイキンの家庭用エアコンの上位機種は、Wi-Fiでのネット接続が可能。遠隔で取得できるようになった運転データを解析して、従来では分からなかった運転異常の予兆を検出したり、異常箇所を特定したりできる。22年9月からAIを実装してPOC(概念実証)を開始しており、今後機能を拡充しながら活用を進める。

ダイキンはJDSCと共同開発したAIの活用を進める。エアコンの不具合箇所を特定したり、運転異常をの予兆を検知したりできる(提供:JDSC)
ダイキンはJDSCと共同開発したAIの活用を進める。エアコンの不具合箇所を特定したり、運転異常をの予兆を検知したりできる(提供:JDSC)

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